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NEWTYPEの時代。今求められる「ありたい未来」を構想する力。

目まぐるしく変化する時代。今までの「優秀な人材」に求められていた「高い問題解決能力」は問題が希少化する時代にはその必要性が低下していく。新しい時代に求められるのは「自らこうありたい未来を構想し、問題を発見する力」。

Xデザインの学校で紹介された山口周さんのNEW TYPEの時代が面白過ぎたので、自分なりに「忘れちゃいけないな!」と感じた内容を読書録としてまとめます。

ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式
著者:山口 周 

どんな人にこの本を勧めるか?

1, 自分の仕事って何の意味があるんだろう?誰の役に立ってるんだろう?と疑問を感じている人。

2, 科学技術の発展と共にどんどん便利になっている筈なのに、なんで自分たちはこんなに精神的に疲弊しながら働いているんだろう?と思っている人。

3, 世の中が変わってきている事は薄々感じていて「このママじゃいけないな」と思いつつも、具体的に何が変わって、自分はどう対応しないといけないか?分からない人。

こんな人が読んだらとても面白い本なんじゃないかと思います。私もそういう人間の一人。

モノが過剰、問題が希少な時代

ロベルト・ベルガンティさんが「意味のイノベーション」という考え方を唱えて話題になっていますが(Ted面白いです)、その流れにある時代の捉え方で、現代社会、特に先進国において「明らかな不便、問題」はもう殆ど残っていません。

テレビ、冷蔵庫、洗濯機が3種の神器と言われ、皆がモノを沢山欲しがった時代は、モノに意味がありました。

例えば冷蔵庫が無い時代だったら買ってきた食べ物がすぐ腐ってしまう訳で、冷蔵庫がある事によって生活が豊かに、暮らしやすくなります。冷蔵庫が無いと食べ物がすぐに腐る、のような「分かりやすい不便、問題」はもう残っていませんよ!という認識が現代社会を捉える上での出発点になります。

最近iPhone11が発売されたり、Huaweiの新しいスマホが発売されて話題になっていますが、どちらも売りは「うちのカメラ凄いでしょ!」になっています。まぁ凄いのかもしれないけど、別にそんなに凄いカメラがスマホについてなくても困らないですよね?冷蔵庫が無かったら困るけど、スマホのカメラがこれ以上進化しなくても別に困りません。

なぜこんな風にどうでもいいカメラ機能のアップデート合戦が行われいるのか?と言えば、既に人間が生きていく上で欠かせないモノは出尽くして(不要な程溢れかえっていて)、解決すべき問題が見つからない「モノが過剰、問題が希少な時代」になっているからです。

「失われた30年」の根本的な原因

「モノが過剰、問題が希少な時代」を裏返せば、昔は「モノが希少、問題が過剰な時代」だったという事になります。

本の中では特に日本について言及していて、明治以降「欧米列強に追い付く!」という明確な目標があり、問題というのは「欧米と日本の差」として常に分かりやすく存在した、と指摘しています。常に分かりやすい問題が存在するという事は「問題は何か?」を自分で考える必要が無いということで、そういった社会では「問題を解決する能力」の高い人が優秀な人として評価されます。

自分が受けてきた義務教育を振り返っても、勉強してきたのは全て「どうやって問題を解くか?」であり、「何が問題なのか?」「問題をどうやって見つけるのか?」といった事を学んだ覚えは一切ありません。

そして、第二次世界大戦後日本は「アメリカに追い付け!追い越せ!」で超頑張ります。1980年代には「Japan as Number One」なんて本が出版され、日本の歴史上初めて「先を行く真似すべき国」がない状態になります。ここから日本の迷走は始まりました。

当たり前ですね。今までずーーーと、ヨーロッパみたいになりたい!アメリカみたいになりたい!と真似してきて、憧れの国と日本の差が分かりやすい問題として存在し、それをひたすら解いていれば良かったのに、突然「おめでとう!君たちが一番だよ。ここからは自分たちでどこに向かって進むのか考えてね。」と言われてしまい、「そんな事言われたってどうしたらいいか分からないよ…!」と目的地を決められないママ迷走を続けているのが日本の失われた30年な訳です。

「クソ仕事の蔓延」というキラーワード

著書の中では「クソ仕事」という言葉が何度も出てきます。「クソ仕事=無くても誰も困らない意味の無い仕事」という理解を私はしていますが、以前自分で「なぜ今の時代、会社にVisionが求められているのか?」というnoteを書く際に、世界中に食料を輸出するアメリカで第一産業に関わる労働者はどれ位いるのか?を調べた事があります。

一次産業→1.4%
二次産業→19.7%
三次産業→78.9%
出展:帝国書院
https://www.teikokushoin.co.jp/statistics/world/index05.html

※一次産業は農林水産業、二次産業は工業、三次産業はサービス業ですね。

これ、なかなか衝撃的な数字だと思うんですが、人間にとって根源的な仕事である「食べ物を生産すること」に直接的に関わっている人はたった1.4%しかいないのです。当然第二次産業、第三次産業にも人間の生活に欠かせない仕事は多くありますが、人間が生きる上で一番大切なこと「食べる」は、たった1.4%の人たちで賄える(世界中に輸出しているので有り余るの方が表現として適切)という事実から見ても、世の中に「クソ仕事=意味の無い仕事」が蔓延している事が容易に想像ができます。

本の中で紹介されている調査でも、リクルートキャリアの「働く喜び調査」において「働く喜びを感じている」と答えた人は14%しかおらず、その他、海外での調査などを含めてまとめると、およそ8割から9割の人が自分の仕事を「どうでもいい」と考えており、「意味」や「やりがい」を見出だせていない事が紹介されています。

これ、私としてはすごくしっくり来るんですが皆さんはどうでしょうか?

今の世の中って「仕事をする為に無理やり仕事を作り出している」状態な気がしていて、皆で必死になって「忙しいフリをしている」だけだと思っています。便利ではあるけど、別にコンビニが24時間空いてなくたって困らないし、宅配便の配達時間を3時間刻みで指定出来なくたって問題ないですよ。
著者はそんな状況は「無意味の泥沼」と表現していますが、痛烈ですよね(笑)。

経営資源の中で唯一「人」には可変性がある

経営資源は「ヒト、カネ、モノ」の3つがあり、カネとモノには可変性がありません。可変性が無いというのは「会社に1000万円資本金がある」というのはすぐに変化する様なものではなく、また、「工場にある機械(モノ)が1日で生産可能な量」というのもすぐに変化するものではない、という意味です。

そんな中「ヒト」には可変性があります。人は「こんな仕事何のためにやってるんだよ…?」と思っていれば当然やる気も出ないですし、集中力も上がりません。でも、「今やっている仕事が誰かの役に立っている。目指す未来に繋がっている。」と思えれば、自然とやる気がでて、結果として生産性が向上します。つまり、人は「モチベーションの高い、低い」でパフォーマンスに大きな差が出る。可変性がある、という事です。

これに関連して、皆がクソ仕事に飽き飽きしているこんな世の中で成長を続けている魅力的な会社は、会社の活動を通して「成し遂げたいこと、目指すべき未来」をVisionとして掲げています。これらのVisionに共感して会社に入る人は、高いモチベーションを持って業務に取組む為、経営資源の一つである「可変性のあるヒト」を最大限に活用でき、結果として会社全体のパフォーマンスが上がり更に成長していきます。

因みに、日本の多くの企業が掲げている「社是」と「Vision」の違いについては「共感性があるか?」がその違いとして挙げられていました。

皆さんの所属している会社は自分のモチベーションを上げてくれる様なVisionを持っているでしょうか?残念ながら私の会社にはありません。

新しい時代のリーダーに求められる「未来を構想する力」

モノが過剰、問題が希少な時代、クソ仕事の蔓延、ヒトの可変性、Visionの大切さについて書いてきましたが、そんな時代だからこそ人を引っ張っていく、社会を引っ張って行くNEWTYPEのリーダーには「未来を構想する力」が求められています。

なぜなら「明らかな不便、問題」が無い、問題が希少な時代において、解決すべき問題を見つける為には「こういう未来を作りたい」という意思と構想を自分の中に持ち、その「未来と現在の差分」から解決すべき問題を見つける必要があるからです。

そして、その問題設定から仕事に意味を与え、携わる人から大きなモチベーションを引き出す事、それが新しい時代のリーダーに必要な能力です。

日本の失われた30年の話を書きながら思っていましたが、私は自分が生きてきた30年以上に渡って、日本の政治家が「自分は日本をこういう国にしたいんだ!」という夢を語っているのを見た事がありません。みんな「安心できる社会を作ります!」とか言ってるけど、それってVisionじゃないですよね。夢じゃない。

だから誰も共感しないでどんどん皆政治に無関心になり、モチベーションが下がっているんだろうな。

個人としてできること

ここまでわりと社会全体の流れ、変化について書いて来ましたが、本の中では個人として新しい時代にどう適応するか?NEWTYPEの人たちはどの様な思考・行動様式を持っているか?について詳しく書いてあります。

細かく全てを書く事はできませんが、新しい時代を生き抜くために個人ができる事としては基本的に「組織に対して変わるように働きかけること」か「変わらない組織を辞めて別の会社に移動or独立」という2つの選択肢しかありません。

そして、変化のスピードが激しく、将来がどうなるか不明瞭な時代においては、どちらの選択を採るにしても「変化しつづけることに柔軟であること」が大切なんだと理解しています。

私個人での現状で言えば、まさに「組織に対して変わるように働きかけている」ところで、どうにもならなかったら「移動する」という選択肢を取れるように常に自分なりの学び、情報発信を続けている状態です。(このnoteも会社の人に共有するので、働きかけの一種としてこういう事を書いていたりします。)

おわりに

今回NEWTYPEの時代を読みながらとても興奮したのは、自分がなんとなく考えていたことが様々な裏付けと共に繋がっていったからです。
例えば、「Visionの大切さ」「新しい時代の働き方、学び方」「新しい時代に支持される会社の在り方」などについてnoteに書いてきて、そんな時に考えていた事が一つの大きな時代の変化、ストーリーとして語られていた事にとてもワクワクしました。こういう事ってたまにありますが、これが読書の醍醐味だと思います。

山口周さんの著書は他の本もとても評価が高い様なので、是非読んでみたい。「クソ仕事の蔓延」「無意味の泥沼」と言い切ってしまうあたりが、個人的にはとても好きなツボをついてくれる一冊でした。

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以下、内容を忘れない為の個人的な読書メモです。多い。

・オールドタイプ
→ 従順、論理的、勤勉、責任感が強い
・ニュータイプ
→ 自由、直観的、わがまま、好奇心が強い
・オールドタイプは問題を拡大生産している
・システムのリプレイス(社会主義)は失敗したので、システムを微修正しながら、その中で生きる人間の思考・行動様式を変える事が必要
・問題の希少化と正解のコモディティ化
・本来の仕事は「有用なモノを作る」「重要な課題を解決する」こと
・無意味の泥沼
・VUCA「経験の無価値化」「予測の無価値化」「最適化の無価値化」
・スケールとニッチが両立できる時代/グルーバルニッチ
・「作りたいもの」が貫通力を持つ
・丸山 眞男(人類学者)「日本人はキョロキョロしてる」「外来のものを無批判に飛びついて飲み込む」
・イノベーションを起こそう!と思って起こすイノベーターはいない
→ イノベーションはどんな問題を解決するのか?意味が必要。セグウェイの失敗。
・今目の前に広がる風景は誰かの意思決定の集積
・「未来はどうなるか?」ではなく「未来をどうしたいか?」
・重要な局面で予測は必ず外れる
→ 1982年にマッキンゼーが行った予測「2000年の携帯電話の市場規模は90万台」実際には1億台をゆうに越えて、その予測を信じたAT&Tは子会社に買収されて消滅。
・部下を動機づける意味を与えられない自分の不甲斐なさを責めるべき
・モチベーションは現代社会最大の経営資源
・若者はいつの時代も常に「その時代に足りないもの」に対してハングリーなだけ
→ 昔はモノにハングリーで今は意味にハングリーになっている。
・What「いきのしやすいシャカイをつくる」
・Why「便利で豊かになっているのに、どんどん日々の暮らしはせわしなく、息苦しくなっているから」
・How「多様な生き方を伝える」「何かにチャレンジしやすい環境をつくる」「自分たちが息のしやすい会社を作る」
・差別化の喪失→
論理的に導き出された答えは皆同じ様なものになる。
・論理と直感をしなやかに使いこなす
・偶然性を戦略的に取り入れる
・ルールより自分の倫理感に従う
・わがまま「我」の「心」のまま
・GDPという指標がクソ仕事を増やす
→ もともと「どれだけモノを作れるか?」という指標として生まれた。
→ ありとあらゆるものを計測するけど、私達の人生を価値あるものにする要素は何も計測しない。
・企業は社会主義が唯一生き残る場所
→ 仕事が均等に与えられ、食料(お金)が配布される
・個人でもリスクの違うタイプの仕事を複数持つ「ポートフォリオ」的な考え方が必要
・「命令を受けたエリート」vs「好奇心に突き動かされた起業家」という戦いは後者が勝ってきた
→ 今のGoogleとかも30年前は誰も知らないベンチャー。
・努力のレイヤー、フィットする場所を見つける努力
・専門家を企業に抱える意味とは?
→ 門外漢だからこそ見える画期的な視点。クラウド上で幾らでもアイデアを募集できる時代。
・シェアしギブする人が最終的に多くを得る
・大量に試して上手く行ったものを残す
・「良い」「悪い」はその時代の価値観、文脈に依存する
・本来の自分らしい自分であろうとする力「コナトゥス」
・「要するに○○」は自分の中にある既存のパターンに当てはめているだけ
→ 他者に対して敬意を持って傾聴する
・いい偶然を引き起こす習慣「好奇心、粘り強さ、柔軟性、楽観性、リスクテイク」

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