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『結構です』が言いたい

JINSさんのメガネを お持ちいただくと
めちゃくちゃ燃えるという話。

僕は個人的にJINSさんのメガネは、質がいいと思うし
コストパフォーマンスという面でも
デザイン面でのスマートさ。
誰でも掛けやすい形や色も上手く採り入れた
いいものだと思ってる。

同業他社だからって、商売敵だからって
変なフィルター
介さずに、きちんと見てる。

だって、JINSさんの店覗くと
メガネ欲しくなるし。(笑)

OWNDAYSとは、お客様へのアプローチの仕方
理念が違うだけで、商品そのものの
違いは、そこまである訳では無いと思う。

先日、僕の店にあるお客様が
いらっしゃった。僕と同世代の女性。

とても困った雰囲気で
カバンから取り出したのは

あらぬ方向にテンプル(耳に掛る棒状の部分)
曲がってしまった
セルナイロール(下のレンズがテグスでつってあるタイプ)↓

※画像はOWNDAYS の 商品です
https://www.owndays.com/jp/ja/products/AR2023S-8A?sku=3472

のメガネで両方のレンズが外れてしまった状態だった。

女性は なんだか申し訳なさそうに
「これと同じようなメガネ買いたいんです
明日使うみたいで…」と 僕にお願いするような
仕草で、カウンターに手を置かれた。

(助けたい)
衝動的に僕はそう思った。

まずは女性の事情をもう少し詳しく
伺いたかったので、先程の言葉を受けて

「ご家族様のメガネですか?」と伺うと

「そうなんです。私が踏んで壊してしまって
でも明日どうしても仕事で使うって。」

「ご主人様のメガネですか?」

「そうなんです。気に入ってるメガネなんです
なるべく近い形の欲しいんですけど、今日中に作れますか?」

半分泣きそうになりながら
話すお客様の様子を 見ていると
更に、助けたい衝動が強くなる。

メガネを確認すると、JINSさんの
商品だった。先にも申し上げた通り
JINSさんの商品は高品質だし、シンプルな作りが多く
調整や修理がしやすかったりする。

ただ、部品が欠損してるとなると
他社であるOWNDAYSで修理調整は
難しい…

僕の手元に置かれた
メガネの壊れ具合は絶望的と言っても良かった
ほとんどの人が 「壊れてる どうしょもない」
と判断する状態。
テグス(レンズを釣っているナイロンの糸)
も、両眼とも切れていて、セルナイロール
特有のいわゆる玉留めパターン
(修理に技術と経験が必要で難しい)
だった。

すぐにでも、メガネを選び直して
買おうとする女性を僕は呼び止めて

「ご主人はこのメガネ気に入ってらっしゃるんですよね」

「はいそうです。ずっと使ってて…」

「申し訳ないですが、全く同じ商品は扱っておりません
ですが、僕にチャンスを頂けませんか?」

「え?」

「お客様。僕なら何とか直せるかもしれません。
お時間を30分ほど頂きますが、なんとか
チャレンジしたいんです。
だから、慌てて買わないでください」

幸い レンズは両眼とも無事だった
フレームを修理すれば
そのままレンズも使えるから
ご主人の見え方を損なうことも無い
(度数によっては、即日お渡しできない可能性がある為)

女性はは
(ホントに直るのかしら?)と不安そうな
お顔をしながらも。

少し驚かれた様子で

「いいんですか?」と仰った

はい。お時間頂きますが
できる限り お直しします。

と、頭を下げて、僕は加工場に入った。

女性は店を出て、買い物に出かけられた。

さて、状況は芳しくない

(ここからはメガネ屋の、専門用語が
出るので、読みづらいです)


まずは、テンプルの曲がりを
ヤットコで直す。セル(TR90)に、差し込んである
丁番部の金属部品を徐々に曲げる
ここで折れたら、おじゃんだ。

ベテランならわかって貰えると
思うけど、ヤットコで金属を掴んで
少し力を加えた感覚で
曲がりの加減を予測できますよね?
どのくらいの角度で折れるか。

ギリギリの線まで、曲げたら
何とか、水平を出せそうなとこまで来た。

次の難題は
ナイロールの張替えと
ナイロンレールの復元。

当然ナイロンレールは
両眼とも無くなっておりました。

僕の店のストックで 最も
太いナイロンレールを
ハサミで少し細めて、ようやく溝にフィットする
という、微妙な規格。

えぇ、作りましたとも。
もう、近くが見えないから
メガネ外して目を細めながら(笑)

そして、玉留め式の
ナイロール張替え両眼。

これはもう

長さ 張力 玉の大きさ
位置 全ての バランスが噛み合わないと
無理な代物です。

これも何とかクリア。

みるみる復元していく
メガネに アルバイトスタッフは
一言

「櫛舎さんて、やっぱりメガネのプロなんですね」
だって(笑)

まぁ、普段はしゃいでるだけの
落ち着きない人だからね
そう言われても無理ないわーー

40分ほどたって
お客様が、再来店された。

黒いベルベットの、トレーに乗せられた
メガネをご覧になって

本当に嬉しそうな表情をされた

その顔見て、僕も心から嬉しくなった。

「すごい!すごい!本当に直ってる!
明日使える! ありがとうございます ありがとうございます」

「部品の欠損があったので、完璧では無いですが
暫くお使いただける所まで、お直し出来ました。
JINSさんへ、行っていただければ
きちんとした部品を入れてくれると思います。」

と 申し上げたら

「実は」と言葉を少し躊躇うように

「実は、買った所に持っていったら
メガネを見た途端『修理できません新しいの買うしかないです』
と言われてしまって…今日作れないみたいで」

と、仰っていた

確かに 、そうお伝えしても
無理もない壊れ方だった。
JINSさんの対応が悪いとか
そういうことではないと思う。

きっとJINSさんも
お客様の事を考えてそう回答したかもしれない。
どちらが正解というのは、ないと思うんです。

でも僕は、OWNDAYSの理念

「関わる人を豊かにする」という
言葉が大好きだから

それに基づいて、もう少し
踏み込んだだけの話。

ご主人様がこのメガネを気に入ってるということ
明日仕事でどうしても必要だということ
何より、目の前の女性が壊してしまって罪悪感を
感じて、困っていらっしゃるということ

だから、目の前の女性を豊かにするには
それを 解決してあげるということ。

女性が、安心した顔をされていたので
僕は、チャレンジして良かったと
心から、思いました。

「おいくらですか? 」と財布を出されたので

「あ、いえ、お代は結構です」と辞すると

女性は、申し訳ないから
支払いしたい と 仰った。

OWNDAYSは店でお直しできる
レベルの修理に、代金を頂いてないんです
たとえそれが、他社製品でも。
(1部例外はあります)

値段が付けられないものに対して
お支払い頂く事は出来ないので

何度も断りました。

(実はお代を断る瞬間が、1番好きかも)

お客様は、嬉しそうな顔をして
今度はここで買うわー

って 仰って 帰りました。

その背中を見て

「お金貰わないことが
もしかしたら1番価値が高いかも」
と 思った

振り返ったら
アルバイトスタッフが

『グッジョブ!』だってさ。

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