《原稿用紙1枚で考える》燃える薪の火のこと

知り合いの庭師さんがときどき大量の丸太を届けてくれる。どこかで切り倒された木だ。

家の前に山積みされた丸太を斧やチェーンソーで、小さく切り分けていく。量によっては一日じゃ終わらない。

切り分けた薪を家の周りに積み上げていく。そして待つ。半年。一年。青みがかった薪が薄茶色になる。よく燃えそうなことは手で持てば分かる。

冬が待ち遠しくなる。

秋の終わり頃、肌寒い朝、誰かが手をこすり合わせながら言う。

「ストーブ、つけようか」

よしきた! と細い枝から中くらいの枝、それに太い薪を家に持ち込む。新聞紙に火がつき、細い枝に燃え移り、じりじりと太い薪を赤くする。

みんなで火を覗き込む。暖かい。シーズン最初の火はいつだって特別だ。

この火は、何十年もかけて大きくなり、切り倒され、細かく切り分けられ、一年もかけて乾燥させた薪が生みだしている。

その暖かさを逃すまいと、みんながそっと手を伸ばす。

〜 あとがき 〜

薪ストーブって面倒です。

木を薪にするのだって面倒だし、火をつけるのも面倒なら、その火を維持するのだって面倒。そのくせ一気に部屋が暖かくなることはなく、ジワジワとしか暖まらない。

でも面倒って楽しいんです。ひとつひとつ遊びだと思うと、楽しくて仕方ない。

薪を切ったり、火をつけたり、ぜんぶ遊びです。

生きていくことは遊びだと思えば、ちゃんと遊びになる。

そういうのをスローライフって言うんじゃないかな。

End

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《原稿用紙1枚で考える》


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ケン

原稿用紙1枚の物語

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コメント2件

火の揺らめきを見ながらの生活ってとても羨ましいです!
いいですけど、面倒でもありますよ。先日もチェーンソーで丸太を切ったり運んだり、筋肉痛です。でも好きですけどねー。
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