《原稿用紙1枚の物語》鏡への執着

謙です。女性って鏡が好きですよね。そんなところから書いてみた物語です。

鏡への執着

昔から母が繰り返す言葉がある。

「女は絶対に鏡を手放しちゃダメ」

まだ小学校にも上がってないというのに、わたしは母からもらった大人びた手鏡を使わされていた。

「鏡の中の自分が笑っていられるように生きなさい」

優しさよりも厳しさが込められた口調だった。

その後も、何かの記念日のたびにステキな鏡をプレゼントされた。姿見、手鏡、卓上ミラー、どれも上等なものが揃った。

母は年齢の割にきれいだと思う。だけど、あまり鏡を覗き込むタイプではない。それを母に言うと「わたしはいいの」と笑っていた。

大学を出て数年後、わたしも長い恋愛の末に結婚が決まった。

「渡したいものがある」と母は小箱を差し出した。

——鏡だ。

結婚という人生最大のイベントに、母はどんな鏡をくれるのだろう、と少し緊張した。

恐る恐る開けてみると、中はペンダントだった。

「鏡かと思った」
「なに言ってんの。もうひとりじゃないんだから、鏡だけじゃなくて家族の顔を見なさい。夫や、いつか生まれるかもしれない子どもの顔が、あんたの鏡になるのよ」

そういえば、母が自分の鏡に執着するところを見たことはなかった。


あとがき

今回のお話はTaiki Beaufilsさんからのリクエストで『鏡』をキーワードに書きました。Taiki Beaufilsさん、リクエストありがとうございました。お気に召しましたでしょうか?

何度でもリクエストしてくれていいので、また気が向いたらお願いします。m(_ _)m


さて、数日前に告知したとおり、官能小説家の響由布子さん(著作一覧、大人向けだよ)が、この連載でコラボしてくれることになりました。プロの作家の文章をタダで読めるチャンスです。せっかくなので企画をやります。

企画『2人で、7つのキーワードから、14の小説を書きます』

わたしと響さんで決めた7つのキーワードをもとに、それぞれが自由に小説を書きます。もちろんすべて原稿用紙1枚分で。

そのすべての作品をこの連載で発表します。

7つのキーワードはこれ!

風呂、朧月、スマホ、お箸、釘、雨、下駄

この7つのキーワードをもとに、ふたりがそれぞれ小説を書きます。

書き上がった作品は、明日から、1日1つ、ここで公開していきます。

どうなるンでしょうね? わたしも楽しみです。さっそく明日はわたしの番です。風呂をテーマに1枚書いてみたいと思います。響さんはなにを書くんだろう?

プロの胸を借りるいい機会なので、がつんと飛び込んでいきたいと思いますよ。


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ケン

原稿用紙1枚の物語

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