見開きの電子書籍端末は成功するか。

先日、あるベテラン漫画家と話をしたが、彼は「見開きに対応する、軽くて折りたためる電子書籍専用端末が現れないか」と言っていた。漫画は見開き単位で描くものだから、というのが、彼がそういうハードを待ち望む理由だった。実は私も長い間、そう考えていたが、最近は少し考え方を変えている。

考え方を変えた理由は、現状、電子ビュワーで閲覧する漫画は、ほぼスマートフォンで読む方向に収斂してきており、流れは見えた、と思うからである。そしてスマホの小さい画面で一番閲覧が難しいのが「見開きを前提とする漫画」だ。

それが、ベテラン漫画家の中に、今でも強固に自作の電子化を拒む作家が存在する理由である。しかし、そうした大御所の意向を無視して、最初からスマホ前提の縦スクロール漫画として描かれる流れになりつつある。

つまり見開き前提の漫画は、徐々に過去のものになってしまう可能性がある。紙書籍で出版業界が成立している現段階では、電書はまだ業界スタンダードではないが、大手出版社は、必死で電子化対応を模索している。長期低落傾向にある漫画出版の中で、唯一急激に伸びているのが、電子コミックだからだ。

過去10年間の漫画の売上げを見ると、勝負はもはや明らかである。表現として生き残りを図ろうとするなら、早晩漫画は、見開き表現を捨てざるをえない。しかし、それは同時に見開きにしか出来ない漫画の見せ方を放棄することで、確かに惜しい。

つまりこの問題は日本が率先して取り組むしかないのだが、現実には難しい。出版界だけでなく日本社会そのものが、産業的に疲弊しているからだ。なので、この際見開きは切り捨て、スマホ閲覧に特化した表現に漫画を合わせるしかない、という見方が現実的になりつつあるように思える。

問題は、コミックが全体売上げの3〜4割を占める出版構造を持つ国は、世界でもただ一国、日本だけだということ。日本以外のどの国も、電子での漫画の売り方を真剣に考えていない。つまり電子ビュワーやハードを含めて、漫画はグローバル・スタンダードにはなり得ていない。

私は、問題の打開には、iPadなどのタブレット端末のさらなる普及を図る以外にないと思う。タブレットなら、漫画をページ構成を保ったままに読ませることが可能だからだ。しかしタブレットが「漫画閲覧ビュワー」として真に普及するためには、今のそれよりも更に、劇的に、「軽く」なる必要がある。

サムソンが「折りたたみスマホ」を開発中だとの噂もあるが、これはタブレットとして発展させるべきではないかと個人的には思う。スマートフォンは、現状今の形が最善ではないかと思うからだ。閲覧には既にタブレットが必要充分なスペックを実現しているが、いかんせん、まだ重すぎるのだ。

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