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webのサブスクリプションモデルを確立した日本人が当時外国人にバカにされた話を語る

世のweb業界は、どこを見てもサブスクリプションモデルが流行中。
サブスクリプションモデル、それはつまり利用の都度の課金ではなく、一般的には月額の課金モデルのことを指します。
月額数百円のwebサービスから、月1000円越えのapple musicやNetflix。さらには月あたり定額の飲食店まで流行の兆しを見せています。

サービス提供者側の視点では安定収益が見込める・休眠ユーザーからも収益が得られるという利点もあり、サブスクリプションを制する者がビジネスを制するのだ、というような、サブスクリプションモデルがまるで新しく「発明」されたかのような言説まで目にしますが、そういうビジネスモデルをwebの世界で最も早く普及させたのは日本なんだぞ!ということを、20年近く前の当時の外国人からの反応と共に「中の人」が語りたいと思い、筆をとりました。

「ガラケー」のサブスクリプション

大学卒業後、僕はとある携帯電話キャリアに新卒で入社しました。いわゆる三大キャリアの中の一つです。
元々webに興味があって学生の頃から自分でwebサービスを作っていたということもあり、新卒ですぐにコンテンツの部門に配属も可能という話に惹かれ、そのキャリアに入社を決めました(他のキャリアは、入社して最初の数年間は営業と言われお断りしました)。

さて、当時はi-modeやezweb、J-SKYといった、いわゆる「ガラケー」のインターネットサービスがまさに花開いたばかりの時代でした。
携帯電話の待ち受けに設定できるキャラクター壁紙をダウンロードできるだけのサイトで月額300円も取れるという、コンテンツ提供者側からしたら今では考えられない夢のような時代 です。
当時、それらの有料サイトを運営していたコンテンツプロバイダー/インフォメーションプロバイダーと呼ばれる企業の人たちは、今となっては ガラケー「バブル」 としか言いようのないこの世の春を謳歌していました。
3キャリアを合わせて、数千億円を超える巨大市場。この規模のサブスクリプションモデルがwebサービスの世界に現れたのは、日本が世界初、史上初だったのは間違いありません。

そこで僕は、新卒のぺーぺーながら、100社を超える自分の担当のコンテンツプロバイダーの人たちに対して、モバイルサイトのあるべき論、月額サイトでどうやってユーザーを増やすのか・繋ぎとめるのか、を、一丁前ぶって、試行錯誤しながらもコンサルっぽいことをしていたのでした。
それはまさに、今で言うところの「サブスクリプションモデル」の伝道師。

ちなみに余談ですが、今から20年近く前に
「基本のモデルは、入会者「数」は一定・退会「率」は一定。なので、いつか会員数の成長も鈍化し止まる。なので、それぞれの「数」と「率」をKPIとして改善PDCAを回すべき」
…ということを自分の担当コンテンツ群を分析しながら、自己流で理論構築して語っていたのですから、まあ、我ながらよくがんばっていたと思います。

外国人から見た日本市場

さて、そんな自分を取り巻く環境にも大きな変化が訪れます。
会社が当時世界最大の多国籍携帯電話事業会社に買収され、外資企業となりました。
役員はもちろん、直接の部長にも外国人、特にイギリス人が増えてきました。

彼らの興味は日本の携帯電話事業者の潤沢なキャッシュフローと、そしてコンテンツビジネスのノウハウでした。
当時彼らは海外でWAPと呼ばれるi-mode的なサービスを立ち上げようとしていたもののなかなかうまく行かず、唯一の成功国である日本がなぜ・どのようにしてコンテンツビジネスを成長させているのか、その垂直統合モデルに興味があったのです。

そして買収されて数ヶ月。一通りの理解を終えた当時の彼らが口々に言ったのは次のことでした。

「海外の人間は『合理的』だから月額コンテンツは使わない」
「おそらく都度課金のサービスしか使わない(なので日本はあまり参考にならないなぁ 笑)」
「日本でも都度課金の仕組みを導入しないとダメだよ!」

そう、ほぼ全ての外国人の上司がそう言い切っていたのです。

はぁ、そういうものか、と当時の僕は納得しました。
ですが、今なら言えます。あの時の彼らは、そして自分も、何も分かっていなかった。

後に、彼らの指摘もあり他のキャリアに先駆けて都度課金のモデルを導入。
ユーザー的には選択肢が増えるという意味では有益ですし短期的には売り上げ増にも繋がりましたが、長期的に見て正しかったのか、というと疑問が残る結果になったと今では思います。

欧米コンプレックスという病

それから20年近く経ったネット業界では、サブスクリプションモデルが熱い!!の大合唱。
そう、やはりあの時に僕らが推進してきた月額制というコンテンツビジネスは普通に成立したし、間違っていなかったのでした。

サービス提供者にとっては資産の切り売りという「焼畑」ではない継続的なビジネスをきちんと作れる環境であることが重要で、そのようなビジネス環境であれば適切に投資がなされるようになり、最終的には消費者の利益につながる。
そういうサイクルがきちんと回るためにはサブスクリプションというモデルはひとつの解であることは、当時、とっくに分かっていたことだったのだ、と、今では思います。

僕らは、外国人、特に欧米の人に言われるとめっぽう弱い

「まったく、日本人は合理性に欠ける*********(←自粛。好きな言葉を入れてください)だな!笑」
とバカにされたような、あの時の気持ちは今でも忘れられません。

そうです、僕は恨みを忘れないタイプなのです。今なら「****!!(←自粛。好きな言葉を入れてください)」と言い返せたでしょう。
でもその当時は、自分に知識も経験もなく、そしてなにより自信がなかったのだと思います。

もうすぐ平成も終わります。

平成の30年間を通じてインターネットは本格的に普及し、インフラとなり、そしてGAFA (Google, Amazon, Facebook, Apple) などのアメリカ発のモンスター企業群も生まれ、テクノロジーを取り巻く世界の景色は大きく変わってきました。
それでも、僕たち日本人は、かつてひとつの時代をリードした

自信を持とう。
僕たちは、今のモバイルインターネットの最前線を開拓し、そして駆け抜けてきたんだ、と。
次の時代は、いや、次の時代「も」、謙虚さと自信を持ってサービスやビジネスを作っていこう。

そんなことを考えながら、インターネットがもたらす新しい世界の地平を切り拓くため、今日も僕はサービスを作っていくのでした。

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