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イギリスで就職を目指すソフトウェアエンジニアに向けて

(Page top photo by @akira_ca)

この記事はソフトウェアエンジニアである私がイギリスで転職活動をした際に体験したことをまとめたものです。少しでも多くの点で参考になればと思っていますが、基本的には個人的な経験に基づいたものなので一般化できない部分もあるかと思います。またタイトルにもある通り書いてある事柄はソフトウェアエンジニアに限定されるのでその点もご容赦ください。

背景

私はこれまで二年間メルカリUKという会社のバックエンドエンジニアとして働いてきました。しかしご存知の通り、3月15日をもってメルカリはイギリスから撤退しました。それに伴い自身の進退についていくつかの選択肢があったのですが、イギリスに残りたいという思いが強かったため転職活動を始めた、というのがきっかけです。

準備

実際の選考プロセスが始まる前に準備をしておくことがいくつかあります。

・LinkedInの更新
こちらでの就職活動でメインに使うことになるのはLinkedInです。プラットフォームとしてのポジションが確立されており、多くの場合においてコミュニケーションのタッチポイントになります。アカウントを持っていない場合は作成を、持っている場合はプロフィールを最新版にアップデートしておきましょう。この際、

(1)ロケーションをイギリスにすること
(2)Career Interestをonにすること

の2点に気をつけてください。(1)の設定により、イギリス内で求人を抱えるリクルーターからリーチされるようになります。また(2)は転職の際には設定必須の項目です。また自分が更新しているのが英語版のプロフィールであることも確認しましょう。

・CV(Curriculum Vitae、履歴書)の更新
こちらでは履歴書の形式は問われません。特に奇をてらう必要はないので、見やすさ重視でシンプルにまとめましょう。私はGoogle Docsにテンプレートとして既にあるものを利用しました。(参考までにこちらが実際に私が使用したものです。)

・CVの添削
このステップは個人的にかなり重要だと思っています。履歴書の文章というのはかなり特殊なので、相当ライティング力のある方でない限り、どうしても安っぽく見えてしまいます。とりあえず伝わるだけの文章ができたら多少コストがかかったとしてもネイティブ、できればHR関係のプロに添削を依頼しましょう。

・転職サイトへの登録およびCVの掲載
以下にあげるようなサイトへの登録、プロフィールのアップデートをしましょう。またLinkedInの文章も添削を受けたCVの内容で更新しておきましょう。

Indeed
Monster
Hired
stackoverflow
reed.co.uk


ここまでのステップが完了した時点で次第にリクルーターからの連絡が来る(*1)ようになります。基本的にはこのリクルーターからの連絡に対応していけば選考が始まります。リクルーターとのファーストコンタクト(*2)でよく聞かれる質問として(1)バックグラウンドと(2)希望する年収があります。どちらもすぐ答えられるように用意しておきましょう。またこちらからすべき質問として、そのリクルーターが抱えている案件で企業がビザをサポートできるかどうかがあります。選考が始まってからビザを出せないことが発覚する、ということが起こらないよう事前に確認しておきましょう。

またもし気になる会社、求人がある場合は応募をして反応を待ちましょう。

選考

・選考ステップ
企業によって違いはあります(*3)が基本的な選考ステップは以下の通りです。

ファーストコンタクト → 課題 → テクニカル面接 → 最終面接

バックエンドエンジニアのポジションの課題で多かったのは、ペライチの仕様が送られてきて「仕様を満たすAPIを実装しなさい」というものでした。大体一週間ほどかけて実装して結果を待ちます。課題型とは違った形式として、ビデオ電話でのペアプログラミングというものもありました。

・テクニカル面接、最終面接
テクニカル面接や最終面接は一般的には本やブログ記事などでしっかり準備をして臨むべきだと思います。が、私のケースでは唯一最終面接に残った会社からオファーをいただき、内容も技術や経験に関して深く聞いてくるものではなかったため残念ながらアドバイスとして書けるほどの経験ができませんでした。

オファー後

オファーをもらった後はビザとの戦いになります。

・”Resident Labour Market Test”
ビザの申請に先立って”Resident Labour Market Test”というものが必要になります。これは企業側がビザを申請するのに必要となる手続きであるためこちらからアクションは必要ありませんが、知っておいて損はないと思います。なにかというと、28日間そのポジションを掲載し、応募者には適切に選考をした上で「人材市場にはこの外国人より適切な人材がいない」ということを証明するためのものです。つまりオファーを受け取っても最低一ヶ月はビザを申請するまでに時間がかかるということです。

・ビザの申請
このテストが完了した時点でビザの申請が可能になります。基本的には企業に任せておき、必要な書類を求められたら対応すればよいですが、担当のレスポンスが悪かったり、仕事が遅いということが往々に予想できます。こちらのレスポンスはできるだけ早くして負い目を作らないことと、反応が悪ければこちらから何度も確認の連絡をしてみるのが実践的なアドバイスです。

・そして渡航
日本から申請をした場合は特に問題がなければビザセンターでの事務的な手続きがあり、承認されればすぐに渡航、という形になると思います(*4)。

その他

いくつか補足的な事項をまとめておきます。

・就活時期について
こちらの就活市場が最も活発になるのは1月です。これは新年で人材採用の予算が割り当てられるためです。1月をピークに次第に勢いが衰えていきます。また12月には予算を使い切る目的でやや活発化する傾向もあるようです。多少意識しておくとよいでしょう。

・イギリスのビザ状況
イギリスで就労ビザを取得することは一般的に難しいとされています。実務経験に重きが置かれる傾向があり、仮にこちらで学位を取得したとしてもジュニアレベルではオファーがもらえず仕事が見つからない、という話も耳にしました。一方でブレグジット後のイギリス経済におけるテック業界への期待は大きいため、他の業界と比べた時の風向きは悪くなさそうです。

イギリス以外のヨーロッパの国に目を向けてみると、フランスでは先日新たなスタートアップビザのスキームが発表され、ベンチャー企業が外国人労働者を採用しやすくなりそうです。また、ドイツにはブルーカードという制度で外国人エンジニアを採用するケースがあるようです。

・どこで就活をするかについて
理想的にはイギリス国内にいるのが何かと都合が良いと思います。企業の活動時間との時差もありませんし、オンサイトの面接が必要になることも予想できます。ただ気をつけて欲しいのはイギリスは入国管理が最も厳しい国の1つだということです。観光ビザだけを持って「仕事を探しにきた。いつまでいるかわからない」と素直に答えてしまった場合、最悪強制送還になる可能性があります。就活をすることが目的だとしても、短期の学生ビザやYMS等正規の手段で入国することをおすすめします。

まとめ

ネットで調べてみるとアメリカやドイツの就活情報に比べてイギリスの情報はとても少ないように感じます。イギリスも負けず劣らずエキサイティングで魅力的な国なので、選択肢の一つとして検討してくれればとても嬉しいです。

ここでは書ききれなかったこともいくつかあります。より具体的な話が聞きたい方はTwitterFacebookで連絡をいただければと思います:)

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(*1) 連絡を取ってくるリクルーターには二種類あります。1つは企業の採用担当、もう1つはリクルーティング会社のリクルーターです。後者の場合連絡の手間は増えますが、仕事探しの相談ができたり、企業との契約交渉をしてくれたりと頼りになる面もあります。
(*2) リクルーターとのファーストコンタクトは基本的には電話になります。英語での電話ははじめハードルが高いと感じるかもしれませんが、会話の内容は決まっているので数をこなして慣れていきましょう。
(*3) 個人的には経験しませんでしたが、有名ベンチャーだと第○次面接といったように非常に長期戦になるようです。
(*4) 私は今回でビザの申請が2回目でした。前回はビザなしからのビザ取得であったため、上記のステップをとりましたが、今回はすでにビザを持っている状態で雇用主が変わる、というケースだったためイギリス内にあるオフィスで手続きをするだけで完了することができました。

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