『夏休みのカブトムシ』

息子のためにカブトムシを捕ってやりたいと思うのだけど……。

『夏休みのカブトムシ』

 盆休みに妻の実家にやってきた。家の裏に小高い山がある。

「伸也を連れてカブトムシでも捕ってきたら?」

 という妻の言葉に、義父母も「裏山の神社で捕れる」と頷く。東京で生まれ育った自分は昆虫採集なんて得意ではないが、目を輝かせている伸也を前に「行きたくない」とは言えなかった。

 言われた通り裏山の神社にやってきた。義父が「クヌギの木を探せばいい」なんて言っていたが、どれがクヌギかも分からない。

「お父さん、カブトムシ見つけられる?」

 不安そうに見上げる伸也をなだめつつ、神社沿いの木を見ていく。一周回り、諦めかけた頃、神社の前に小さな椅子を出して、虫を売っている男を見つけた。並んだ虫カゴには大小のカブトムシが入っている。

「この山で捕まえたんですよ」

 伸也はその男を見つめている。呟くように「すごい」とこぼす。「どこで見つけたの?」「どうやって捕まえるの?」と子どもながらに一生懸命に訊く。

 帰り際、その男から1匹のカブトムシを買った。しかし息子の羨望の眼差しは、わたしでも、カブトムシでもなく、その男に向いていた。

 翌朝、家族が寝静まった頃に家を出た。帰ったとき、「子どもを置いて虫取りに行ってどうする」と妻は呆れかえっていた。それでもたった1匹自分で捕まえたカブトムシを伸也にプレゼントした。喜んでくれるかと思ったが「メスだ」というひと言で片付けられた。

《No.165 お題:夏休み》


あとがき——テレビとYouTube

まずぼくの場合、テレビとYouTubeを見る割合は1:9くらいでYouTubeばかり。

ただ、冷静に考えて「テレビよりYouTubeの方がおもしろい」と言うつもりはなくて、単純にYouTubeの方がニッチでマニアックな番組が多いのが理由だと思う。

1個1個のYouTube動画自体は別にクオリティが極端に高いわけでもなくて、どう考えてもテレビの方が見やすくて、展開が比較的速くて、品質はいいと思う。だけど、結局万人受けするものを狙っているからか、踏み込みが浅い。それに対してYouTubeは個人が個人のために作っているから、「好きな人は好き」という動画が多い。

最近、ぼくがよく見る釣りとか猟の動画なんかは本当にそうで、淡々と釣りや猟をするだけで、言ってしまえばそれだけなんだけど、興味があるから見てしまう。

何が言いたいかというと、みんな人気YouTuberになろうとか考えずに、自分が好きなものを動画にしてアップしてほしいなぁ、ということ。自転車が好きな人、車が好きな人、文具が好きな人、あなたが好きなものは、きっと誰かも好きなはず。それを動画にするだけで、少数かもしれないけど見てくれる人は出てくると思う。

ネット時代のコンテンツは動画が強いなぁ、と、たしか前にもあとがきで書いたな。

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ケン

原稿用紙1枚の物語

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