剣が峰にたつフランス左翼

フランスの左翼(NUPES; Nouvelle Union populaire écologique et sociale: 新エコロジー及び社会的人民連合)は今剣が峰に立たされている。大統領選でのメランション(Jean-Luc Mélenchon)の思いがけない善戦、そしてそれに乗じて国民議会選挙であれよあれよと第二勢力まで躍進し、左翼が低調であるという世界的傾向に一矢を報いたが、すでにその頃から候補の暴力沙汰で暗雲が立ち込め始める。

最近ではテレビなどで颯爽と話していた若い幹部が奥さんに暴力をふるっていたことがフランスの文春砲Canard enchaînéに暴露され、またそれに対する対応が歯切れが悪く批判に晒されている。旧社会党、エコロジー、フェミニストなどの烏合の衆なのでいったんスキャンダルが起きると結束がないために弱い。

足並みが揃わず瓦解していく(?)のを見て、牽強附会気味だが第一次世界大戦後のドイツのワイマール共和国のことを思ってしまう。妥協でかろうじて成り立っていた誰にも愛されなかった共和国。その妥協の中心にいた老獪なシュトレーゼマンが死にそして大恐慌の到来が招いたものを言及する必要ないだろう。

もちろんNUPESは政権をとっているわけではなく、現政権が全体主義に走ることはないだろう。ただ、社会の不平等を第一に取り組む政治的勢力がもし無くなってしまったら、そこからくる殺伐さが増える恐れは大いにある。今フランスの左翼は相撲でいえば徳俵に立っている。

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