憲法審査会 2023年5月25日 議事録


◆各会派代表の発言
新藤義孝(自由民主党・無所属の会)
自由民主党の新藤義孝でございます。本日は国民投票に関して、私の意見を述べたいと思います。2021年6月に成立した国民投票法改正の附則4条では、第1号で投票の外形的事項である投票環境の向上について、第2号で投票の質に関する事項であるCM規制等について検討を進めているわけであります。第1号で規定されております投票の外形的事項につきましては、自民・維新・公明・有志の4会派が昨年4月にいわゆる3項目案を提出し、主旨説明済みでございます。その内容については、公選法で既に措置されている事項であり、審議でも特に異論はなかったものであります。主旨説明済みの法案を審議するのは、これは国会の当然の責務でありますが、提出以来残念ながら立憲民主党と共産党の理解を得ることができず、すでに1年以上審議が行われておりません。審議を速やかに行うべきだと、速やかに処理すべきだということを改めて訴えたいと、このように思います。
次に附則4条2号に規定されている投票の質に関するCM規制の問題について述べます。国民投票運動に関する基本的な考え方は、国民投票法制定時に整理されたように、国民投票はこの国民主権最大の発露の場であり、国民投票運動はできるだけ自由に、これが当時の民主党を含めて、法律として作られた根本的な概念でございます。その結果、投票事務関係者や裁判官等の特定公務員の国民投票運動の禁止、公務員や教育者等の地位利用による国民投票運動の禁止など、それ以外は放送CMについての投票期日直前2週間の関与CMの禁止のみが規定されることになり、これによって国民投票運動の自由とその公平公正のバランスが図られているわけであります。すでに放送CMについては、民放連の参考人質疑を通じ、受け手である放送事業者のガイドライン等、自主規制の取り組みは量的な観点も含めてこの公平性を確保するための準備が進んでいることが確認されています。論点として残りますのは、広告の出し手である私たち政党による取り込みのあり方、そして国民投票広報協議会を通じた公平な広報活動をいかに確保するか、この2点になるというふうに考えます。本日はすでに法定化されている国民投票広報協議会の規定についてこの議論をしたいと考えています。まず配布資料「1.組織」をご覧ください。概要にありますように、広報協議会は憲法改正の発議があったときに国会に設けられる機関です。①委員の人数は、憲法改正発議時の衆議院議員、参議院議員それぞれ10人ずつの合計20人と規定されています。②選任方法については、原則は各会派の所属議員数の比率により割り当てて選任することとなりますが、例外として憲法改正に反対の会派から1人も委員が選任されることのないよう出来る限りの配慮をするものとされています。③会長は委員の後選であることとなります。④議事の定足数は、各議員の委員10人中7人以上の出席が必要。その議決は出席議員の3分の2以上の多数であることとし、慎重な手続きをとることとなっています。これらの規定を実施していくためには、右の欄にありますこの「課題」に記したように、委員や会長選出の方法、協議会の開催日時の決定、その他の議事手続き等の細目について、広報協議会規定を定めなければならないわけでございます。この広報協議会規定は、両議院の議長が協議して定めるとされており、実際には衆参の憲法審査会において協議し、両院の議員運営委員会と相談した上で、両院議長に決済いただくことになると思われます。いずれにしても現在この規定はまだ定められておりません。今後作業をしっかりと進めたいと、このように考えます。次に「2.権限」をご覧ください。広報協議会の権限は憲法改正案の国民に対する広報であり、4つの事務が国民投票法に規定されています。まず①国民投票広報の原稿の作成です。これは選挙における選挙広報のようなもので、この広報には、(1)憲法改正案やその用紙等についてわかりやすい説明を掲載することになっており、その記述は客観的かつ中立的なものとされています。また(2)憲法改正案に対する賛成意見、反対意見も掲載することとされており、この部分は公正かつ平等に扱うことになっています。次に②投票所に提示する憲法改正案の用紙の作成についても国民投票広報と同様に扱うことが定められています。さらに③放送及び新聞広告に関する事務について広報協議会は憲法改正案の内容をこの国民に周知広報するべくテレビ・ラジオの放送メディアや新聞等を使って広告を行うこととされており、その際にはわかりやすい説明を客観的かつ中立的に行うこととされています。また政党等が無料でテレビ・ラジオや新聞に賛成・反対の意見を掲載することも認められており、その場合には賛否平等の取り扱いが定められています。すなわち賛成の政党、反対の政党、双方に対し同一の時間数、同等の時間帯、同一の寸法、回数を与えるなど、同等の利便を提供しなければならないとされているわけであります。最後に④その他憲法改正案の広報に関する事務については、国民投票法制定時に想定されていなかったSNSによる周知広報活動なども、この条文を根拠に行うことができると考えます。なお右欄の「課題」にございます「放送及び新聞広告に関する事務の細目」は放送及び新聞広告に関する規定で定めることになっています。例えば放送については放送事業者の決定手続き、各政党等の放送時間枠の割り当て手続き、無料で行う録音・録画の上限額等について定めることが想定されており、新聞広告は新聞社の決定手続き、広告の寸法、掲載回数、掲載日の決定手続き、各政党等の広告枠の割り当て手続き等を定めることになると思われます。最後に「3.事務局」として広報協議会の事務を補佐するための事務局を設置し、事務局長その他の職員を置くこととしております。つまりこの事務局規定の制定や国会議員法等の改正が必要になるということでございます。これら2の「放送及び新聞広告に関する規定」と3の「事務局規定の制定や法改正」は現状全く手が付けられておらず、まず衆参の憲法審査会が共同で案を作らなければなりません。
以上、国民投票広報協議会の組織や権限、残された法整備の課題について述べて参りましたが、これらは事務的な内容であり速やかに詰められるものと考えています。国民投票広報協議会について定めるべき3つの規定すなわち、広報協議会規定、事務局規定、放送及び新聞広告規定、及び国会職員法、国会職員育児休業法などの関連法律の改正については、まずは事務方によるたたき台を作成し、それをもとに幹事懇談会等において、成案を得るべく、各会派との協議を行ってはいかがかと提案をいたします。今後、筆頭間協議や各会派の皆さんとよくご相談をさせていただきたいと、このように思っております。今朝の幹事会におきましては、次の定例である6月1日にも審査会を開催し、討議を継続することを提案いたしました。引き続き憲法審査会が安定的に開催され、充実かつ深い論議が行われるよう委員各位のご理解とご協力をお願いして私の発言といたします。

階猛(立憲民主党・無所属)
立憲民主党の階猛です。本日のテーマである国民投票法について、私からは放送CMとネットCMの規制について、我が党の考え方を述べます。なお、論点を明確にするため、昨年の通常国会以降の放送CMとネットCMの規制などを含む国民投票法に関する各会派の発言について、私なりの視点で衆議院法制局にまとめていただいた一覧表を提出するべく幹事会で提案させていただきましたが、本日も叶いませんでした。自民党の新藤筆頭は3月16日の当審査会において、投票の質に関する国民投票法の論点として、放送CMとネットCMの問題をあげられた上で、今後さらに論点を深掘りした整理を行ってみたいとも述べられていました。それから早2ヶ月余りが経ちます。いつになったら論点整理が行われるのでしょうか。後ほどお答えいただけますでしょうか。緊急事態における議員任期延長については、早々と論点整理の資料を当審査会に提出される一方、国民投票の際の放送CMとネットCMの規制については、いつまでも論点整理を行わず、我が党がこれを行おうとすると妨害する、このような手前勝手でご都合主義な態度は、許されないということを冒頭に指摘いたします。
さて、国民投票に関するCMについては国民投票運動すなわち憲法改正案に対し賛成または反対の投票をし、又はしないよう勧誘する行為の手段として有料で行うCM、以下勧誘CMといいます。これと国民投票についての意見表明のために有料で行うCM、以下意見表明CMといいます。に大別できます。この勧誘CMと意見表明CMの規制について、放送の場合とネットの場合に分けてわが党の考え方を申し上げます。まずは放送のCM規制について、現行の国民投票法では放送による勧誘CMについて主体を問わず投票期日2週間前から禁止していますが、わが党の改正案では国民投票運動期間全体にわたって禁止することとしています。改正の根拠となる立法事実としては、第一に民放連の姿勢の変化です。現行法制定時には勧誘CMの量、憲法改正案の賛成側と反対側で均衡させるいわゆる量的規制につき、民放連が自主的に行うこととされていたにもかかわらず、現在は量的規制が困難であるとして直接的な規制を行わないこととされ、禁止期間を2週間とした当初の前提が変わっています。第二にネットやSNSの普及です。これにより現行法制定時にはなかったいわゆるアテンションエコノミーという状況が生まれ、CM業界では人々の関心と時間を奪い合う競争が激化しています。その中で多くの人々の関心を惹きつけるためだけの扇情的なCMや、経営的貢献度が高い資金力のある広告主のCMが増加し、国民が多種多様で適切な情報を得られるようにするための規制の必要性が高まっているわけです。この点につき表現の自由の過度な規制にあたるとの批判をいくつかの会派から受けています。しかし我々が規制しているのは、表現の内容ではなく表現の手段であり、表現の内容には踏み込まない、内容中立規制です。憲法学の世界でも、表現の自由を規制する法律の合憲性を審査する場合、表現内容規制と表現内容中立規制を区別した上で、前者には厳格な基準が妥当するとしても、後者にはより緩やかな基準が妥当するという二重の基準論が多数説となっており、我々の案はこれを踏まえています。しかも意見表明CMについては、わが党の改正案でも国民投票広報協議会を通じた広報などの代替手段が存在する政党等については禁止するものの、それ以外の主体については資金規制に抵触しない限り従来通り自由に行えることとしています。表現の自由の過度な規制にあたるとの批判は当たらないと申し上げます。
次にネットCMの規制についてです。諸外国ではオンラインCMという言い方が一般的になっているようですが、前例に従ってネットCMと言います。現行の国民投票法ではネットCMについては何ら規制が設けられていません。改正の根拠となる立法事実としては、放送CMで述べた立法事実の2点目がそのまま当てはまります。しかもネットCMの市場規模は急速に拡大し、今や放送CMを上回る規模になったと言われています。ネットCMの規制が欠如した現行法を漫然と放置する事は立法府の怠慢だと言わざるを得ません。さて、わが党の改定案では、放送CMと同様、政党等の勧誘CM及び意見表明CMを禁止した上で、それ以外の主体によるネットCMについては勧誘CM及び意見表明CMを問わず、当該CMの主体に関する情報を表示し、資金規制を守っている限りは自由としています。ただしネット事業者等による掲載基準の策定の努力義務、国民投票広報協議会によるガイドライン策定等の規定を盛り込み、まずは強制力を伴わない方法でネットCMの健全化を図りたいと考えております。なお、一部の会派からは政党等以外の禁止規定を盛り込んでいない点で、放送CMの規制とバランスを失するのではないかというご批判をいただきました。傾聴に値すると思います。4月13日に日弁連が公表した憲法改正手続法における国民投票法に関するインターネット広告の規制に関する意見書においては、ネットCMにつき、勧誘CMか、意見表明CMかは問わず、少なくとも投票期日1ヶ月前から禁止すべきとの見解が示されております。また5月11日の当審査会で城井委員が述べた通り、フランスでは国民投票日の6ヶ月前からネットCMの利用が禁止されているとのことです。それ以外の諸外国のオンラインCMの規制の動向についても、国会図書館が詳細な調査を行っています。いくつかの会派からネットCM規制は困難だとの意見が上がっていますが、日弁連や国会図書館を当審査会に招いて、わが国のネットCM規制のあり方について議論を深掘りしていくべきと考えております。なおネットの問題は国民投票に限られないという意見が多くの会派から上がっており、これを否定するものではありません。しかしそうであるからといって、国民投票法にネット等CM規制を盛り込まない理由にはならないということを申し上げます。むしろ国家レベルの政策を、直接民主主義によって決定する唯一の機会である憲法改正国民投票が適正かつ公平に行われるために、ネットCM規制を国民投票法に盛り込むことが最優先で行うべき課題であるということを申し上げ、私からの意見表明終わります。


三木圭恵(日本維新の会)
日本維新の会の三木圭恵でございます。本日は国民投票についてという事ですので、昨年に意見を述べました部分と重なることも多くありますが、再度、大事な論点について述べさせていただきます。できましたら何度も同じ議論を繰り返すのではなく、一定の結果を導き出すべきと考えます。
それでは意見表明に入ります。まず令和4年4月27日に提出されました3項目については、その内容が開票立会人の選任に関わる規定整備、投票立会人の選任要件緩和、ラジオによる政見放送にFM放送を追加、という案件ですから、早急に審議に入り結論を見るべきと申し上げます。国民投票における公平公正に関する考え方でございますけれども、わが党の基本的な考え方が立憲民主党の主張とかなり違う部分がございます。立憲案の方では、先ほど階幹事の方からもおっしゃられておりましたけれども、まず1-1、2に「国民投票運動のための広告放送の全面禁止」と言われておりますが、これは賛否の投票の勧誘である国民投票運動のための広告放送において、主体を問わず全期間禁止され、また政党等は賛否の意見表明も一律に禁止するという案でございますが、これこそ表現の自由を侵害し、憲法違反の恐れがあるのではないかという懸念がございます。また国会の発議に至る議論の当事者である政党による放送を通じた情報提供を一律に規制することが国民の議論の判断の重要な資料を奪うことにつながると考えます。民放連でございますけれども、冷静な判断を行うための環境整備を確保するため賛否の意見表明のための広告放送についても投票14日前から取り扱わないとの基本姿勢を示しており、その他の事はすでに考査ガイドラインも公表されておりますので、この民放連の自主的取り組みに加え、広告の出し手である政党の紳士協定、広報協議会による公平放送の充実や指針の策定等で、対応としては充分と考えますがいかがでしょうか。
次に立憲案の2の「国民投票運動等のためのネット等の利用に関わる規制」についてネットの動画広告はラジオ・テレビと同様に、感情に訴える扇情的な影響力を持つ広告であると考えられますが、立憲案のように政党等による有料広告を禁止してしまうと、政党等以外のものは賛否の投票の勧誘のための有料ネット広告が禁止されていないため、バランスを失います。政党等のみに規制をかけるとかえって言論空間の歪みを拡大してしまう恐れがあると考えます。ネット広告について規制をかける事は非常に難しいので、ネット業者の自主的取り組みや指針の策定でもすべてに網はかけられません。またネットCMという形ではなくても、YouTubeで配信するなど、意見表明というのは様々な形でなされます。そういった玉石混交のネット広告の真偽、ネットで流される情報の真偽を国民自身が取捨選択するためにも、テレビ・ラジオなどによる多角的論点の提示が必要ではないかとの見解が、昨年の憲法審査会で民放連の永原参考人より示されました。テレビ・ラジオに規制をかける事は、ネット広告に規制がかけられないことを念頭に慎重であるべきと考えます。片方は規制しているのに片方は規制できないという状態は公平性の観点から非常に問題です。よってテレビ・ラジオに民放連が示している考査ガイドライン以上の規制を行う事は必要ないのではないかと考えます。フェイクについても情報が溢れて、次から次へと雪崩のように押し寄せてくるネットの環境は、法規制ではなく自律的な取り組みを通じた誤情報の自然淘汰に委ねるべきではないかと考えます。またファクトチェックを自発的に行う民間サイトなども出てきておりますので、そういったサイトを運営する民間企業とも広告協議会が連携する事は方策としてあり得るのではないでしょうか。プラットフォーマーの努力も欠かせません。
フェイクについて、またマイクロターゲット広告については、一定の常識的運営が望まれます。受け手の課題もございます。情報リテラシーとして小学生の頃から教育現場でもネットの情報は玉石混交であることをきっちりと教えることが、大切になってくると考えます。しかしながらこういった数々の課題は、国民投票のみに限られた課題ではなく、この憲法審査会で議論するのが果たしてふさわしいのかどうか、論点を整理することが必要と考えます。
次に資金規制についてです。どの範囲のものまで規制の対象とするかが課題となっていると考えます。
政党等については、規制の対象とすべきとも考えられますが、すでに政治資金規正法で透明化されています。
一方、民間の団体や個人についてまで資金規制の対象とする必要があるかという事は、事務の煩雑化により先達的な支出等が行われかえって不透明化するのではないかとの懸念があります。実際に国民投票が行われるとなれば、政党等以外の団体は多数にのぼると予想され、1団体あたりの上限額を設けたとしても、団体数が制限できない限り無意味となるのでその意義が乏しいと考えます。また、個人についてまで資金規制の対象とする必要があるかどうかは事務の煩雑化により過度な事務負担が生じることとなります。団体にしても個人にしても収支報告書の作成や公表は、国民投票の期日後に行われるため、投票結果に影響を与えづらいので過度な事務負担が生じる割に意義が乏しいと考えられます。よって資金規制については、無駄に煩雑な事務作業を増やすだけで成果に乏しいのではないかと思われます。我が党はそのような考え方ですので、立憲案に「国民投票運動に関する支出が1千万円を超える団体の届出制及び収支報告書の提出等」とありますが、まず団体の支出が1千万円を超えるかどうかを把握することが困難である上に、1千万円を超す団体の数が多数にのぼると、広報協議会や中央選管、都道府県選管に過度な事務負担が生じてしまいます。支出限度額の設定については立憲案では5億円とありますが、複数の団体に分けて支出すると容易に規制を先達することができてしまい、実効性に乏しいと考えます。仮に広告規制や資金規制を設けるとしても、それらの違反行為には違反者の罰則等で対応すれば足りるのではないかと考えます。先にも述べましたが、収支報告書の公表は国民投票の期日後に行われることになるはずですが、その意義が果たしてどこまでがあるか疑問でございます。それは選挙の場合は当選取り消し等がありますけれども、国民投票で結果を覆すような事は考えられないかなと思われます。次に「外国人等からの寄付の受領の執行の禁止等」とありますけれども、外国人にも政治活動の自由が保障されており、公選法上、外国人の政治活動だけでなく選挙運動も規制されていません。政治資金規正法上、政治活動に関する寄付を受けることが禁止されておりますけれども、それ以外の外国人等からの寄付については規制がないことを考えると、選挙制度における取り扱いと整合性が図られないのではないかと考えられます。無効事由についても国民投票が無効になる場合として挙げておられますけれども、国民代表機関である国会と主権者たる国民の判断が明確に示されたにもかかわらず、司法判断で事後的に国民投票の結果が容易に覆ることが適切ではないと考えます。そのため無効起訴における無効事由をむやみに拡大すべきではないと思います。明らかな虚偽や規制に重大な違反があった、支出寄付行為につき重大違反があった、ということが無効事由として挙げられておりますけれども、それがどれくらいの国民の投票判断に影響を及ぼしたかを定量的に図ることは不可能でございます。その他の考え方でございますが、1つには国民投票と国政選挙は同時に行うべきではないとの考え方がございますが、法律で一律に禁止すると、例えば技術上の改正で高い投票率を期待しがたいような場合、例えば憲法79条や89条の改正等の場合は、同時実施により投票率の向上を期することができなくなり、硬直的になってしまいます。また特に衆議院の解散との関係で既に設定されていた国民投票の期日を機械的に延期することとなれば、多大な影響と混乱が生じることにもなります。
また同時実施は、投票に関わる経費を大幅に節約することができる利点もございます。国民投票と国政選挙の同時実施の可能性を法律で排除する事は、柔軟な運用を阻害すると考えますので、そのような考え方には維新としては反対でございます。いつまでもCM規制の件で国民投票法案が膠着状態のままなのは、非常にこの憲法審査会としても問題であると私たちも考えております。
新藤筆頭幹事からご発言があったように、国民投票広報協議会の組織等に関する課題、細則や規定をどうするか等の議論を深め、早急にすべてのことにおいて結論を出すことをお願い申しあげまして私の意見表明といたします。ありがとうございます。


國重徹(公明党)
公明党の國重徹です。本日は国民投票法について意見を述べさせていただきます。
まず投票環境の向上についてです。これに関する立憲民主党のご主張は、憲法改正国民投票は通常の選挙とは異なり、主権者である国民が国のあり方を直接決める重要な機会であるから、通常の選挙以上に投票環境の整備が求められ、3項目案以外についても必要な事項がないか検討すべき、というものであります。憲法改正国民投票が主権者国民にとって重要な機会である事はその通りです。しかし投開票の手続きのあり方について選挙と国民投票で求められるものは基本的に同じです。この点、憲法審査会には既に公職選挙法で措置済みである3項目について、国民投票法改正案が約1年前に提出、付託され、主旨説明もなされています。公職選挙法で措置済みのものは、国民投票法に反映させる必要性が明らかですので、この3項目案は速やかに成立させるべきです。
次に放送CM規制やネット規制に関する問題についてです。これらの問題を考えるにあたっては、表現の自由の制約は必要最小限度のものでなければならず、過度な制約は許されない点、また国民投票法の理念である国民投票運動は原則自由とする点を踏まえなければなりません。つまり表現の自由や国民投票運動の自由の保障と、投票の公平公正の確保についてバランスのとれたものになっているのか、この点を常に念頭に置いて検討する必要があります。
この観点から私どもは、現行の国民投票法を超える法規制には極めて慎重であるべきとの立場です。結論から申し上げますと、政党や事業者の自主的取り組みを進めるとともに、国民投票広報協議会を充実強化するという方向性で検討していくべき問題と考えます。
放送CM規制について述べます。立憲民主党は放送CMについて、現行法の投票日前14日間、勧誘CMを禁止するとの規制では足りないとした上で、法律により主体を問わず発議後の全期間において勧誘CMを禁止する、そして政党については意見表明CMについても禁止するとの考えを示されています。しかし主体を問わず発議後の全期間において勧誘CMを禁止するとの法規制は、先ほど階幹事がおっしゃった、内容規制ではなくて内容中立規制であることを前提にしたとしても、表現の自由や国民投票運動の自由に対する過度な規制ではないかという懸念が拭えません。
また政党のみ、意見表明CMを禁止するという点については、憲法改正案についてその内容を最も把握しているはずの政党だけを禁止対象とすることの合理性という観点から慎重な検討が必要と考えます。さらに立憲民主党はネットCMについても、政党のみ禁止するとの考えを示されています。この点についても放送CMと同様、憲法改正案についてその内容を最も把握しているはずの政党だけを禁止対象とすることの合理性に疑問があります。政党以外はネットCMを自由に行えることから、ネットCMにおける情報発信の内容に偏りが生じ、かえって言論空間が歪められる危険性があるように思います。またネットCMについては、例えば出稿の仕組みが複雑であること、業界団体に属していない広告主や媒体運営者、いわゆるアウトサイダーが多数存在していることなど、ネット特有の特徴があります。これらを踏まえると実行的な法規制は困難であり、政党側の自主規制と事業者側の自主的な取り組みを合わせて推進していく方策が適切と考えます。他方で、ネットCMに限らず、ネットの利用に関しては、政治的なマイクロターゲティングなどによって民主主義に悪影響を及ぼす恐れがあるなどの指摘があります。このようなデジタル社会において人権や民主主義をどのように守るのかという点については、私もこれまで当審査会で度々問題提起をして参りました。ただこの問題は国民投票の場面に限られる問題ではありません。選挙においても同様の危険があります。またマイクロターゲティングやフィルターバブル、さらにはフェイクニュースなどによって個人の政治的信条が、知らないうちに影響を受けてしまうとすれば、憲法改正の発議から国民投票までの期間だけを規制しても、充分とは言えません。国民投票法だけで解決できる問題ではなく、言論空間全体をどのように適正化していくのかという観点から議論すべき問題です。さらにデジタル社会の問題は個人の尊重や平等など憲法全体の議論が必要な問題でもあり、幅広い議論が必要です。この問題に対しては1つには国民のリテラシー能力の向上も必要です。そのためにも国民がどこに正確な情報が掲載されているかを容易に知ることができることも極めて重要です。この観点からも国民投票広報協議会がネット上においても正確な情報を多く発信し、その情報に国民が簡単にアクセスできるようにする必要があります。この点、わが党の北側幹事が当審査会で、国民投票広報協議会からの発信について、各メディア事業者の方々の協力をいただき、例えばネット検索をしたら広報協議会の情報発信が一番上に出てくるという風な協力をしていただくというようなことが大事である旨の指摘をしましたが、重要な指摘と考えます。今申し上げた国民投票広報協議会については、その具体的な役割について、一定の合意を形成していくべき時期にあるように思います。
組織や事務のあり方を整理した上で、それを明文化した規定を作っていかなくてはなりません。この議論を深めていくべきことを申し上げ、私の発言といたします。

玉木雄一郎(国民民主党・無所属クラブ)
国民民主党の玉木雄一郎です。私も国民投票広報協議会の事について述べたいと思います。
現在の国民投票法は105条で投票期間前14日間についてはテレビ・ラジオのCMを禁止しています。そして同法106条でその禁止期間は、国民投票広報協議会が憲法改正案の広報のための放送をするものと定めています。また放送に関しては、賛成の政党等及び反対の政党等の双方に対して同一の時間数、同等の時間帯を与えるなど、同等の利便を提供しなければならないとしています。改憲に賛成する政党等、及び反対する政党等について協議会の費用で各自の広告が行える規定が整備されています。また同法107条では新聞について憲法改正案の広報のための広告をするものとするとされており、この広告に関しては憲法改正案に対する賛成の政党等及び反対の政党等の双方に対して、同一の寸法及び回数を与えるなど、同等の利便を提供しなければならないとしています。しかし現在の憲法改正の手続き法には、協議会のインターネットを利用する広報についての規定がありません。また協議会の費用で賛成・反対する政党等の広告をインターネットで行うことの規定もありません。インターネットはテレビやラジオと同等またはそれ以上に国民が情報を獲得する媒体となっている状況考えると、協議会がインターネットを利用した広報や禁止期間における政党等の広告を行うための具体的な法整備が必要だと考えます。ただしその際に重要なのは、禁止期間中に協議会の負担で行われるインターネット広告について、どのようなルールを定めれば公平性・公正性が担保されるかです。特にテレビ・ラジオ・新聞における同等の利便の提供をインターネット広告でどのように担保するのか、つまりテレビやラジオ放送での同一の時間数、及び同等の時間帯や、新聞広告での同一の寸法及び回数を、インターネット広告でどのように確保し、公平性・公正性を担保するのか、具体的に検討する必要があると思います。例えば静止画の広告では、同一の寸法として左右上下に一体に並べるように表示をしたり、動画の場合は賛否の一連の動画として順次同じ秒数の表示をさせるようなことが考えられますが、例えば今、公明党さんからもありましたけども、検索をしたときの検索連動型広告についてはどうするのか、検索の画面上で、例えば同一の寸法で左右上下などに一体に並べるような賛成意見と反対意見が表示されるようにすることまで求めるのか、これは技術的な可能性も含めて業界の意見もきちんと踏まえた上で検討する必要があると思います。次にこの禁止期間のみならず、発議後から投票日までのインターネット広告について、プラットフォーム事業者が守るべき放送法4条のような政治的中立性を求める一般ルールの必要性であります。これについては必要だという意見がある一方、そういったルールが果たして可能なのかの議論も必要だと思います。そしてこれは国民投票法に限らない議論であります。ちなみに新聞には放送法4条のような政治的中立義務はかかっていません。そして、難しいのはインターネットのプラットフォーム事業者の多くは海外事業者であることが多いために、公的規制やその適切な法執行が果たして可能なのか、できるのかという議論も重要です。欧州ではインターネットのプラットフォーム事業者に対する公的規制の試みが見られる一方で、プラットフォーム事業者等の自主的な措置も取られつつあります。わが国では公的規制と自主規制とそして協議会によるインターネット広告の充実と、適切に組み合わせていくことが現実的なアプローチだと考えます。
なお、個人が発信主体を明示してSNSで発信するような憲法改正に対する賛否の意見については、規制すべきではないと思いますし、できないと思います。そして個人に限らずSNS等によるいわゆるフェイクニュースや誤情報の発信の問題も、これも憲法改正に限った問題ではないので、SNS一般の問題として公職選挙法なども含めて包括的に取り組むべき課題だと思います。リテラシー教育の充実も同様です。そして個人の発信を制限できない以上、膨大なフェイクニュースの情報発信に、協議会の発信だけで対抗できるのかという疑問もあります。例えば、「国民民主党の緊急事態条項は国会機能を低下させ人権を侵害するものだ」といったフェイクニュースに対して、広報協議会は果たして十分な対抗をしてくれるのかということが非常に疑問が残ります。そこで少なくとも協議会に何らかのファクトチェック機能、本体が行うのかあるいは民間機関との連携あるいはファクトチェックの一定のルールとかガイドラインを示す、こういったことも新たな協議会の機能として検討すべきだと思います。過去も現行法にはこういったことも書かれていないので、ファクトチェック機能についても併せて議論が必要だと思います。
最後に、前回の参考人の質疑について一言申し上げたいと思います。お二人の先生方には改めて感謝を申し上げたいと思いますが、長谷部先生の発言は、立憲主義とはそもそも何なのかということを考えさせられるものでありました。すなわち40日や30日といった、憲法に具体的に数字も入って明記されている順則規定は、平時には100%守らなければいけないけれども、緊急時においては生き残るのが最優先だから、必ずしも100%従わなくてもいい、との主張です。しかしこれはリベラルの皆さんが最も恐れる事態ではないのでしょうか。つまり緊急事態においては既存のルールを行政の解釈で、書いてあるルールを恣意的に拡大してもいいということなので危険です。この法理が許されるのであれば、例えば憲法9条の規定や解釈は全く意味がなくなってしまいます。国家の存亡をかけた究極の緊急事態が戦争であり、その時に国家の生き残りのためであれば敵基地攻撃どころかフルスペックの集団的自衛権の行使も今の憲法9条で可能となります。普段、「憲法の条文を守れ」とおっしゃっている方は、このようなモーリス・オーリウ流の緊急事態の法理を許すんでしょうか。立憲主義の基本はまず憲法に書いてあることを出来るだけ書いてある通り尊重することではないでしょうか。
私も、緊急時には赤信号を無視していいと思います。だからこそ、それを事前に憲法や法律に書いておきましょうと提案しているんです。憲法に書いてあることを緊急事態の名のもとに無視することこそ、最も立憲主義に反する行為ではないでしょうか。できれば次回、共産党や立憲民主党さんを始めとした各会派の皆さんの意見を伺いたいと思いますので、改めて緊急集会についての集中討議を求めたいと思います。以上です。

赤嶺政賢(日本共産党)
日本共産党の赤嶺政賢です。はじめに、今も玉木委員からありましたが、緊急事態を理由にした国会議員の任期延長について意見を述べたいと思います。
先週の参考人の意見陳述は、この問題を考える上で大変貴重なものでした。何より重大なのは、国会議員の任期延長が権力の恣意的な延命につながるということです。長谷部参考人は緊急時への制度的な対応は平常時とは明確に区別し、臨時の暫定的措置にとどめるべきだとして、参議院の緊急集会を極めて優れた制度と評価されました。その上で国会議員の任期を延長すれば、任期の延長された衆議院と、それに支えられた従前の政権とが長期にわたって居座り続ける緊急事態の恒久化を招くことになる。緊急時の名を借りて通常時の法制度のものを大きく変革する法律が次々に制定されるリスクも含まれていると警告されました。さらに長谷部参考人は、憲法が衆議院の解散の日から40日以内に選挙を行い、選挙の日から30日以内に国会を召集することを定めているのは、民意を反映していない従前の政府がそのまま政権の座に居座ることを許さないためだと述べ、衆議院議員の任期を延長し、政権の居座りを認める事は本末転倒の議論だと強調されました。この指摘は緊急事態条項の議論の本質をつくものだと思います。
これまで述べてきたように、国会議員の任期延長は国民の選挙権の停止に他ならず、国民が政権を変える機会を奪い国民主権の侵害につながります。長谷部参考人は、緊急の事態においても基本権は可能な限り従前に保障されるべきであり速やかに選挙を粛々と実施する事が要請されていると述べています。この指摘を真摯に受け止めるべきだと思います。
さらに参考人が強調されたのは、想定外の上に想定外のことを仮定して改憲議論を行うことの問題です。
審査会では、国会議員の任期延長の理由として東日本大震災やコロナ感染症の蔓延が殊更に強調されています。
大石参考人は、災害や感染症等は立法措置によって対応すべきであり、それを全部踏み越えて議論することの問題を指摘されました。長谷部参考人は、衆議院議員の総選挙を行うことが長期にわたって困難な状況や、それを事前に予測できる状況が起こりうるのかと疑問を呈し、慎重に考えるべきだと述べられました。
仮定の上に仮定を置いて議論することの問題は、これまでもこの審査会に参考人として出席した憲法や災害の専門家から繰り返し指摘されてきたことです。この場で何度も紹介したように、東京大学の高橋和之名誉教授は、極端な事例を出して議論をすれば間違う危険性が高いと警鐘を鳴らされました。しかし審査会ではこうした専門家の意見を全く無視し、あれこれの事態を仮定して国会議員の任期を延長するための改憲が必要だという議論が繰り返されています。全く通用しない議論だと言わざるを得ません。
そもそも私たちが繰り返し述べてきたように、国民は改憲を政治の重要課題とは考えていません。今の改憲議論は安倍首相が2020年と期限を区切って、9条改憲を提示したことが発端です。そのもとで自民党は憲法審査会を動かしてきました。しかし改憲を望まない国民の声は大きくなるばかりでした。安倍首相自身が辞職の記者会見で国民的な世論が十分に盛り上がらなかったと認めざるをえませんでした。にもかかわらず岸田首相が任期中に改憲を実現したいと述べていること自体が、国民に改憲を押し付けようというものであり、認められません。
5月3日の憲法記念日に合わせて、共同通信が行った世論調査では、改憲機運は高まっていないと答えた人が7割を超え、国会と国民の意識の乖離が明らかとなりました。国民が改憲を求めていない中で、審査会をどれだけ動かそうとも国民との矛盾はいっそう深くなるだけだということを強く指摘しておきたいと思います。
次に国民投票法についてです。私は現行の国民投票法については、国民の民意を汲み尽くし、正確に反映させると言って、てんで重大な欠陥があるということを述べてきました。具体的には最低投票率の規定がないこと、公務員や教育に携わる者の投票運動を不当に制限していること、改憲案に対する広告や意見表明の仕組みが公平公正なものになっていないことの3点を指摘してきました。こうした欠陥を放置したまま自分たちの都合の良い改憲議論だけを推し進めることは幾重にも許されないと指摘し、発言を終わります。

北神圭朗(有志の会)
有志の会の北神圭朗です。本日、私も国民投票法のネット規制について、意見を述べたいというふうに思います。
これは階幹事がおっしゃったようなフェイクニュースとか、アテンションエコノミーとか、マイクロターゲティングだけではなく、わが国の選挙、国民投票法だけじゃなく、あらゆる選挙について外国からの良からぬ意図を持った偽情報の問題に備える必要があるというふうに思います。こう言うと「北神もとうとう陰謀論者になった」と皆さん思われるかもしれませんが、いわゆるサイバー攻撃の最たるものが偽情報によって国民を分断するという、ロシアが1番得意なんですけど、世界的な常識になっていますし、今まで日本語の壁によってある程度守られてきましたけれども、これも玉木委員が大好きなチャットGPTの翻訳機能も、かなり飛躍的に向上して、なかなか正確な日本語になるということで、私は非常にこの問題について、もちろんこれは国民投票だけじゃなく、あらゆる選挙に関連しますけれども、だからといって放置して良いのか、憲法改正をこのままの状態で、この法案でいくべきなのか、という事は真剣に議論すべきだと思います。この点について階幹事は、内外のフェイクニュースの蔓延により、憲法改正に関する世論が誤った方向に導かれる可能性が増しており、民間のファクトチェック機関から国民投票広報協議会に対してフェイクニュースの疑いがある情報について紹介があった場合に、国民投票広報協議会が現に保持する情報を提供するなど、両者が連携することを可能とする規定を設けるといった具体案が示されました。私もこれは民間のファクトチェック団体との連携は重要だというふうに考えます。ただわが国のファクトチェック団体の実情を見てみますと、まずそもそも量的に、数的に心もとない。世界のファクトチェック団体を研究する米国のデューク大学のReporters' Lab という機関によりますと、本年5月現在、世界で登録されているファクトチェック団体の総数は400団体となっています。そのうち北米に83団体、欧州には110団体あり、韓国の13団体を筆頭に、アジアでも90団体もありますが、わが国で登録されている団体は5団体のみとなっています。5団体で充分じゃないかと思われる方もいるかもしれませんが、この中には自らファクトチェック活動を行わず、大手メディアに調査を依頼するような形の団体も実は含まれているということです。東京工業大学の準教授であります西田亮介先生は、こうしたわが国のファクトチェック団体の現状について論文を書いています。その一説を引用しますと、「日本における偽情報対策は、表現の自由に強く配慮し、もっぱら民間の自主的な規律を重視する欧州型の対策にも似た標準的な規制枠組みを採用している。他方で実務的に見れば、欧州各国における制裁金等の強力な規制ツールが乏しいことに加えて、偽情報を検証する民間のファクトチェック団体の存在感も小さく、プラットフォーム事業者とファクトチェック団体の本格的な協働も、機能しているとは言い難い現状がある。理論的には、民間の自主的な規律を重視するという、至極真っ当な選択をしながら、実務的な視点では、いまだに強力なマスメディアと脆弱なネットメディアと非営利団体といった日本独特のメディアエコシステムの実情が対策の実効性に懸念をもたらしているように見える」と分析されています。要はわが国のファクトチェックの担い手は、体制面でも能力面でも、必ずしも充分ではないという指摘だと思います。
このことと、冒頭申し上げた、数も少なく多様性も確保されていないことからして、果たして国民投票広報協議会と民間団体が連携するだけで、この氾濫する偽情報に対応しきれるのかという疑問を抱かざるをえません。
他方、アメリカ・イギリス・ドイツ等では、民間機関だけでなく政府としても偽情報による干渉、特に選挙に対する干渉について、何らかの対策を講じています。例えばドイツでは、内務省の連邦選挙管理委員会が選挙過程全般に関係する偽情報を特定し、これに対処する責任を負っており、特定した情報についてはファクトチェックサイトを通じて公表しています。以上の国内外のファクトチェック体制の実情を踏まえると、わが国でも民間に任せるだけではなく、政府かあるいは公的機関か、例えば国民投票広報協議会においてファクトチェック機能を担わせる必要があるのではないかと、同時に意図的に偽情報を植え付ける外国からのサイバー攻撃に対しても、政府の関係部署との連携も併せて確保すべきだと思います。さらに国民投票広報協議会の機能として、各政党の主張を大量にインターネットに流すことにより、正確な情報を広く、そして頻繁に普及させることも検討すべきだというふうに考えています。
どうも、憲法9条あるいは緊急事態条項の議論をしていても、わが国では、外国よりも自分たちの政府や公的機関の関与を疑い、忌み嫌う向きもありますが、逆に民間だからといって思想的心情的に公正中立とは限りません。
諸外国では官と民とで偽情報を公表し、説明することを通じて、多様性があるが故に幅広く選択可能なファクトチェックの言論空間が作られています。やはり多様性が確保される中で、可能な限り正確な情報が幅広く流通して初めて偽情報がある程度淘汰されていくのではないでしょうか。同時にわが国でも外国からの選挙介入を突き止める能力の向上や、有権者に正確に事実を伝達する体制が強く求められます。
公正な選挙の実現、とりわけこの憲法改正に関する国民投票は、民主主義の根幹であります。国民の自律的な意思が阻害されないためにも、我々も責任を持ってより積極的な姿勢で臨むべきだと申し上げて、私の意見とします。


◆各委員の発言
神田憲次(自由民主党・無所属の会)
自由民主党の神田憲次です。本日は国民投票におけるCM規制に関し、発言をいたします。
CM規制のあり方については、すでに3年前、わが党の新藤筆頭が、「考えられる国民投票におけるCM規制のあり方」として論点整理メモを提示されております。その整理を踏まえつつ、改めて国民投票の公平公正を担保するためのCM規制のポイントを考えてみたいと思います。
まずは、国民投票の公平公正を担保するためのCM規制のあり方として、法的規制が考えられます。この法的規制について、あらゆる主体について法的にCMを禁止するという考えを聞くこともありますが、憲法で保障された表現の自由と、国民投票の公平公正のバランスを図ることについて、よく検討すべきではと考えております。また政党のCMを規制することについては、慎重な議論が必要です。国会における議論を一番よく知っている政党が、国民投票の公平公正を担保しつつ、国民に対し国会での議論を知らせていく事は、大変重要なことです。政党によるCMの出し方についても、今後審査会で議論を深めていく必要があります。なお、市場規模において放送CMを超えるネットCMの公平公正をどのように図るかについても、大変重要な問題です。ネットCMは出し手や方法が多岐にわたり、実効性ある規制がどこまで可能か難しい問題が多く存在します。
インターネットの根本的な思想は、世界中の誰もが自由に意見表明できるということであることも踏まえておく必要があるかと思います。
次に、国民投票の公平公正を担保するためのCM規制のあり方として、自主的取り組みが考えられます。この自主的取り組みについては、CMの受け手側が行う取り組みと、出し手側が行う取り組みが考えられます。
まず受け手側については、放送事業者による自主的取り組みが考えられます。この点につきましては、すでに民間放送事業者において自主規制のガイドラインが量的なものも含めて整備されていることが確認されています。令和4年4月21日の参考人質疑では、わが党の新藤筆頭からの「民放連は量に特化した自主規制ではないが、量も考慮要素の1つとした自主規制を、もう既に準備していると理解して良いか」との質問に対し、民放連の永原専務理事が、そのとおりである旨、明確に述べており、放送事業者については既に一定の整理がなされていると理解しております。
とすると、放送CMについて残る課題は、出し手側の自主的取り組みとして、我々政党側が自主的にどのようにCMの公平公正を図っていくかということになると思います。またネットCMにつきましては大手プラットフォームなどが加盟する業界団体も存在しており、ネットCMに関する受け手側の自主的取り組みもさらに検討していく余地があると思われます。出し手である我々政党側の自主的取り組みについては、放送CMと同様に、今後さらに議論を深めていきたいと考えております。第三に、これまで述べた法的規制と自主的取り組みの折衷的な方法として、自主的取り組みを後押しするための法的措置を定めるという方法があります。
例えば各事業者の自主的取り組みを促す規定を定めることや、各事業者の自主的取り組みに関するガイドラインの作成といった方法が考えられます。
最後に、国民投票広報協議会の広報活動を充実強化する方法があります。これは冒頭、新藤筆頭からの詳細な説明があったところです。以上、CM規制について考えられる4つのポイントを述べて参りましたが、これまで繰り返し議論されているように国民投票法の基本的な考え方は国民投票運動はできるだけ自由に、ということでありまして、規制のあり方を考えるにあたっては、国民投票運動の自由と、国民投票の公平構成のバランスを図ることが重要です。
本日述べた4つのポイントを念頭に置きまして、このバランスをいかに図っていくかという観点から、憲法審査会において建設的な議論がさらに進んでいくことを改めて求め、私の発言といたします。

奥野総一郎(立憲民主党・無所属)
立憲民主党の奥野総一郎でございます。まず国民投票法に関して申し上げますが、制定50年以上が経って、当時想定していなかったグローバル化や、AIの実装等、社会環境に大きな変化が生じています。ブレグジットやアメリカの大統領選挙、トランプが勝った時ということになりますでしょうけど、みてください。我が国の憲法改正国民投票でも、こうした事態は起こり得ます。
附則4条というのは、このような状況踏まえて、施行後3年後めどとして、投票環境向上のための措置だけではなく、公平公正確保のため、CM規制、ネット規制、そして国民投票運動等の資金規制等について、必要な法制上の措置、その他の措置を講ずることを求めたものであります。
こうした立法主旨から附則4条に基づく措置を講じられるまでは、憲法改正発議はできません。この点は附則4条の審議の際に、発議者そして、原案作成者としての私の答弁としても残っているところであります。またこの施行後3年の期限は、2024年9月であり、来年の通常国会までに、必要な法制上の措置その他の措置を講じなければならないということになります。
憲法改正に真剣に取り組もうというのであれば、国民投票改正の検討をしっかり急ぐべきであります。
特に附則4条2号ロの「国民投票運動等の資金に係る規制」については先ほど三木委員からの発言もございましたけれども、ほとんど議論が行われていません。海外では実際に資金規制が行われて国民投票が実行されています。
南よしのり先生によれば、EU離脱の際のイギリスブレグジットの国民投票では、運動期間中、一万ポンド、これは大体レートが円安で1ポンド170円ですから、今のレートだと170万円くらいですね、を超える支出を見込む個人・団体は、登録義務があって、登録をすると、登録運動者には支出上限額が70万ポンドという上限が定められていました。
そして、登録運動者の中から賛否それぞれについて主導運動者、運動を主導する者の認定を行なって、その主導運動者になると、700万ポンドまで支出できました。十数億円、支出できることになっていました。
そして登録運動者は500ポンド以上のすべての寄付及びローン等について、投票期日前に、先ほど投票後で意味がないとおっしゃいましたが、投票期日前に寄付については分けて報告するようになっていました。そして支出については投票期日後に報告すると、それぞれ報告が義務付けられていました。そして外国人、外国法人による寄付は原則禁止でありました。ニュージーランドの国民投票でもほぼ同様の仕組みがとられているというふうに理解しています。
そしてオーストラリアでは今年の3月に成立した改正国民投票法で、期間中の一定額を超える寄付支出に関する報告書の中央選管への提出、そして外国人の100豪ドル、1オーストラリアドルは90円ぐらいですかね、1万円弱の寄付の禁止、1万円弱を超える額の寄付の禁止を定めています、ということであります。
資金多寡で国民投票の結果が左右されることを防がなければならない。これは皆さん共通した合意だと思うのですが、そして同時に憲法改正に対する外国人そして外国政府の干渉が絶対にあってはならないということだと思うんですが、そのためにどうするかということでありまして、先ほど実効性うんぬんとの話もありましたが、実際に国民投票が行われてきたこうした国々の例を参考に、どうすれば実効性のある資金規制ができるのか、きちんと議論した上で結論を出すべきだと思います。運動資金規制について、今、集中討議及び参考人質疑を求めたいと思います。
それから次に、先週の参考人質疑について少々申し上げたいと思いますが、まず両参考人が意見が一致したのは、任期満了後の総選挙の実施不能の場合にも、参議院の緊急集会の招集が、憲法上可能であるという事は両参考人一致をしていました。ただし70日を超えて緊急集会が開催できるかどうかについて、意見は別れました。
大石先生は、参議院の緊急集会は両院同時活動の原則に対する例外をなすものであることを考えますと、その存続期間は憲法上やはり最大70日という制約に服すると考えるのが合理的とおっしゃっておられました。
一方、長谷部先生は、憲法はこれを容認してるとおっしゃいました。その理由というのは、70日という制約は現在の民意を反映していない従前の政府がそのまま政権の座に居座り続けることのないようにとの考慮からであり、その間接的、派生的な効果に過ぎない。そして従前の衆議院の任期を延長する、そしてさらに従前の政権の居座りを認めるというのは本末転倒な議論ではないかと断じておられました。
いずれの先生の議論も私は一理あると思います。そして選挙困難事態に関しては、参考人質疑ではあまり議論になりませんでした。長谷部先生からは、衆議院の定足数を確保できないような事態が本当に起こり得るのかというご主旨の発言がございましたが、この点に関連して、一部選挙区が、選挙困難事態となった場合、北側先生もおっしゃったと思いますが、全国一律にその選挙そのものを延期すべきかどうか、そしてどのような場合に選挙の延期ができるのか、選挙全体の延期ができるかという点について、もう少し詳しく議論すべきであります。また衆議院が不存在となるような選挙困難事態があるとして、それは誰が認定するのか、私はこれまでも憲法裁判所等司法を関与させるべきと申し上げてきましたが、この点についても議論が必要だと思います。選挙困難事態の議論を緊急集会と合わせて深める必要がありますので、この点についても質疑を求めたいと、集中討議を求めたいと思います。
大切な事は、何が何でも緊急集会によるとか、何が何でも議員任期延長によるということではなくて、どうすれば危機に際して民主的な正当を保ちながら国会機能を維持できるような制度を作るか、制度論なんです、というふうに思います。参議院と合同で議論して結論を出すべきなので、きちんと長期の選挙困難事態について、きちんと議論をして結論を出すべきだと思います。しっかり議論をつめていきたいと思います。私からは以上です。

岩谷良平(日本維新の会)
日本維新の会の岩谷良平です。本日、私の手元には683ページに及ぶ衆議院憲法調査会報告書があります。これはご案内の通り、平成12年の憲法調査会設置時から5年余りの間、中山太郎会長のもとで自民党も公明党も、当時の民主党も含む各党が加わって調査議論し作成されたもので、自民党の新藤筆頭幹事や、立憲民主党の中川筆頭幹事も、当時委員を務められたと承知しておりますが、総計450時間を超える精力的な調査議論をされた当時の委員の皆様の大変なご努力の結晶だと伺っております。
この報告書の中で、「何々とする意見が多く述べられた」との記述がありますが、これはおおむね3分の2以上の委員が述べた意見を「多く述べられた」と記載しているものです。この点に関して立憲民主党の枝野議員も去る3月30日の本審査会において、報告書には合意形成の見通しが示されている。幅広い真の合意形成に向けて建設的な議論を進めるのであれば、報告書がスタートラインになることは間違いない、旨を述べておられることから、「多く述べられた」で取りまとめられた論点について、具体的な改正作業に入っていることに異論は無いものと思われます。
そこでこの報告書を見ますと、緊急事態条項について憲法に規定すべきであるとする意見が「多く述べられた」とあり、その論拠として、非常事態においては、内閣総理大臣に権限を集中し一元的に事態を処理し、人権を平常時よりも制約することが必要となる場合がある。そのような措置を発動し得る要件、手続及び効果は憲法に規定すべきである。地域紛争、テロリズムの蔓延と現代社会は多様な危険を内包しているにもかかわらず、非常事態への対処規定が設けられていないのは、憲法の欠陥である。非常事態への対処にあたっては、為政者に超法規的措置の発動を誘発することが多く、それを防止するためには憲法保障の観点から、非常事態に関する規定が必要である、といったものが挙げられています。このように非常事態すなわち緊急事態条項について、憲法に規定するべきであるとする意見が「多く述べられた」とあるにもかかわらず、それから18年が経過し、いまだに憲法改正発議は行われていないどころか、緊急事態条項創設に消極的、あるいは否定的な議論を続けられる党がいらっしゃるということに驚きを禁じえません。
本報告書と、この間の議論を踏まえて、結論を出すべき時が来ていると考えます。
次にこの報告書では、憲法裁判所についても「設置すべきである」とする意見が多く述べられたとあり、その論拠として司法消極主義により司法権が行政権をチェックする機能を果たしておらず、また付随的違憲審査制の下では、最高裁判所に憲法の番人としての積極的な役割を期待することは無理である。憲法裁判所が憲法判断に消極的であるため、行政の一部局である内閣法制局に事実上の憲法解釈権が委ねられており、その解釈が有権解釈として扱われているため憲法解釈が恣意的なものとなりやすい。政策的課題として必要な法律が憲法裁判所によって憲法違反とされた場合、国会はその政策を実施するために憲法改正を検討するという関係こそが、権力分立の本来のあり方ではないか。
といったものが挙げられています。
「憲法裁判所が必要だ」と多く述べられたにもかかわらず、この間20年近く制度設計の詳細について議論がなされていないどころか、憲法裁判所設置の是非すらも結論を出さないまま今にいたり、当時影も形もなかった我々維新の会が、最も積極的に憲法裁判所の設置を主張しているという今の状況は、ある種滑稽で、本報告書取りまとめ以降、国会議員は一体何をしていたのかと、批判を免れません。
本報告書がまとめられた平成17年当時、私は25歳で、ちょうど大学院で法律を学んでいた頃でした。18年経ち、学生だった私は、衆議院議員に当選させていただき、本審査会の委員になってみたら、私が学生だった頃の18年前と同じような議論ばかりがいたずらに繰り返されている現実を目の当たりにして、愕然としています。岸田総理はご自身の任期中に憲法改正を目指すとおっしゃっておられますが、そうであるならば自民党さんは憲法改正発議に向けたスケジュールをお示しされるべきではないでしょうか。以上、本報告書がまとめられた各党・各委員の皆様に敬意を表するとともに、改めてその重みを我々は自覚し、もう結論を出すべき時が来ているということを申し上げまして、私の発言を終わります。ありがとうございました。

北側一雄(公明党)
公明党の北側一雄です。今日は国民投票法についての議論が集中して行われております。冒頭、新藤委員から国民投票広報協議会についてのお話がございました。そして3つの規定、そして法改正も含めまして、ぜひ事務方でたたき台を作ってもらいたいというお話がございました。私も大賛成でございます。ぜひとも事務方の方でこの国民投票広報協議会の役割等について、具体的な規定案等のたたき台を作っていただいて、ぜひ幹事会等で議論をさせていただければと思います。やはり広報協議会で何ができるのか、どういう役割を持たせるのかということがだんだん議論がなされていきますと、そもそも今一番問題になっております広告規制に対してどうしていくのかという事についても、その議論の大きな参考に、また前提になってくると思いますので、ぜひ広報協議会についてのたたき台を事務方のほうに私からもお願い申し上げたいと思います。
もう1点、今日申し上げたいのは、先週の参考人質疑についてでございます。両先生にはお忙しい中出席をしていただいたことに感謝申し上げたいと思いますが、参考人のご意見の中でいくつか、私からしますと少し違和感を感じるところがありました。その最も最たるところは長谷部先生のご発言の中で、憲法54条1項の趣旨目的について触れられたところなんですね。で、憲法54条が40日、そして30日と日数を限っているのは何故かと申しますと、これは長谷部先生のご発言ですが、「解散後も何かと理由を構えていつまでも総選挙を実施しない、あるいは総選挙の後いつまでも国会を召集しないなど、現在の民意を反映していない従前の政府がそのまま政権の座に居座り続けることのないようにとの考慮からであります」とこのようなご発言があったのですが、おそらくここにいらっしゃる議員の皆様も、「そんなことないよ」と思ってらっしゃる方が多いんじゃないかと思うんですね。それほど日本の民主主義というのは熟度がないのかと、そのように思われているのかと私なんかは感じました。そもそもこの憲法54条1項の目的趣旨というのは、何度も申し上げて参りましたが、日本の憲法の「国会」のところは、二院制であること、そして同時活動の原則、衆参の同時活動の原則、これが大原則なわけです。この大原則があるんだから、衆議院が不在の期間というのは、当然のことながらできるだけ短くしないといけないという本来の国会に早く戻さないといけない、だからこの40日30日という規定があるわけで、あくまで目的というのは国会の二院制、同時活動の原則、本来の憲法で定められた国会に戻すというところに目的があるわけであって、長谷部先生がおっしゃってるような「現在の民意を反映していない従前の政府がそのまま政権の座に座り続けることのないように」という趣旨というのは少しちょっと違うんじゃないのかという印象を私は受けました。で、これはおそらく長谷部先生も、それから他の憲法学者の先生方も多くはそうだと思うんですが、そもそも緊急集会の役割権限というのはオールマイティーじゃないんだという事はほぼ共通でおっしゃっているんですね。例えば内閣総理大臣の指名はこれは緊急集会ではできないよね、それから緊急性の乏しい条約の承認とか、それから憲法改正国民投票の発議、憲法改正の発議、これはやはり緊急集会ではできないよね、等々、そもそも緊急集会には一定の制約があるんだという事はほぼ共通におっしゃっている。その緊急集会という適用範囲というのはどこなのか、という議論を私どもはしてきたわけでございます。国会というのは、議員任期の延長の大きな大前提として、どんな緊急事態が生じようとも、国会の機能は維持をしなければいけないということが主旨なわけでございますけれども、そこで言う「国会」というのは、衆参揃った国会、そして同時活動の原則がなされている国会、この「国会」憲法上定めているこの「国会」の機能を維持しなければいけないという主旨でございまして、それが大原則だというふうに思うわけでございまして、54条1項の主旨もそういう目的で理解をすべきだというふうに思っています。ぜひ先週、あのような形で参考人質疑、両先生からご意見賜ったわけでございますので、ぜひとも次回は、この緊急集会の役割、意義、適用範囲について、もう一度しっかり審査会で議論をさせていただければと思いますので、よろしくお願いします。

中西健治(自由民主党・無所属の会)
自由民主党の中西健治です。本日の審査会でも、新藤筆頭そして維新・公明の委員からも指摘がありました、言及されています、昨年4月に協働提出されている自民党・日本維新の会・公明党及び有志の会の4会派で共同提出し、主旨説明も行われたまま、審議されていない国民投票法改正法案、いわゆる3項目案の仔細について発言させていただきたいと思います。国民投票法に関しては、投票の外形的事項である投票環境、整備については、公職選挙法並びにすべきとの考えに則り、平成28年の公職選挙法改正の内容を国民投票法に反映させるいわゆる7項目案が、提出時より3年の期間を経て一昨年の令和3年に可決成立しております。その時点で公職選挙法についてはさらなる2項目の改正が行われており、そこで7項目案の附則において、その2項目の内容を国民投票法に反映させることについての検討条項が設けられております。加えて昨年の令和4年には、さらに公職選挙法の改正が成立いたしまして、1項目追加になってますので合計2 +1で3項目について、国民投票法のアップデート更新が必要な状況になっております。これより3項目案の主な内容を改めてご説明させていただきたいと思います。
まず第一の項目は、開票立会人の選任に係る規定の整備であります。平成29年の衆議院議員総選挙において悪天候によって離島から投票箱を運べなかったという事例を踏まえまして、安全かつ迅速な投票を行うという観点から、投票日に近接して、現地で開票場を設けるということとなった場合の開票立会人の選任規定を追加するとともに、合わせて開票立会人の選任要件を緩和することとしております。
次に第二の項目は、投票立会人の選任要件の緩和であります。投票所の円滑な設置及び運営を図るため、投票立会人の選任要件を各投票区における投票人名簿に登録されたものから、投票区に限らず投票権を有するものに緩和することとしています。
最後に第三の項目は、FM放送の放送設備による憲法改正案の広報のための放送の追加であります。これは現在AMラジオ放送により行われている憲法改正案の広報のための放送、これを機関放送事業者のAM放送からFM放送への転換とこれに伴いましてFM放送でも広報を行えるようにするものであります。以上の説明のようにこの3項目案は投票の外型的事項を整備するものであり、その内容については公職選挙法改正の審議時にも、各会派から特に異論もなく早急に措置すべきものとされたところであります。
こうした投票環境の利便性を向上させる改正は、国民投票の際にも反映すべきものであり、内容に異論がないにもかかわらず残念ながら立憲民主党と共産党の反対により、審議が行われないまま昨年の主旨説明から既に1年が経過しております。なぜ審議に入れないのか、明確な理由を示していただきたいと考えていますが、またこれとは別に一部の意見として、3項目案成立させてしまうと国民投票法に関する議論がフタをされてしまい、それ以上の改正が行われなくなるのではとの声を聞くこともあります。しかしこれまでの審査会において委員の方々から何度も言及されてきましたように、国民投票法には投票環境整備などの外型的な事項と、CM規制等、投票の質の向上に関する事項の2つの要素があり、どちらかの議論が終われば他方が不要になるものではなく、いずれも時代や社会の変化を踏まえ、議論しなければいけない事項であると考えております。特に投票環境整備については、今後も公職選挙法の改正により国民投票法に反映させるべき項目が発生すると予想されます。選挙における投票環境の整備は常に見込まれることであり、内容に特に問題がなければ、公選法の改正に合わせ、国民投票法についても機械的に反映させるような仕組みづくりを検討すべきではないかと提案させていただきます。そもそも主旨説明済みの法案を審議する事は、国会の当然の責務であります。すでに主旨説明から1年が経過した3項目案については、速やかに処理すべきであるということを強く申し上げ、私の発言とさせていただきます。

本庄知史(立憲民主党・無所属)
立憲民主党の本庄知史です。まず本日の主題である憲法改正国民投票に関し、安全保障との関係について申し述べます。一昨日の本会議で、防衛財源確保法案が可決されました。本法案の正式名称は、「わが国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案」です。しかしそれは名ばかりであり、実態は防衛力の抜本的な強化にも、必要な財源の確保にもならない重大な欠陥法法案です。にもかかわらず、政府与党は「防衛費倍増」「GDP比2%」といった数字ありきで、他の政策との優先順位やバランス、財政状況も考慮せず、5年で43兆円もの常軌を逸した予算をつぎ込もうとしています。
総合的な見地から、安全保障上なすべき事は他にいくらでもあります。その最たるものが、憲法改正国民投票に外国政府や外国資本が介入し、国家国民の意思決定が支配されることを未然に防ぐための措置です。
とりわけインターネット、SNS等、オンライン広告の規制は極めて重要です。しかしテレビ・ラジオ・新聞広告と比べても、オンライン広告の規制はほとんど議論がなされていません。3月の当審査会でも述べましたが、外国勢力によるフェイクニュース、偽情報の流布、巨額の資金を用いた世論操作等も想定される中、これらを規制するための国民投票法の改正こそ今国会で行うべき安全保障論議です。
次に、今回の防衛財源確保法案に関連して、財政民主主義について申し述べます。4月の当審査会でも指摘しましたが、憲法が規定する財政民主主義は今、空文化しています。その最たるものが、巨額の予備費です。予備費は予算審議の中で具体的な使途が議論されず、事後に形式的な議決がなされるのみで、事実上政府の自由裁量となっております。例えば昨年度2022年度は当初予算と補正予算で合計約12兆円もの予備費が計上され、そのうち4兆円近くが不用額となる見込みです。もはや憲法第87条に規定する「予見し難い予算の不足に充てるため」と言える状況ではありませんが、本年度予算でもまた5.5兆円もの予備費が計上されています。しかもその財源は、実質的には赤字国債です。今回の防衛財源確保法案は、この巨額な予備費の不要額が決算剰余金として防衛財源になるという、まるで国家的マネーロンダリングのような仕組みを採用しています。巨額の予備費を計上し、事実上それを別の政策に流用するこの法案は、憲法第83条・第85条に規定する財政民主主義の主旨に反するものです。また今後5年間にわたって財源と使途を縛るという点では、憲法第86条「予算単年度主義」を有名無実化しかねません。税金の使い道は国民を代表する国会で決めるという財政民主主義は、今や瀕死の状態です。この認識を当審査会で共有し、財政民主主義のあり方について、集中的に討議すべきです。
最後に、この防衛財源確保法案と表裏一体であるミサイル反撃能力、敵基地攻撃能力について申し述べます。
本件については、私は3月と4月に2度取り上げましたが、憲法上の重要な論点を多く含んでいるにもかかわらず、その後も全く議論が深まっていません。例えば憲法上、保持が許される「戦力」に当たらない「必要最小限度の実力」としての反撃能力とは質量ともにどういうものなのか。日米同盟に基づき、盾と矛の役割分担がある中で、他に適当な手段がないとして、憲法上許される反撃能力の行使とはどういう場合なのか。
政府は存立危機事態、すなわち限定的な集団的自衛権としての反撃能力の行使も可能としていますが、わが国自身が武力攻撃を受けていない中での反撃能力の行使が、果たして限定的な集団的自衛権の行使と言えるのか。
相手の攻撃の着手段階での反撃能力行使は、先制攻撃に当たらず、国際法に違反しないとも政府は言っていますが、技術的・能力的な可能性はもちろん、そもそも他国の意図や行動をわが国が立証できるのか。
そして、より基本的な問題として、従来想定していた我が国の領土・領海・領空に対する侵害を物理的に排除することをもっぱらとする武力行使と、単なる物理的な排除にとどまらず、相手国の領土・領海・領空に対して武力行使することを前提としているミサイル反撃能力は、同じ必要最小限度の実力や専守防衛といっても、その合憲性の基準や論理構築はおのずと異なるのではないか。こういった反撃能力の憲法上の論点について、政府は正面から答弁していませんが、私は相当深い議論が必要であり、それがなければ国の行く末を誤りかねないと危惧しています。
以上3点申し述べました。憲法改正国民投票への外国勢力の介入防止、財政民主主義のあり方、そして反撃能力の憲法上の課題につき、それぞれ本審査会で集中的に討議するよう、会長にお取り計らいをお願いして、私の発言といたします。以上です。

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