秋野 央樹の長崎退団に寄せて
お久しぶりです。倭寇です。
2023.11.19 秋野の契約満了が発表されました。
余談ですが、私は今年こそ彼が怪我から復帰して長崎を昇格に導くと信じ、2023sは背番号17のユニフォームを購入しました。
結果としては今シーズンも怪我に苦しみなかなか試合に絡めないシーズンとなりました。それでも勝ち点80を獲得し昇格があと1歩と迫った2020sの主役は間違いなく秋野であり、あのシーズンで証明した実力は紛れもない事実です。
長崎で”何か”を成し遂げることができなかったまま長崎を離れるこの素晴らしい選手をこのまま退団させるのは口惜しく、拙い文章ですが秋野のすばらしさを残すことが私にできるせめてもの足掻きです。
左足から放たれる多彩で正確なキック
彼の持ち味としてまっ先にあげられるのが左足から放たれる正確なキックでしょう。鋭く速いボールを蹴ったかと思えば、次のシーンではふわりと優しく落ちるボールと緩急自在の多彩なキックを使い分けます。
少しでもフリーにしてしまえば即座に急所にボールを配給するそのキックはチーム作りの土台としてしまえるほど強力でした。
自陣深い低い位置からはロングフィードやサイドチェンジで相手守備陣形を前後左右に揺さぶり、相手を押し込んでの高い位置からは一撃必殺のスルーパスを供給する。
動画のアシストはまさに秋野の一撃必殺のパスがゴールに直結したシーンなので是非ご覧になってみてください。(呉屋のトラップも神がかってるけど)
ピッチの理解(認知)
そんな正確なキックを持った選手であればサイドに置いてクロスを上げさせればそのまま得点に直結できそうな気がしないでしょうか?
育成年代の代表に召集された際やキャリア初期はサイドに置かれることあり結果も残しています。
それでも秋野の適正ポジションは中盤底であり、レジスタとしてゲームメイクする司令塔でしょう。なぜなら、秋野の長所はキックだけではなく、むしろ本質的な部分はそのキックを活かすための『ピッチの理解(認知)』だからです。この認知こそが決してフィジカル的に優れているとは言えない秋野を秋野たらしめる最大の長所です。
秋野はボールを持っていない状況では常に首を振りピッチ内の状況を把握しています。そうして決して焦らず自身とパスのターゲットの状態が合うまで立ち位置を調整しながらボールを循環させ、相手の守備陣形に生まれた僅かな隙を見逃さず状況に応じたキックを選択しチャンスを生み出します。
また、その認知力の高さはチームが取りうる戦術の幅広さにもつながります。手倉森監督が率いた2020sの長崎についてどんなサッカーだったかという問いに対し、「堅守速攻」というイメージを持つ人もいれば「ポゼッション」というイメージを持つ人もいるんじゃないでしょうか。
相反するサッカーですが、当時の長崎は相手によって器用に戦い方を変えどちらの戦い方も使い分けていました。
その器用な戦い方を実現したのが、秋野の認知力それにより可能になる正確な判断です。カウンターを刺せる状況であれば鋭いパスを選択し、それが無理なら低い位置で時間とスペースを貯金しながら前進する。
彼がいたからこそ手倉森長崎はしたたかに戦い勝ち点を積み上げ、昇格にあと一歩のところまで迫ることができました。
キャプテンシー
長々と秋野のサッカー選手としての特徴を述べてきましたが、私が秋野をここまで好きになったのは彼が熱いキャプテンシー・責任感を持った男だからです。
2019sの夏に湘南からやってきた彼は、玉田や角田・徳永といったベテランが在籍するなか25歳でチームキャプテンに自ら立候補し40試合に出場し7アシストの数字を残しました。
あくまで予想ですが彼がキャプテン就任を望んだのは湘南で出番を失いつつあった中で長崎移籍を決断した背景には、より自分を厳しく”結果”を求められる状況に追い込むためだったのではないかなと感じています。
決して口の上手いキャラクターじゃないことを感じさせる彼は、それでも時にはチームに厳しい檄を飛ばし、誰よりもチームのために走りそのプレーでチームを引っ張り導く存在でした。
昇格が絶たれた甲府戦での秋野の涙はすべての長崎サポの胸を打つものであり、如何に彼が自身のキャリアを長崎にベットしていたか物語る光景でありました。そして、それこそが私含め多くの長崎サポが何度怪我しようと秋野の復帰を心待ちにして待ち望んだ理由でしょう。
また、彼が示したリーダーとしてチームを率いることで成しえる成長は米田へと受け継がれ、米田が著しい成長を見せたと感じています。もしかしたら、これは自分がロマンチストすぎるからかもしれませんが笑
正確なところはわからないですが、そう思えば秋野が長崎に来た意味もあったし、それこそ秋野が長崎で成し遂げた”成果”だと思うことができます。
もちろん、秋野としてはもっと目に見えるものを望んでいたでしょう。それでも私は秋野の貢献に満足しており、むしろ秋野の望むものを与えてあげられなかったことを残念に思っています。
終わりに
退団リリースのコメントに「長崎に来て4年半、個人としてもチームとしても上手くいかないことの方が多かったですが」とあるように長崎加入時に思い描いた結果とはならなかったでしょう。
それでも秋野は長崎に対して感謝と惜別の言葉を残してくれました。
全力でプレーする彼と対戦相手として再会する日、彼がそこで何かを成し遂げる日が来ることを、ファンの一人として心から応援していきます。
そして、いつか長崎がJ1に昇格する日がきたら秋野をはじめ在籍したすべての選手が積み重ねてきた歴史がJ1に連れて行ったと言わせてください。
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