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【書評】2019年1月④ 評価経済社会

オタキングこと、岡田斗司夫氏による本書。Facebookで評判を見て読了。原版が2011年と今から8年も前にもかかわらず、非常に現代を捉えた一冊であり非常に面白い内容となっている。

100万人のフォロワーの人が1億円集めるのは簡単だけど、1億円持ってる人が100万人のフォロワーを集める事はできない。なるほど、貨幣経済社会から評価経済社会に時代が変遷していることの象徴的な事例。

高名な未来学者トフラーは言いました。「人類を大きく変える波はこれまで3度あった。農業革命、産業革命、そして第三の波は情報革命である。」その技術のパラダイムシフトの中で人類の”価値観”も大きく変わっているんだよという話を前半でしています。

文中の例え話で興味深いのが、ルネサンス以前は聖書はラテン語の筆写本であり、大変貴重で読める人間も聖職者に限られていた。なのでとても尊敬されていた。しかし、グーテンベルグが活版印刷を発明したおかげで誰でも家庭で聖書が読めるようになってしまい、徐々に矛盾に気付き、尊敬や権威は衰退していったそうです。

また著者は、情報革命後の今の私たちは科学も経済も自分たちにとって特別大事な存在ではなくなってしまっていると説いています。

そしてそれを「評価経済社会」と呼び、貨幣経済社会が皆、貨幣の最大利益化に向かって邁進することで安定する「動的安定社会」であったのに対し、皆が評価的利益に向かって邁進することで安定する「動的安定社会」と定義しています。

そして評価経済社会では、個人が影響(=多くの人の価値観をある一定方向へ向かわせようとすること)を与えたがる社会である。なるほど、そうすると現代のYoutuberやサロンの説明がつくなと納得。

そして「評価」と「影響」をお互いに交換し合う社会。これを「評価経済社会」と呼ぶ。

そしてそれはもちろん企業にも及び、資産を持つ事の重要性から、イメージや「影響力」を持つ事が重要であると、ディズニーランドや昔のSONYを用いて説明する。

そして評価経済ではモノではなくて価値観を選ぶことがその人の個性になる。

ここ最近のインターネット上の個人の活動の変化に何かもやっとした違和感を感じていたが本書を読んで少し氷塊した気もした。身の回りでtwitterへの揺り戻しももしかしたらこの辺りの価値観の変遷が影響しているのかもしれないとまた新たな仮説が生まれた。


以下メモ

そして日本でも高名な経済学者の堺屋太一さんの文章を用いて、その価値観の変遷の予測の難しさを説明します。堺屋さんは著書の『知覚革命」の中で、ある時代のパラダイム(社会通念)は、「その時代は何が豊富で、何が貴重な資源であるのか」を見れば明らかになると説いている。

特に面白かったのが、封建社会では基本概念が「身分」であり、支配する側として安定させるために尊敬や忠誠を集めるのではなく、威信や畏怖を広げるほうが効率的に支配できたために、大きな城や墓を作ったと。

中世は「モノ不足、時間余り」の時代であり、この200年間は常に「モノ余り、時間不足」の時代である。

トフラーの分析によると、工場の労働を想定した公教育の表のカリキュラムは読み書き算数だが、裏のカリキュラムがある。その内容は、時間を守ること、命令に従順なこと、反復作業をいやがらないこと。

1910年の社会では世界とは軍事であり国境であった。1960年は世界とは政治であった。2010年は世界は経済の事である。

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