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転職してきた人事が就活生に伝えるべき「世界」とは


前回投稿した、「就活ルール廃止」をきっかけに、もういい加減、本音で語りましょうよ。

は、広く読まれたようです。

 今日は、その続編です。私が10年間、新卒採用のプロセスを近くでみてきて、就活生に届けてきた言葉があります。

「内定はゴールじゃない。(*内定より大事なのは、内定してからだよ。)」

「内定を目的に就活するくらいなら、20代のうちは海外にでも行って、自分にしかできない経験を積んだらいいのでは?」

 この言葉を聞いて、どう感じますか?

 就活生なら、「何を教員の立場から正論言って、そんなことより内定取らないと、どうにもならないんですよ。」と思う人もいるでしょう。

 また、人事担当者であれば、「何を寝ボケたこと言ってるんですか。採用予定の人数を充足させないといけないんですよ。とにかく、一人でも多く<優秀>な人材にあって、内定を出して、辞退しないようにフォローして、入社させる。それが譲れないミッションだ。」と。

 目の前の(年度)内定を軸に考えてしまうと、就活生は「何がなんでも内定」、人事担当者は、「何がなんでも採用」という「構図」に陥ってしまってきたわけですね。

 この「構図」をズラしてみたいなあと考えているわけです。(もっと突っ込むと、この「何がなんでも内定信仰を生み出す「構造」を壊していかないとなあと考えています。

まだ、思考の途中で、結論を出せるわけではありません。noteなので、気づきレベルでも許されますよね。

 最近、一つ感じるのが、私の知り合いの人事担当者の方の多くが、転職されているということです。その中には、前職は人事とは違う部署で仕事をしていて、転職後に人事を担当することになったという方は少数です。多数は、前職のHR系や人事を担当していた、その経験が評価されて転職し、人事を任されている人たちです。人事を専門とする「プロ人事」と言える方達です。

 今、新卒採用の関係者に必要なのが、「内定して、就職して、その後は転職もあるし、独立もある。だって、実際に私がそうだったし。時には、(まだまだ全然少数派ですが)海外への留学やサバティカル休暇もあるよ。」という<今の働き方のリアル>を包み隠さず伝えてあげることなのではないかと思うのです。

 この20年ほどで決定的に変わってきたことが、「転職は負けではない」という<文化>が出来上がったことだと思います。ソーシャルメディアの隆盛や採用系のテクノロジーの革新もあって、ひと昔前までは、「会社の中で秘密裏に行われてきたこと」が、外の目にも見えるようになってきました。

 会社の肩書ではなくて、「どんなことを手がけてきた人なのかも、見えるようになってきました。」

 だから、これだけ、人事担当者の方々の中にも「転職経験者が増えているのですよね。」

 つまり、「転職も一つの選択」にすぎないということなのです。では何が大切なのかというと、転職経験を踏まえて、いかなるキャリアを形成してきたのか。やや専門的にはなりますが、転職経験を通じて、どのようなキャリア資本を蓄えてきたのかになります。

 この視点に立つと、働く人と会社の関係は、音を立てるようにして、ガラリと変わります。とにもかくにも内定を獲得して、生きた情報も少ないなかで、就職した会社に篭り働き続ける。会社に雇われているのだから、自由の聞かない受け身を全うしていく檻の中のワーク。

 から、自分がやりたいことをやるために、それができる企業やフィールドを果敢に選び、そこに飛び込み、チャレンジして行く。雇われるというよりは、自らの意思で会社と「アライアンス」を結び、一定の期間、コミットし、また、次のステージに行くことになるかもしれない、羽の生えたワーク。

 キラキラした人事の方たちは、実はこの羽の生えたワークを体現している人たちですよね。

 だとするなら、「内定」にこだわるより、社会人の先輩としてしっかりとキャリア形成をしていく「その先を正直に伝えてあげる採用活動」が、今後の新卒採用には求められてくるのではないかと思います。

 昨日、ライフシフトジャパン取締役の大野誠一さんと打ち合わせをしていて話題に上ったリンクトイン創業者のリード・ホフマンさんらが記した「ALLIANCE」を改めて読んでみました。

 そこには新卒採用にも通じるいくつかのヒントがありますね。

 会社と個人のパートナーシップは「信頼」に基づく

 雇用を「取引」ではなく、「関係」として捉えよう

 相互信頼、相互投資、互恵の原則に基づく、チームで考えよう

 そして、会社の「卒業生(=転職していった人)」たちとのつながりを大切にしよう

 このようなことが書かれています。

 つまり、新卒採用においても、特に転職を経験した人事の方は、

 「この会社で働くと、いかにキャリア形成が可能であるかを具体的なケースを示しながら伝えてあげることと。その先には、卒業(=転職)してさらに活躍して行く人もいるというロールモデルを示してあげること」

 これが「とりあえず内定」の悪循環構造をブレークスルーする糸口になるのではないかなと思うわけです。

 例えば、インターンプログラムからの採用に労力をかけるより、 インターンプログラム参加生の「卒業生ネットワーク」を大切に育てて行く方が、将来的には「アライアンスパートナー」を増やすことに繋がり、就活生に一番伝えたい「会社の魅力」を届けることになるのです。

 「就活ルール」廃止後の新卒採用で重視すべきは、採用開始時期をめぐる「新・就活ルール」議論ではなくて、このように働くことの本質をしっかりと見つめ直し、長期的な視座で自らが働いていくために不可欠な「キャリア・リテラシー」を育てていくことなのではないでしょうか。

 

 

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