『バイクが結ぶ』

ケンカしつつ、ふたりで乗るバイク。なかなか複雑です。

『バイクが結ぶ』

 恵子が睨むように俺を見る。負けじと見返す。

「いっつもわたしの話、聞いてないじゃん。いい加減に相槌打つだけでさ!」
「聞いてるよ、って何度も言ってんじゃん」

 なんてこともない痴話喧嘩だ。でも、なにもこんなときに……、とも思う。高速道路のサービスエリアで休憩がてらコーヒーを飲み、バイクに戻る途中にケンカだ。

 ふん、とふたり揃って鼻息を鳴らしながらバイクにかけてあったヘルメットを手に取る。無造作にそれを被り、俺はポケットに入れていたキーを出して、エンジンをかける。

 バイクを引いて駐輪場から出し、1度スタンドを立てる。恵子が後ろに乗るときにバランスを崩さないように。

 嫌々ながらも恵子は後ろに乗る。ケンカしている手前、俺に極力触れないようにほんの少しだけいつもより後ろに座っている。

 軽くアクセルを回し、一瞬だけエンジンを吹かした後、クラッチを蹴って走り出す。ふたりのときは急発進はしない。高速の合流車線に入る。徐々にスピードを上げる。70km、80km、90km……。

 恵子の胸が俺の背中にあたる。俺は左手で恵子の膝を撫でる。

 バイクは本当にいい。自然と仲直りができるのだから。


あとがき——毛針作り

釣りの楽しいのところというのは、なにも釣りに行っているときだけじゃありません。

仕掛け作りからすでに楽しいのです。わたしの場合はテンカラ釣りなので毛針というものを使います。簡単に言えば針に糸を巻き、鳥の羽をつけ、魚に虫のように見せかけるのです。

この毛針は釣具店で買うこともできますが、自分で作ることもできます。

むしろ作ることが楽しいのです。

「前回、黄色の毛針で反応が良かったなぁ」
「いや、でも、前回は雨だったからあの毛針が良かったけど、明日は晴れだから、もっと地味な色がいいかな」
「前にあの川にいったとき小さいのばかり釣れたから、今回は大きいのを狙いにいこうか」

ってな具合に、あれこれ考え、いくつかの毛針を作ります。それが当たるときもあれば、外れるときもある。でも毛針を作っているときから、すでに釣りは始まっているのです。

遠足は準備が楽しいと言うじゃないですか。そういうことです。というわけで、ちょっと毛針を作ります。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

5

ケン

小説書いてます。『池内祥三文学奨励賞』受賞。世界旅を終え、作家活動中。ブログ『日刊ケネミック』→ http://kenemic.com | Amazon著者ページ→ http://amzn.to/1sh7d1f

原稿用紙1枚の物語

毎日 note を開くのが楽しみになるような、すごく小さな物語をお届けします!
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。