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『共感できるチーム』と『一歩の積み重ねでしかないサッカーと環境』

J3が2週間前に開幕し、松本山雅は2連勝でスタート。
2014年以来の開幕スタートダッシュを決めています。

昨季を振り返ると判断の迷い、消極的なプレーが目立った一方で、今年はそれらを改善していこうとするプレーがそこかしこで見ることができます。
J2最下位で降格したこと、残留してくれた選手が多数、山雅のアイデンティティを知る選手の復帰、サッカーとは何かを知る選手の加入など複合的な要素が嚙み合い、変なプライドを捨て、我武者羅にプレーする姿が多くあった2試合でした。

結果に大きく左右される部分ではありますが、僕らは今年のチームに大きな『共感』を抱いていると思います。反対に昨季のチームには「らしさ」や「アイデンティティ」の部分が希薄になり『反感』を抱くものでした。

では、この『共感』とは何処からきているのか。
真夏の炎天下の中でアイスクリームを食べている少年がいるとします。アイスクリームが溶けて滴ってくると目の前にいる自分も「あぁっ」と思って滴るアイスを舐めなきゃとなります。この時、脳の中では前運動皮質でニューロンの一部が発火。他人の動作を見ているだけなのに、あたかも自分が同じシーンにいるかのようなミラーニュートンという脳の働きをしてしまいます。
これこそ『共感』であり、パウリーニョ選手や下川選手のプレーに感情移入せざるを得なくなる最大の理由で、これが90分間絶え間なく行われるエキサイティングさがあるから僕らはサッカーの虜になってしまいます。

El primer paso delante de ti

僕の好きな監督にペップ・グアルディオラ、反町康治。そしてディエゴ・シメオネがいます。それぞれにそれぞれの良さがありますが、特に人の心を揺さぶる=『共感』を生むのがディエゴ・シメオネです。
アトレティコ・マドリードの監督であり、バルセロナとレアル・マドリードの2強だった時代に割って入りました。

そんな彼はアルゼンチン出身であり、自叙伝である『信念』の中で自らを「キングコング」と言うように感情を表に出すリーダーです。
文面だけだと、豪快な性格で数ある問題を力で一気になぎ倒そうとするように見えますが実は緻密で、何よりも規律を重視するタイプです。
そんな性格が彼の著書には色濃く見えます。

”Vamos partido a partido"
「1試合1試合、進んでいこう」
"Si miras lejos,no ves el paso inmediato ytropiezas. Hay que ir despacio, que no lento…”
「遠くを見過ぎていると、目の前の一歩が見えなくなり、つまづいてしまう。遅くなりすぎず、ゆっくり進まなければいけない」

ことあるごとに会見では「一歩一歩」と言っているように、地道な一歩の積み重ねこそがチームを作るうえで大切だという信念を持っています。

今期の山雅を見ると、多少のバタつきやミスはありますが極めて現実的な戦い方をしていると思います。
4-4-2のサイドハーフといえば、相手をかわしていけるようなドリブラータイプを置くのが多くのチームで見られがちですが、ボールを持っても、持たなくてもプレーできる選手を置く傾向が2試合で見られます。台所事情もありますが攻撃だけではなく、守備局面において一定の信頼が置けない選手は配置したくないのではと個人的に思っています。
加えて、YS横浜戦では試合終盤、1点差を逃げ切る為に橋内選手を投入して5バックに。
”名波浩”という現役時代のスタイルからは想像ができないほど”現実”で戦っていると感じました。

監督やチームも1回の練習、数週間交わった所で大きく変わる訳ではありません。中には”魔法の杖”を持っている指導者がいて直ぐに変えてみせる人もいます。杖を持った人材は一握りであり、グアルディオラやトーマス・トュヘルなどです。逆にユヴェントスを率いたアンドレ・ピルロ、チェルシーを率いたフランク・ランパードは杖を持っているかと思いきや、そうではありませんでした。
杖を持たない監督が何をすればいいかといえばシメオネの言う「1つの積み重ね」しかありません。
名波監督も現役時代に纏った装飾を取っ払い、杖がない事を自覚し、”Jクラブの監督”から”山雅の監督”に変わっている最中だと思います。
僕らも新しい山雅のサッカーを受け入れ、1つずつ成長していく時なんじゃないかと思いました。


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