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街撮りは定点観測なのかも

以前にテーマとモチーフの事を書いたけど、自分の撮り方の中で「街撮り」に使うポイントとして明確にあるのは「定点観測」。
 
これは街撮りの場合に、見慣れた場所でのテンションを下げないための手法として有効で、いつも撮る場所でおきる「その瞬間だけの光景」を捕まえる手段にもなるからだ。逆に言えば、いつも撮る場所で同じ様に撮っても同じに写らない面白さと、以前の物と比べる事で感じられる「時の流れ」を味わえる楽しさが味わえる、というのも大きい。
 
横浜在住な自分としては、いつも撮る街の風景は住環境風景よりも誰でもわかりやすい街として、中華街等の観光地的な場所を選ぶ事が多い。
それは「訪れる人が多い事で変化も大きくわかりやすい」といった面白さがある事と、人が集まる事で生まれる「その場の空気の変化」に多様性が生まれやすいからだ。

EOS R EF24mm F2.8 IS USM
ISO100 f/3.5 1/320s

2020年4月、緊急事態宣言を受けて横浜中華街は休業する店が多く出た。
日頃、凄い人数の観光客が訪れる街は、一変してゴーストタウンの様な様相を見せた。

EOS R EF24mm F2.8 IS USM
ISO100 f/3.5 1/640s

いつも撮っている街だからこそ、この変化が写ってしまう。
そもそも大型クルーズ船内での発症が報道されていた事もあって、横浜に向かう観光客は激減していたが、それにしても凄いと思う光景がそこにあった。

EOS R5 RF24-105mm F4L IS USM
ISO640 f/7.1 1/640s 96mm

この1枚は同じ通りを逆方向から撮ったもので、現在と過去の違いが明確にわかるセットになった。
 
定点観測と言うとタイムラプス動画等を思い浮かべる人もいるかと思うけど、ここでは定点の点がかなり広い意味で使っている。
撮りたい物が「人」やその「時」だったりするから構図を同じにする必要は無く、「時の流れを総合的に理解できる」という意味で写真をチョイスしたのだけど、同じ通りを撮るという事で「定点観測」と表現した。

EOS R RF70-200mm F2.8L IS USM
ISO1250 f/3.5 1/60s 200mm

2020年10月に撮ったこの1枚。
街中を歩く人達のマスク着用率が上がっていて、写真に写る人の姿でコロナ前かどうかがわかるようになった。
「Go To イート」が開始されても感染者数の伸びからか、中華街は閑散としたままで、地域住民として気づいたのは歩道に置かれるゴミの少なさ。
コロナ前はタクシーが数珠繋ぎにノロノロと並んで走る道なので、こうやって歩く姿も珍しく感じた事を思い出す。

EOS R RF35mm F1.8 MACRO IS STM
ISO400 f/5.6 1/400s

緊急事態宣言が出た翌年2021年1月、2度目の緊急事態宣言が発出された。
この1枚は正にその宣言下に撮ったもので、たくましく生きる中華街の雰囲気が良く出ていた。

EOS R5 RF16mm F2.8 STM
ISO1600 f/5.6 1/80s

同じ通りを1週間ほど前に撮った1枚。
これでも人通りが少ないと感じているけど、それは飲食店の営業形態が大きく変わってしまったからに他ならない。

EOS R RF35mm F1.8 MACRO IS STM
ISO2000 f/3.2 1/640s

コロナ禍によって外食を楽しむ文化は衰退し、代わりにテイクアウトやデリバリーによる外食的な食を楽しむ文化が育った。
そのため横浜中華街でも、昔ながらの飲食店は衰退し食べ歩き用食品を扱う店が増え、閉店時刻は規制時よりは伸びてもコロナ禍前の様に遅くまで営業する店は激減した。

EOS R5 RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM
ISO800 f/7.1 1/250s 50mm
EOS R5 RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM
ISO800 f/7.1 1/250s 50mm

街が賑やかになるのは、商売の観点ではありがたい現象。
観光地としては喜ぶべき事でもあるが、同時に困った問題も起きてくる。
例えば、食べ歩き(と言う名の安価な飲食)を楽しむべく購入した物は、食べ終わった時に容器がゴミになるのだが、それを投げ捨てる人が少なからず存在する。
加えて、食品が好みじゃなかった場合も、食べ残したまま放置されることがかなりあったりする。

EOS R5 RF16mm F2.8 STM
ISO1600 f/2.8 1/320s

公園にも簡易型のテーブルが置かれるようになったけど、それは歩道や店舗前で立ち食いされる事で起きるトラブルを避けるための苦肉策で、それを撮る事もまた定点観測によって見える変化の記録なのだろう。

EOS R5 RF16mm F2.8 STM
ISO1600 f/5.6 1/80s

そうやって定点観測として撮っていると、先行き不透明な時代らしく「占い店」の繁盛も良く見るようになった。
春節ウィークは人が集まっていたが、何故こんなにも歩きにくい?って思った疑問の答えがコレ。歩道を越えて本通りまで並ぶのを見たのは初めてで、思わず撮ってしまった1枚になる。

EOS R5 RF16mm F2.8 STM
ISO1600 f/2.8 1/100s

中華街にいくつかある映えスポットの一つ「台南小路」。
マスク無しで撮影する観光客を見ると、コロナ禍も一段落したという事がわかるけど、道行く人達の半数はまだマスク姿。
ただそれは、既に影響を感じている花粉への対策やインフルエンザへの対策なのかも知れない。

EOS R5 RF16mm F2.8 STM
ISO320 f/3.2 1/500s

「占い店」が増えた一つの要因としては、占いは「食品を売らない=仕入れに左右されない」という利点があるから、だろう。(費用は場所代と人件費のみ?)
事実、コロナ禍でも「占い店」は強かに頑張っていた事が、この2020年の記録に残っていた。

EOS R EF24mm F2.8 IS USM
ISO2000 f/4 1/100s

大切なものは、失って初めてわかる事が多い。
その大切なものを守る人もまた大切なのだが、その価値が見えにくいとおざなりにされてしまう事もまた多く、世代交代や時代の変化で社会は否応も無く変身していくのが常だ。
 
だからこそ、定点観測な街撮りは面白いし大切でもある。
データのデジタル化によって過去データの洗い直しも安易になって、最新の現像ソフトによって当時よりも遙かに上質な画像としてアウトプットもできてしまう。
 
だけど「何を撮るか?」という問題も常にあって、だからこそ目的を明確にする手段の一つとして「定点観測」という概念を取り入れるようになった。
 
同じ街、同じ場所、同じ人・・・等々、続けて撮る面白さは大きいと思っている。
そしてそれは、動画では見せたい物が薄められてしまうので、静止画としての尖った表現が良いと考えている。
 
そして今日もまた、カメラを持って決めている定点に向かうのだろう。

EOS R EF24mm F2.8 IS USM
ISO1600 f/2.8 1/500s

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