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ビジネス・エスノグラフィーまでの学問的系譜

こんにちは。涼しくなり、過ごしやすい季節になりましたね。さて、今回は「ビジネス・エスノグラフィー」について解説をしていきたいと思います。まだまだ、耳慣れない言葉だと思います。

ビジネスという言葉の説明は入りませんね。だとすると、わかりにくいのが、「エスノグラフィー」です。

エスノグラフィーは、「人びとの集合的関係性のリアルな記述」を得意とする「(質的)方法論」です。

エスノグラフィーの主戦場だったのが、人類学の分野です。「自分にとって、日常的でない<世界>へと飛び込み、そこで暮らす人々の行動や慣習」を描き出していきました。

私は、UC.Berkeleyの客員研究員をしていた2006年から2008年にかけて人類学的調査を実施しました。その成果をまとめたのが『ルポ 不法移民』です。

メキシコ、グアテマラ、ニカラグア、南米諸国からアメリカ本土へど「出稼ぎにやってくる日雇い労働者」と一緒に、2年間働きました。

日雇いをしながら、Berkeleyの大学院ゼミに参加していたので、汗だくで参加していたこともありました(笑)。

なぜ、タイトルを「ルポ」にしたのか。ルポルタージュとエスノグラフィー は、書き方の作法や分析の視点で、かなり近しいものがあります。エスノグラフィー という言葉を「アカデミックな世界」の専売特許としないために、広く知られている「ルポ」の形式を意識して書き上げ、読んでいくと中身は、「エスノグラフィー ね」という届け方をしました。

この辺りも深く論じたいのですが、ビジネス・エスノグラフィーまで長くなってしまうので、先に進みますね。

「未開の分析」から「身近な未開へ」:人類学から社会学へ

人類学的なエスノグラフィーが、日頃の生活空間では出会うことのない集団の分析。地理的にも、心理的にも、生活行動的にも「距離」がある「未開の地」で暮らす人々へのアプローチだったわけです。

でも、もっと近くの「未開」にもエスノグラフィーは、援用されるべきだよ。ということで蓄積されるようになったのが、1920年以降の「初期シカゴ学派都市エスノグラフィー」。日頃生活する都市の中での「未開」にアプローチするようになったのです。

私は研究者として、やっていくと覚悟をしたのも、この「初期シカゴ学派都市エスノグラフィー 」に出会ったからです。これから書ける(かもしれない)/書いてみたいと感じたことを今でも鮮明に覚えています。

それから17年。随分と時間はかかりましたが、新宿東南口、GAP前で夜な夜な集まる「スケートボーダー」のエスノグラフィーをまとめ、出版しました。博士号もこのエスノグラフィー で取得しました。

17年と時間がかかってしまったのは、その時、海外で客員研究員をしていたこともありますが、その間に2冊の「エスノグラフィー 」を翻訳していたからです。この時期には、もう戻りたくありません。。(笑)

一冊は、『ストリートのコード』です


この本は、初期シカゴ学派のエスノグラフィーです。そして同時に訳していたのが、初期シカゴ学派を批判的に継承するバークリー学派現代エスノグラフィーの著書。

そして、これらの都市エスノグラフィーをより、身近なフィールドへの分析へと展開したのが、ビジネス・エスノグラフィーです。

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ビジネス・エスノグラフィー は、ビジネスシーンを描いていきます。

面接を受けて、その後、働いて、丼家のエスノグラフィーを書きました。この分野は、本当にこれから領域で、圧倒的な「人材不足」です。関心がある方は、ぜひ、読んで見てください。

そして、組織エスノグラフィーを学ぶ夜会へ 

ビジネス・エスノグラフィーに関心を持った方は、ぜひ、連絡をください。

今、18名で夜会を実施しています。あと2枠ほど、大丈夫です。

夜会DAY1の 配布論文・資料:
① エスノグラフィを活用した企業イノベーション
https://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2011/09/20100830.pdf
② 観察・エスノグラフィーの製品開発への応用
https://doors.doshisha.ac.jp/…/re…/ir/15512/017063050021.pdf
③ 「ネット世論」 研究から見る「ハイブリッド・ エスノグラフィー」 の必要性
https://www.jstage.jst.go.jp/…/mscom/93/0/93_43/_a…/-char/ja

ビジネス・エスノグラフィーは、人類学→社会学の系譜をえて、今、最先端の学問領域として世界的にも注目されています。

例えば、次のような論文があります。


ただ、現場に行けば、書けるというものではなくて、書き方の「作法」を身につけないとかけません。ビジネス・エスノグラフィー で大切なことは、「気づき」です。

何が問題なの?何を改善したいのか?ここを徹底的に考え抜くことです。

http://gri.jp/report/ethnography/2950

最近では、「デザイン思考」×「エスノグラフィー」も注目されています。

ということで、続きは夜会で。

最新作 プロティアンもこの機会に読んでみてください






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