バンドマンの日常

謙です。バンドやってたやつならわかるはず。この悶々とした感覚。

バンドマンの日常

 歌舞伎町の人混みをひとりで歩いていた。

 ライブのあとに必ずやる打ち上げもやらず、ライブハウスをあとにした。

「ちょっと飲んで帰るか……」

 ギターを背負い直し、いつも打ち上げに使う、安さだけが取り柄の居酒屋に向かった。

 ライブハウスのオーナーの言葉が頭をグルグルと回っていた。

「曲も、歌もいい。楽器が弱いんだよ。もったいねーよ」

 歌も作曲も隆史がやっている。結局は隆史だけが良くて、あとはダメ、ということだ。もったいないという言葉は、隆史にかかっている。バンドが良ければ、隆史はもっと映えるのに……。そういうことだ。

 居酒屋に入り、隅のテーブルに座った。ビールをひと口飲んで、隆史以外のメンバーにメールを送った。

『いつもの店で飲んでから帰ろうと思う。もし暇なら来いよ』

 みんな飲みたかったようで、それぞれから「今から行く」と返事が来た。

 居酒屋の入り口が開く音がして、見てみると隆史だった。

「なんか、飲みたくてさ……。悔しいんだよ。おれらの良さが伝わってないことがさ」

 他のメンバーもそのうち集まって、いつもの打ち上げになった。

 隆史が言った「おれら」という響きが、ビールの苦味を打ち消した。


あとがき

バンドって楽しくてしかたなかったけど、同時に悩みも多かった。

「おれはもっとできるはず」「もっとうまく」「もっと良い曲を」という自分の内側に向かう葛藤と、「もっと俺を理解してくれ」「なんで伝わらない」「なんで分かってくれない?」という外へ向かう葛藤が、いつも渦巻いていた気がする。

ケンカしたり、いじけてみたり、強がってみたり、そういうことを繰り返しながらバンドを続けていた。

でも、あんまりバンドのことを小説にしたことはない。

ただの青臭い話になりそうで、そこから抜けられないうちは書きたくないな、という気持ちがある。

でもやってみないと「抜けられない」のも事実だろうな、とも思う。

だから時々はこの『原稿用1枚の物語』で、バンドのことを取りあげてみたいな、と思う。


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ケン

原稿用紙1枚の物語

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コメント5件

していたんです。できればまたやりたいですが。。。。
こちら、朗読してみてもよろしいでしょうか?
>ゆたかさん ぜひ! ありがたすぎるお話しです!
ひとまずこちら、完成しました! https://note.mu/yutakahattori/n/n0da9291961b5
今回、少し粗があるのですが、もしも今後機会がありましたらぜひ朗読させてください!
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