《原稿用紙1枚で考える》小説のこと

万華鏡を最近覗いたことがあるだろうか? ありとあらゆる色と形が複雑に構成され、それがくるくると変化する。二度と同じ模様を見ることはできないし、誰かにそれを見せることも叶わない。

万華鏡を通して見ているものは、現実そのものだ。決して作り物の世界ではない。目の前にあるものを細かく切り刻み、それを幾何学模様に再構築したものを私たちは美しいと思っている。

晴れの空も、曇りの空も、美しいガラスの彫刻も、醜く腐ったカビも、犯罪者の右目も、子どもの左目も、等しく分解され、また組み上げられて、美しい模様となる。そこに優劣も差別もない。

小説は万華鏡だ。万華鏡であって欲しい。この世界の美しいものも、醜いものも、強いものも、弱いものも、大きいものも、小さいものも、等しく分解して、美しく再構築されてしまえばいい。

小説にはそれができる。

〜 あとがき 〜

わたしは小説を書いてもいるし、読者としても小説が大好物です。

常に未読の本が積み上げられていないと不安になります。すこし遠くに出掛けるとき、本を2冊以上持っていないと落ち着きません。それくらい小説が好きです。

小説を含め、芸術と呼ばれるものはすべて、恐ろしく公平で、恐ろしく不公平です。幼い子どもを殺した殺人鬼を美しく描くこともできるし、世界を救ったヒーローを醜く描くこともできる。これは公平で不公平だからできること。

そもそも『世界を救ったヒーロー』という表現自体が不公平。誰かにとってのヒーローは、別の誰かにとっては悪役だから。退治された怪物にだって親がいて子どもがいる。

だから小説家は目の前にある素材を分解して、並べ直し、再構築する。公平でありたいと思うけど、必ず誰かにとっては不公平になる。

読む人の解釈ひとつでまるっきり別の小説になる。しかも読むたびに味が変わる。10代の頃読んだ本を、いま読むと、別の本のように感じるはず。

万華鏡のように。

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《原稿用紙1枚で考える》

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ケン

原稿用紙1枚の物語

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コメント3件

ここ最近、万華鏡のことをずっと考えてたので、ここでも文章の中で出会えて嬉しかったです。
おお、万華鏡のことをお互い考えているなんて偶然ですね。なんか万華鏡っておもしろいと思うんですよ。
ケンさん、おもしろいですよね✨万華鏡を覗いてる時は、その瞬間だけは、異空間に自分がいるような、過去なのか未来なのか、時が止まって吸い込まれたのか…みたいな空想が始まるくらい、夢中になってる気がします。笑
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