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プロフィール

概要

1981年生まれの横浜育ち。
大学に入る頃から、すこしずつ人と自然の関係性に興味をもちはじめて、大学卒業後は環境コンサルタント業務に従事。
その後、登山と自然の専門出版社「山と溪谷社」に転職。図鑑や書籍、カレンダーなどの編集に7年携わる。2018年3月から株式会社ピースオブケイクのcakes編集部に。

cakesにて

プロフィールは昔から今への時系列で書いていくのがふつうかもしれないけど、いま何している人なの?のほうが重要と思うので、現在から過去に遡って書いていきます。
現在の会社に応募したのは、コンテンツをとりまく環境が大きく変わっていくなかで「新しい枠組み、市場」をつくろうとしているところに惹かれたからでした。代表の加藤さんのこの記事とか。

紙の書籍もウェブも、人が想いや考えを伝えるための手段。時代や環境にあったやり方で伝えていけばよくて、伝える手段を本に限定する必要もなければ、逆にウェブにこだわる必要もなくて、フラットに考えていけたらと思います。いまでも本は好きで、本には本のよさがあるし、ウェブにはウェブのよさがある。

さて、cakesではおもに食や海外文化などに関わる連載を担当しています。
(2020.5.27更新)

有賀薫さんの『スープ・レッスン』。『旬の野菜をたっぷり味わう究極のシンプルレシピ』というコンセプトでcakesの人気連載です。これほど親切な料理の解説を見たことないし、とことん読者に寄り添った優しい原稿が魅力的です。ひとり暮らしだと、食材が余ってしまう悩みがありますが、野菜をまるごと使ったりするので、その心配もあまりありません。旬の野菜のおいしさを知れたし、シンプルなレシピで創作の余白があるので、料理の楽しさを感じさせてくれる連載です。プレジデント社からにもなりました。

樋口直哉さんの『「おいしい」をつくる料理の新常識』。味噌汁、焼き魚、ハンバーグ、ステーキなど、家庭でおなじみの料理について、科学的、つまり論理的に「なぜそうするのか」「どうしたらおいしくなるのか」を紹介しています。たとえば「肉を焼くときは強火で何度も裏返せ!」の回では、

料理書にはよく「焼いている最中、肉に触ってはいけない」「裏返すのは一度だけ」と書かれていますが、頻繁に肉を裏返すことで、一度だけ裏返すよりも25~30%ほど早く火が通り、結果として水分が失われずジューシーに焼き上がるのです。

といった具合です。「なぜそうするか」の科学的理由が書いてあるので、説得力抜群です。

幻冬舎×テレビ東京×note「コミックエッセイ大賞」で入賞したおこめさんのマンガです。もうひとつの野本響子さんのマレーシアの連載もそうですが、海外の話を聞くと、相対的に日本の状況を見られるのが魅力的かな。別に海外に倣えというわけではないですが。

それにしてもタイの人たち、日本人からしたらいい意味で常識から外れてておもしろいです。打ち合わせで聞いた「タイに来てみたら日本の常識って外では全然常識じゃないんだなぁ」の言葉が印象的で、読んでくれた人が過度に日本の常識に捉われず、少し肩の力が抜けて楽になるといいなぁと思いながら編集しています。

以前に大平一枝さんのエッセイを読んでいたら「現代は、慈悲と寛容が足りないですよね」という言葉が出てきて、たしかになと思ったのでした。で、マレーシアですが、話を聞くとこの慈悲と寛容がむちゃくちゃある(ように見える)。マレーシアに寛容の精神のコツを学びたいなぁというところからスタートした企画です。

マレーシアには有名人の炎上とかもほとんどないそうなんです。話を聞いていると本当に怒らないし、考え方が大人。毎回、原稿をもらうたびに考えさせられる事が多いので、その都度note書こうと思うものの目の前のタスクを優先させてしまっていました…。寛容であることとマレーシアが多民族国家であることは深い関わりがあるのかなと思うのですが、日本も実は価値観や考え方が多様なので、その辺りにヒントがあるのかな、と思ったりします。

こちらも海外在住の方のコラムで、いつの間にか海外文化の紹介が多くなっていました。アメリカ在住の作家・渡辺由佳里さんが、さまざまな時事問題などを解説してくださっています。アメリカがよくて日本はダメだとかそういうのではなくて、日本とアメリカの両方の社会を知っていて、深い見識をもっている渡辺さんだからこそ書ける内容には大いに学びがあります。論理的で明晰な渡辺さんの視点に感服することが多いにあります。

幻冬舎×テレビ東京×note「コミックエッセイ大賞」で入賞したあまのさくやさんのエッセイです。お父さんが若年性認知症にお母さんがステージⅣのがんを患い、家族に起こった変化を綴ります。あまのさんは、その時の状況や自分も含めた家族の心情を言語化する力がすごいです。自分の意思とは関係なく、たいへんな状況に直面してしまうことって、誰しもがありますよね。そんな時に力をもらえる連載になればいいなと思っています。そしてやっぱりそういう時は「書く」ことの効果は大きいのだなと思います。

まさか嘉島さんを担当できるとは思ってもみませんでした。というのは、cakesに入るずっと前から嘉島さんの文章を読んでいてファンだったから。書いてあるのは個人的な体験なんだけど、共通性があって、多くの人が感じたことのある違和感。嘉島さんはそういうものを、ものすごく鮮明に描き出してくれます。薄ぼんやり見えていた世界がメガネをかけてはっきり見えていく感じです。文章に迫力があります。

茸本朗さんの『野食ハンターの七転八倒日記』。cakesで対象が一般読者になったとき、どうやって自然のコンテンツを届けようかと悩みました。そんなときに茸本さんのブログ「野食ハンマープライス」を読んで、これなら特別自然好きでない人にも楽しんでもらえる、と思って依頼しました。まだ読んだことのない方は、とりあえず無料で読める第1話「食べると肛門が言うことを聞かなくなる魚で(社会的に)死んだ」を。爆笑必至です。

山と溪谷社にて

前職の山と溪谷社(略してヤマケイと呼びます)では合計すると90ほどの企画を担当しておりました。全部書くとたいへんなので、主だったものをポートフォリオ的に。

『美しき小さな雑草の花図鑑』(写真:大作晃一、文:多田多恵子)
道端に咲く小さな雑草もルーペで花を見ると、驚くほど精巧で美しく、生命の神秘を感じ取れる。ヤマケイでの最後に最高のメンバーでいい本がつくれたことがうれしい。上のアマゾンのレビューやtwitterの感想を今でもときおり検索してにんまりしてます。

『家の中のすごい生きもの図鑑』(文:久留飛 克明 、イラスト:村林タカノブ)
この本をつくった経緯はnoteに以前書きました。これもヤマケイでの最後につくった本。NHKの「子ども科学電話相談」でもおなじみの久留飛先生がゴキブリやハエなど家の生きものの気持ちを代弁するスタンスをとっています。家の生きもの、嫌われ者が多いですが、悪意があるわけでなくて、たまたま入ってきてしまったり、そこにニッチがあるから住み着いただけ。読むとちょっと憎めなくなるかも?

『山溪ハンディ図鑑 樹木の葉』(林将之著)
山と溪谷社で最初に企画して制作した本で、全760ページに及ぶ大図鑑。以前に環境コンサルタントで樹木調査をしているときに、こういう本があったらいいのに、と思っていたものを林さんに依頼して形にしていただきました。日本に生育するほとんどの樹木を葉っぱから識別できる、いまだかつてない図鑑で税込5000円ほどしますが、毎年重版をしています。

『くらべてわかるきのこ』(大作晃一著)
よく似た種の切り抜き写真を見開きに並べて、「似ているけど、ここが違います。識別ポイントはここですよ」というのを引出し線で示す「くらべてわかる図鑑」シリーズ。そのきのこ編。冒頭にはどのページに調べている種が載っているかを推測する導線も用意しました。この本の制作でだいぶきのこを覚えられたかも。

『ヤマケイ新書 シカ問題を考える』(高槻成紀著)
野山を歩いて自然を見ることが多いのですが、奥多摩や丹沢に行くと、林床にシカが食べない植物しか残っておらず、さびしい風景に出くわすことが多くなりました。シカが増えすぎで、土壌の流出、植生の単調化、森は存続が危ぶまれるなど、さまざまな問題が起きていると言われます。その背景には、人間社会の変化があることを指摘して、解決策を考えていきます。立花隆が『エコロジー的思考のすすめ』で人間の社会は自然のシステムの一部であると言っていましたが、人の社会が健全であるためにも、自然環境を保全していかなくてはいけないと思います。

『ときめく貝殻図鑑』(文:寺本沙也加、写真: 大作晃一、監修:池田等)
図鑑って、生きもの好きのためにつくられていて、初心者にはとっつきづらいもの。もっとシンプルに「姿形にときめく」から入っていける本があってもいいんじゃないかということで、元同僚が企画した『ときめく図鑑シリーズ』。美麗な貝殻を博物館や監修の池田先生のお宅にお邪魔して撮影。大作晃一さんの撮影テクニックと貝好きの大学生・寺本沙也加さんの貝への愛情あふれる文章で、文字通り貝にときめくことができる本になりました。

『くらべてわかる野鳥 文庫版』(叶内拓哉著)
上述の『くらべてわかるきのこ』と同じシリーズで『くらべてわかる野鳥』という本も担当しました。これはその文庫版。大判のほうはB5版で、1見開きに10種類近くの鳥を比較できるのでわかりやすいですが、持ち運びしづらいのが難点。こちらは見開きの掲載種数を抑える代わりに、サイズをコンパクトにして持ち運びしやすくしました。

『歌う鳥のキモチ』(石塚徹著)
タイトル通り、歌っている鳥のキモチに焦点をあてた本です。じつは歌っている鳥はほぼオス。メスを誘うために歌っているんですね。なので、つがいになったら大声で歌うのをやめて妻にささやくように歌ったり、時折、妻に見つからないように、遠くに行って独身のフリをしたり。そんな鳥たちの人間的な?一面が垣間見える本です。


単行本以外にはカレンダーなども、たくさんつくっていました。

動物写真家、福田豊文さんのカレンダー。

福田さんの写真は夫婦の合作。奥様が猫じゃらしなどで華麗に遊ばせているところを福田さんがパシャリ。躍動感のある写真は福田さんの真骨頂です。

この「美しき猫」は私が担当の時代に企画したのですが、黒い背景に浮かび上がる猫の写真が本当にうつくしいんです。凸版印刷のPD(プリンティングディレクター)の方と入稿から印刷まで、こだわってつくっていました。

あと図鑑のアプリや、複数の出版社の図鑑を横断的に利用できるサービス「図鑑.jp」なども。

図鑑で調べるためには検索性が重要なのですが、紙でやると二分岐式の検索方法になってしまうのが、アプリであれば当てはまる条件をいくつか入れてやれば、パッと候補の一覧が出てくるのが魅力的。いろいろな機能を考えながら開発の物書堂さんとやりとりするのが楽しかった(アプリの方)。


まとめ

「山と溪谷社」入社前は環境コンサルタントで緑地管理のための植物調査をしたり、GIS(地理情報システム)を触ったりしていました。結果的にこのときに植物や自然のことを勉強したことが図鑑の制作に役立って、何がどう役立つかなんてわからないものですね。

いまは自然に関わる活動をあまりできていないですが、これは自分の中の柱でもあるので、何らかのかたちで今後も表現できればと思っています。



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