①本当は何やりたいんだっけ?

「本当は何がやりたいんでしたっけ?」

仕事柄、よくそれを対峙する起業家や学生さんに問うこが多い。が、肝心の自分のことになると、よくわからなくなるもの。

(実際、仲の良い起業家のみなさんには「お前の方こそ、やりたいこと何なんだよ?」とよく突っ込まれてます。笑、まったくありがたい関係っす。)

前職を退職してはや3ヶ月。この期間は、あらためて自身の本音を探し、思い出すための期間となりました。そして、自分が「冒険する人を応援したい」と思っていることに、気づきました。以下、それにまつわる、お話。

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7年前、世界各地を旅して気づいたのは、いまの資本主義システムの矛盾と限界でした。

一見、便利で快適なそのシステムのなかで、どんなに努力をしても、絶望の縁に立たされつづける人々、個性を失っていく人々、つながりを失っていく人々、敗者・弱者として蔑まれる人々、画一化され魅力を失う都市やマチがあることを思い知らされました。

このままだと、みんな同じようなこと考えさせられて、おんなじような店だらけで、面白くなくなるし、格差と不安はますます大きくなるし、きっと大切な人たちを守れなくなるし、どこもかしこも同じようになっちゃったら旅のしがいもなくなるだろうな、とそんなことを思って、この「世界を灰色に変えていくうねり」を、どうにかして変えたい、と思うようになりました。

そんな想いをもって、帰国。

まずは、そんな「灰色にしようとする流れ」に抗おうとしている人たちを増やし、支えるための取り組みをさせていただいてきました。(あんまりにそれぞれの個性(色)が強すぎて、まとめるのめっちゃたいへんやったけど)

そして5年間で83組の創業支援と相互扶助コミュニティづくりを行うなかで、多様なジャンルの起業家の創業期や変革期を伴奏し、それが育まれる土壌をつくりながら、(正直、個人的には失敗の連続でしかなかったんやけども、笑)たくさんの方々の支えをうけて、結果としては、たくさん学び、多くのものを得ることができました。

残念ながら、前の職場では、私の力不足により、それ以上私のやりたいことは突き詰められない、ということになってしまいましたが、5年間の学びと成長の機会をいただけたことには、改めて深く感謝をしたいと思います。

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そのうえで、あらためて、この3ヶ月。ありがたい問いにさらされながら、自分自身の想いに向き合ってきております。(マジで毎日涙が出るほど有り難い日々です。パネェっす。笑)そのなかで、私自身は「冒険する人を応援したい」という気持ちが強いことに気がつきました。

「冒険」といってもそれには、その人自身にとっての冒険、ある集団にとっての冒険、そしてにとっての冒険、など、いろいろな段階があると思っています。

いづれにせよ、どんな冒険にも共通するのは、それが「脱システム・脱常識・脱日常」である、という点だと思います。

そして、システムの外側の不確実で、カオスな状況のなかで、文字通り、自らの人生を左右しかねない危険を冒しながら旅をする。そしてその結果「新しい視点・知恵・力」を外界から持ち帰り、日常の世界にそれを還元していくこと。それが冒険だと考えています。(角幡さんの『新冒険論』をぜひご参照ください、めちゃくちゃ面白いです。)

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なぜ、脱システムな冒険する人を応援したいのか?

その背景には以下の考え方があります。

いま「社会課題」とされている構造を真の意味で解決するため、あるいは「社会的弱者」とされている方々を含めた、私達一人ひとりを真の意味で自由と創造の担い手にするためには、もはや、現在の社会全般の基本OSとなっている「機械論パラダイムに基づく金融資本主義システム」を単にアップデートするだけでは足りない、とそう思っています。

(たとえば、仮にWindowっつーOS(基本ソフト)を問題があったからってバージョンアップしてもさ、OS自体は変わんないよね。で、もし、そもそものOSの設計思想自体が、環境や時代に合わんくなってきたんなら、もう、いくらバージョンアップしても意味ないよね。ってことっす。笑)

現在、私達の多数にとって安心安全快適な暮らしを支える基盤となってくれている資本主義システムは(これがあったからこそ僕みたいな適当なバックパッカーも世界中を旅できたので本当にありがたいのですが)よくもわるくも、その根本に私有財産制度を前提としていることから、本質的に、個々を分断し、所有させ、競争させずにはいられないシステムです。

それゆえに、たとえば、どんなに「社会課題解決」を目指しても、この資本主義システムの土俵の上で、経済合理性という価値指標のみに即して成功しよう、と頑張ってしまっては、結果として、返って、このシステムを強化させることになってしまうと考えています。

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もちろん、一方で、脱システムの事業体を立ち上げるということは、それ自体日常の安心安全快適を多少なりともぐらつかす可能性を秘めていることも承知です。

けど、もはや、現状の延長上では無理だななと思うんです。(それは3・11以降、そしてそれ以外のいろんな出来事を経て、もうみんな気づいてるんじゃないすか?)なので、私としては、現状の資本主義システムとは全く違う価値基軸の行動原理をもった「脱システム的な」事業や仕組み、起業家個人を応援し、育むこと、そしてその仕組みをつくることが、まずは不可欠だと考えております。

そして、そのような脱システムな取り組みは、システムの淵でしか起こりえないと思っており(恩人であり変人でもある加藤 轍生 さんも著書で書いてますが)それが、たとえば地理的に言えば、限界集落と呼ばれる場所だったり、離島だったりするわけです。

さらに、ジャンルで言えば「株主資本最大化を目的とする事業体」に対しての(いわゆる)「社会課題解決型事業」や「ソーシャルビジネス」と呼ばれているジャンルも、ある種の淵の役目を果たしてきたのだろう捉えております。

ということで、「資本主義システムをバージョンアップするのでなく」「資本主義を超えた新しい社会システムのOSを作り出す」ことはそういったシステムの淵でしか起こりえず、それは脱システム的な冒険を経て事業をつくろうとする起業家、すなわち「冒険起業家=Adventurous Entrepreneur」たちによってしか具現化されえないと考えています。

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もちろん「冒険起業家=Adventurous Entrepreneur」たちの手がける、事業/プロジェクト/イベントは、既存のシステム側からみれば、ときには取るに足らないゴミクズのようであり、バグであり、ある種の反逆行為にすら見えることもあります。(よく社会起業家と呼ばれていた友人たちも「それってカネになんの?」と問われて困窮してます。)

しかし、そのような見方は本質を捉えきれていません。

むしろ実際には、そのような脱システム的な事業体の活動の本質は、否定でも、対立でもなく、それは弁証法的な、昇華へのプロセスだ、と捉えるのが適切だと思います。

その意味では、これまでも(そして、いましばらくも)単純に否定(アンチテーゼとしての)取り組みも数多くうまれると思っています。

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いづれにせよ、ここで大切なのは、それらの一つ一つの事業やプロジェクトやイベントといった活動を、現状の資本主義システム、機械論的パラダイムにもとづいて評価、批判することには、さほど意味がないということです。

(よく、私の友人である起業家たちは「この事業の社会的なインパクトは?」とかよく聞かれて、困りながらも、とりあえず適当な返答をしてごまかしているが(笑)。たしかに、それは大事なんだけど、それだけで切り取ってちゃ、誰も冒険(挑戦の意)なんてできないでしょ、って言いたい。)

むしろ、個々の活動を経済的合理性のみで短絡的に批評するのでなく、大きな目で見たときにこそ、はじめて、それら大きな変革のプロセスの一部に過ぎないことに気づけると考えています。

そして、私にとって重要なのは、①テーゼとしての「経済合理性を第一とする資本主義システムを強化する活動」でも、②アンチテーゼとしての「経済合理性を安易に無視あるいは否定する活動」でもなく、その先に立ち上がってくる、③ジンテーゼとしての「機械論(経済合理性)と生命論(全体の調和)を統合し、昇華した新たな社会システムのOSを創造すること」だと考えています。

そして、そのために、私はこれから「冒険者として起業家」を応援したいと思っています。(大丈夫。伝わる人に、伝わってくれればいいと思って書いてます。笑)

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ちなみに、私が個人的に大事にしているメタファーとしての「スサノヲノミコト」の本質もまさにこのような弁証法プロセスです。

スサノヲノミコトはもともと神々の国(既存システム/テーゼ)の暴れ者つまり秩序の破壊者(アンチテーゼ)でした。その後、彼は脱システムの冒険として地上を旅します。そこで、ヤマタノオロチ退治(治水事業の成功)を経験し、新しい視点、知恵、力(その象徴としてのクサナギノツルギ)を手に入れます。

そのうえで冒険(システムの外側の旅)で獲得したそれらの視点・知恵・力を日常の世界に還元(アマテラスへのクサナギノツルギの献上)をし、その果てに、この世界に、それまでには存在なかった和歌という芸術(新しい秩序体系/ジンテーゼ)をつくりあげた、というのが、あの物語の本質だと考えております。

(なので、僕的には、スサノヲプロジェクトは、起業家がそれぞれにとっての非日常、業界にとっての非常識を冒険する旅のプロセスであり、システムの外側を意図的につくりあげる場だったんです。つっても、そんな説明、ほとんど誰にもしなかったけど。笑)

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「本当は何をやりたいのか?」

(という表題からは、かなりかけ離れた、なんだか、だいぶ、抽象的で、わけのわからない話を書いてしまいましたが、笑、ということで、まぁ、そんな感じの想いを旨に秘めつつ)

その問にたいして、私は、あらためて「冒険者としての起業家」を育み、支えるための仕組みづくりを、個人として行っていこうと思っております。

具体的な企画内容については、今後順次、お知らせをしていきます。ので、みなさんの周りにいる「冒険起業家=Adventurous Entrepreneur」と、それをこれから目指す若者がいれば、ご紹介などよろしくお願い致します。

(つーことで、みなさん、よろしく)

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