見出し画像

何兎も追う

「二兎を追う者は一兎をも得ず」
うさぎを二兎同時に追いかけても、結局両方とも捕らえることはできない。二つのことを同時に成し遂げようとしても、結局どちらも失敗に終わるということ。

仕事や趣味で、色んな事に手を出すとよく言われることです。
皆さんも子供の時の習い事、新年に決めた目標など多くのものを同時追いし過ぎて挫折したことがあると思います。
書店では「マルチタスクよりシングルタスクで突き抜けろ!」みたいな本が目立つようになっており時代の変化を感じます。
故に、この言葉はいつの時代もネガティブな意味で捉えがちです。

時代と逆行するようにサッカーにおいては役割のマルチタスク化が進んでいます。
ピッチ上でいえば、レジスタ・10番的存在がトップ下→ボランチとポジションを下げ、今ではCBやGKが守備だけでなく、ゲームコントロールをしたりラストパスを刺すのが当たり前になりつつあります。(マンC GKエデルソン、リヴァプール DFファン・ダイクなど)
クラブ規模で見るとJリーグでもコロナ禍以降、選手が広報に積極的に関わったりと役割のマルチタスク化がグッと進みました。そういったJリーグクラブを先取りするかのように選手のマルチタスク化が進み、異才を放つチームがJFLにあります。それが昨年JFL昇格を果たしたクリアソン新宿です。
昨年までは地域リーグ、今年からJFLなので選手が仕事とサッカーを兼務するのは当たり前だろうと思われがちですが、彼らの新宿をより良くしていこうとする熱量、サッカーを通して新宿の街の可能性を探っていこうとする熱量は異常なものがあります。
その先頭を行くのがキャプテンでもある井筒陸也さんです。
YouTube、noteで自らの思想を談義、披露しながら新たな可能性を追い求め行く姿はサッカー選手だけに囚われない新たな人間像と言えます。

彼の凄いのはサッカー、ビジネスパーソン、思想家?としてどれも抜かりがない所であり、発せられる言葉や話の文脈にはあらゆる事を追いかけるからこその幅と深さがあり、毎回膝を打つ内容ばかりで学びが多いです。

僕が1番に応援している松本山雅はJ2からJ3に落ち、今季は「昇格」がメインテーマです。新体制発表会での神田社長、下條TD、鐵戸強化部長。そして名波監督の「挑戦者」「覚悟」という言葉を聞いて、より一層強い想いとなりました。
チームとして昇格だけを目標に突き進むのは、あらゆる資源を全集中できるので望ましいことです。しかし、昇格が果たせなかった時に残る財産が想像しにくい。

人間の知恵というものは、しぼればいくらでも出てくるものである。
もうこれでおしまい。もうこれでお手上げなどというものはない。
松下幸之助

というように、人間の使える資源というのは「昇格」だけに全集中しようとも余るものだと思います。
そして、新体制発表会では表原玄太選手がこう言いました。

「ピッチ内外で自分に出来る全てのことを注ぎたいと思っています。」

あらゆる可能性はピッチ内にあるのではなく、ピッチ外の行動から地続きであるかもしれない。逆もしかり。
ピッチ外で読んだ本の一文がピッチの行動に変化を与えるかもしれないし、ピッチ内で感じた悔しさがピッチ外で起きる生活を一変させることもあるかもしれない。(夜更かしをしない、揚げ物を食べないとか)

だからサポーターもあらゆる可能性に挑戦し続けることが、スタジアムの何かに繋がるかもしれない。
例えば、英語の勉強をして多くの人がバイリンガルになれれば日本一インバウンドに対する満足度が高いクラブになれる可能性が増します。

普段はあまり見ないのですが、先日中田敦彦さんのYouTubeチャンネルで山田五郎さんと対談している動画を拝見しました。
中田さんは「趣味と言えるものがなく、できたとしてもどう収益化するかという方向に走ってしまい趣味らしい趣味が見つけられない」という相談を山田さんにしていました。
その相談に多趣味の山田さんは「色んなことを試していくしかない。失敗もあるけどダメだと思ったらすぐに辞めればいい。やっていく内に色んな見え方を発見できる」と仰っていました。

松本山雅を応援することは趣味。
辞めるのも続けるのも、そこからどう派生させていくかも自由。
その派生をどれだけできるかが個人の「豊かさ」に繋がり、クラブ組織全体の可能性に繋がっていくかもしれない。
何兎も追い、ダメだと思ったら新しい兎を探す潔さ。
その繰り返しが誰もマネできないスペシャルワンを生む。

予感のする方へ、何兎でも追っていこうと思ったアフター新体制発表会でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?