『決戦は日曜日』感想 ~ 2回目観たぞ※ネタバレしかないです

主人公は窪田正孝演じる谷村勉だが、のっけから宮沢りえに圧倒される。代議士である父親が倒れ後継者として担ぎ上げられた娘の有美(宮沢)、代議士の周辺で利益を得てきた者たちの都合だけで決まったことだが、当の本人は知る由もない。病床の父親が希望したという理由を信じ、使命感と正体不明の自信に満ち溢れた彼女の言動はインパクトだけがやたらと強く空気読解力ゼロ、一言でまとめるならウザイ(笑)。 初対面を果たした後の後援会事務所での秘書たちの会話で、候補者と意識の隔たりが分かる導入部分である。

自信満々で臨んだ会見で繰り返される読み間違い、記者から問われた少子化問題についての解答のヤバさ。あれ?どこかで聞いたことなかったっけ(笑)と思いながら見ているこちらもハラハラしているのに、有美自身はどこ吹く風。早速記事にされネットで叩かれても「逆境に立ち向かいましょう」とは、ピントが外れている。このままズレた候補者と振り回される秘書たちの話にすれば、ただのコメディー映画。すったもんだを繰り返しているうちに視点がずらされていく。

衆議院議員であった父親の政治スキャンダルが発覚、事務所一丸となって事実を隠蔽することとなる。何も知らなかった有美に対して、こういうものだと全てをのみ込む秘書の面々。選挙のためなら無実の人間を犯人に仕立て上げてでも問題を収束させる方法に疑問を呈する彼女の姿勢に、まともじゃないのは周囲の方だったのかと目が覚める瞬間だ。因みにこの時の音尾琢真の演技、窪田くんがインタビューで「あの状況でああいう顔をするんだと驚いた」と言っていたので注目していたが、実際見てなるほどと唸った。長年その世界に身を置いてきた男のいろんなものをのみ込んできた目をしていた。

正義の訴えは退けられ、秘書たちの言うがままの会見を行った有美は覇気を失う。一方、谷村は病床の代議士に言われた言葉「娘の幸せを一番に考えるべき」に背中を押されるように選挙落選を有美本人に提案する。何もしなくても当選が確約されている出来レースを覆すべく好感度を下げるために奮闘するのだが…。

結果は、当選。皮肉なことだが、正論を通すために行った全てのことは偽りでしかなかった。嘘では何も覆らないという、割と真っ当な結論なのが可笑しい。

このままでは新人代議士・川島有美は関わりのある全ての地方議員や支援者の操り人形になってしまう。真っ当な議員になることが有美の幸せかもしれない、谷村は彼らに反旗を翻すことを提案し二人は再び結託する。

決戦の日曜日は戦いの始まりでもあった。

当方最推し俳優の赤楚衛二が三番手としてキャスティングされているが、この映画は紛れもなく窪田正孝と宮沢りえの作品。他の俳優は皆各々魅力的で存在感が光っている。秘書軍団は揃って三番手だというのが私の印象。

さらに、私的最優秀助演賞は後援会のお三方(異論は受け付けませんw)。有美の奔放さに激昂し後援会撤退を宣言したのに、あんな中途半端な謝罪をニコニコして受け入れるおじ様たち。結局好きなのね、選挙が(笑)。

この映画、終始笑わせてもらえると期待したら大間違い。途中から空恐ろしくなり笑うことも出来ず、しかし最後は谷村と有美の行く末を思い微笑みながら見守ることになる。よく出来た傑作。

あとひとつ、これだけは書いておきたい!オープニングもそうであるが、エンディングもシンプルで分かりやすい。つまり演者のみならず制作スタッフや提供などがちゃんと読めるのだ。人によってはエンディング中に退室するようだが、私は最後まで見る派。寧ろしっかり読む派なので、最近の字が小さく流れが速いエンディングに辟易していた。読みやすいエンディングは制作スタッフを尊重している証。坂下雄一郎監督、推せる。

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