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ジムの売り上げは「幽霊会員」によって成り立っている、からの脱却

きのう、『がっちりマンデー!!』というTV番組で『分刻みビジネス』特集がされていて、なかなか面白いビジネスモデルが出てきていたのでメモ。


※ながら見で記憶が曖昧なところがあるので、細かいシステムや料金などについては間違っている可能性アリ。


まずは『ナップワンフィット』という、フィットネス用のシェアリングサービス。


上の『15分からジムに通える』というキャッチコピーにもあるように、このサービスの肝のひとつは『分単位の従量課金制』というシステムを採用していること。

つまり、1分15円という料金体系で、ジムを使うことができます。

その代わり、入会金や月額料金は不要、という手軽さがウリです。


あと、他の特徴としては、いろんな施設と提携していて(こっちの要素がシェアリングサービス)、単なるジムだけでなく、ボルダリングやトランポリンが置いてあるところなんかもあるそうです。

ただ、ぼく個人的には後者のシェアリングサービスの側面はけっこうどうでもよくて、前者の『分単位』というところに、最近いたるところで見かけるサブスクリプション(定額課金)サービスとの、連動のさせ方に関するヒントを感じました。


先述の通り、最近はいろんな分野でサブスクリプション化が進んでいますが、ジムはそんな単語が出てくる前から、月額会員制のシステムで運営されているところがほとんどだったはずです。

ただ、良くも悪くも(どちらかといえば悪い)、ジムの収益の大半は『幽霊会員』によって成り立っていると聞いたことがあります。

つまい、会員登録しているけど、全然ジムに通わない人ですね。

ジム側にとっては、施設を使われることなくお金だけくれる人なので、短期的に見ればものすごく『優良顧客』ですが、中長期的に見れば『お金払ってるけど結局全然行けてないから解約しよー』となってしまう、解約予備軍です。

それに、お金うんたらは一旦置いていて、ジム本来の役割として『健康促進』みたいなことがあるとするならば、幽霊会員にまったくその役割を果たせていないという点で、世に与えている価値はあるのか?という疑問もあります。


ただ、一言で『サブスクリプション』と言っても、オフラインで、実際に現場に足を運ばないといけないサブスクリプションって、意志の力を要求されるので、めちゃくちゃ継続のハードルが高いです。

毎月なにかが勝手に送られてくる、みたいな受け身のサービスだったり、オンライン上で完結するサブスクリプションは比較的継続しやすいかなという印象なんですが、ジムはオフラインなうえに、普段の生活の動線にないという、めちゃくちゃ継続のハードルが高い形態です。


例えば同じ、店舗型でも、これがカフェのサブスクリプションであれば、毎日の出勤の動線にあるので、継続のしやすさがあります。


だから、ジムは『いかに継続してもらえるか』ということに、とても腐心してきた業態なのではないでしょうか。

たとえば、ぼくも近所のジムの月額会員なのですが、一人登録すると、家族ならプラス3人まで料金が変わらずに会員になれます。

つまり、月額3,000円(これはこれでかなり安い)で4人までジムを使えるということです。


最初、これ同時に4人まで登録できることに、ジム側のメリットはなにがあるのかなあと不思議だったんですが、あるとき最初に会員になった母があんまりジムに行かなくなったときに気が付きました。

『そうか、これは継続率を上げるための同時登録なんだ!』と。


つまり、4人をひとまとまりで会員登録することによって、4人のうち誰か1人でもジムに熱心に通っていれば、4人とも会員であり続けるわけです。

だからたぶん、ジム側もいろいろなシュミレーションをしたうえでの『最大4人で3,000円』なんでしょうが、仮に4人マックスで会員登録になって4人とも熱心に通った場合の損失よりも、4人登録して誰か1人でも熱心に通ってくれて3,000円を払い続けれくれた利益ほうが、収益的にプラスになるということなんでしょうね。

ぼくはいま兵庫県の実家に住んでいるんですが、一人暮らしが多くて地価の高い東京などの都会ではなかなかできない、家族暮らしが多くて相対的に地価の安い地方ならではのビジネスモデルだなと、勝手に分析していました(本当にそういう意図があってしているかはわかりません)。


それで、ようやく冒頭の従量課金制の話に戻るんですが、これのすごいところって、『月額制にしたら絶対に続かなくて離脱してしまうジム初心者層』を取り込みやすいことにあります。

テレビでは、1分15円じゃなくて30円のジムが紹介されていたんですが(立地や施設の種類などによって分単位の料金が変わるらしいです)、仮に真面目に通った場合、1分30円、1回60分を週2回とすると、14,400円となります。

大手のジムの平均は月額1万円前後のところが多いと思うので、ぶっちゃけめっちゃ通う人にとって、この従量課金制がお得かって言われるとそうではないです。


でも逆に、週に1回とか、隔週で通うとか、1回30分だけみたいな人にとっては、無駄感がなくて良い料金体系です。

そして、ここが一番の肝だと思ったんですが、月の利用時間が一定を超えると、ジムのアプリが月額会員になることをオススメしてくれるそうです。

これなら、月額会員になったら離脱してしまう人には、まずは気軽に来てもらって、熱心にするようになれば月額制で思いっきり鍛えてもらうという、きれいなグラデーションができあがっています。


つい最近、『サブスクリプションの良さは、本気で「お客さんのために」と思えること』ということを書いたんですが、

ビジネスにおいて『いかに自分たちが損をせずに、お客さんにたくさんお金に払ってもらおう』という発想ではなく、『いかにお客さんのためになるか』という発想が、大事だなと思います。

そういう観点で、今回出てきたナップワンフィットのサービスは、各層のお客さんに適切なシステムを提供していて、ステキだなと思いました!

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