#4 カバー版「Beatles For Sale」ができるまで
Beatles For Sale(1964)
No Reply / Memoryhouse(2021)
人気曲で、カバーも多そう。実際にいくつかカバー曲を聴いたことがあるので、迷いそうだ……。
その中で個性的でいいなと思ったのは「Memoryhouse」のバージョン。こんなNo Replyもまたいいかも。カバーの数はあまり多くなかった。ちょっと意外。
ちょっとスローだが、その分また哀愁が増している。
Memoryhouseは、2009年にカナダで結成された「インディードリームポップミュージックグループ」とのこと。インディードリームポップミュージック???なにそれ。
この「Mania」というアルバムで、他にもビートルズのカバーを発表している。
個人的にビビったのは、Anthologyに入っている未発表曲「If You've Got Trouble」のカバーがあったこと。
うむ、確かに「Mania」だ。
I'm A Loser / Marianne Faithfull(1965)
ジョン・レノンのあまり話題に上らないマイナーソングだけど、ちゃんとジョンっぽさもキャッチーさもある曲というのは、カバーされがち。この曲もきっとカバーが多い。
実際に調べてみると、やはりいいカバーが多くあった。どれをプレイリストに入れるか迷うけど、記事では全部紹介する。
まずは「Trond Granlund」のバージョン。
スローでより「負け犬感」が漂っている。俯きながら歩いている感じがして、いい。ハーモニカの音も「Loser感」ある。
負け犬っぽい、こんな「まあ……くよくよすんなよ」的なI'm A Loserも面白いと思ったけど。まぁ、この曲はジョンみたいに明るい曲調なところがいいよね。
あと「面白いな〜」と思ったのは、「Owe Almgren & Sisters of Invention」のバージョン。
これはどうだろう。負け犬になった翌日に、家で引きこもっている感じかな。落ち込みすぎて「無」になって、家で横になりすぎたときの浮遊感かな。
でも、やっぱりこの曲の良さは「謎の明るさ」な気がするから、明るい感じだけど、ビートルズとも違う、みたいなカバーを探したところ、ありました。「Marianne Faithfull」のカバー。
なんか良くないですか、このカバー。1965年の音源だそうです。ビートルズの空気感があるなぁ、と。
Marianne Faithfullは、イギリス生まれのポップシンガー。調べてみると、かつては60年代にミック・ジャガーと5年ほど交際していたそうだ。マジか。しかも、ドラッグに手を出すMarianne Faithfullを見かねて、ミックはドラッグをやめさせようとするけど、うまくいかずに破局したそうな。この音源からは到底想像できない、破滅的な60年代を過ごしている。
代表曲は「As Tears Go By」で、この曲はローリングストーンズから提供された楽曲だ。
若い頃、めっちゃかわいい。こんな人知らなかった。まさか「I'm A Loser」で出会うなんて。
Baby's In Black / Flynnville Train(2007)
ビートルズのライブで定番だった楽曲。小さい頃、なぜかこの曲が大好きだった。なんで好きだったんだろう。
まず「おや?」と思ったのは、サルサ歌手「Rubén Blades」のバージョン。
サルサって、こんな感じなのか。時折入る「オ〜オ!」みたいなのが面白い。
また、シンプルにかっこいいなと思ったのはトロントのロックバンド「Big Sugar」のカバー。
原曲よりもかなりヘビーでかっこいい。
ただ、Baby’s in Blackのカバー曲を調べてみて思ったが、結構カントリー風のカバーが多い。たしかに、なんか合うのよ。アメリカのカントリーロックバンド「Flynnville Train」のバージョンを聴いて、確信に変わった。
こっちが原曲なんじゃないかと思うくらいの完成度。めっちゃカントリーやん、この曲。このギターリフがカントリー調なのか。考えたこともなかったなぁ……。
Rock And Roll Music / Manic Street Preachers(2003)
この曲はチャック・ベリーのカバー曲。スタンダードだし、なかなかビートルズのカバーとして判定するのが難しそう。もうこれ、わからないよね。直感でかっこいいやつを選ぼう。
直感でいちばんいいなと思ったのはイギリスのロックバンド「Manic Street Preachers」のバージョン。
後半のピアノのフレーズがチャック・ベリーではなく、ビートルズ版のっぽいんで、これはビートルズの方のカバーのカバーではないかと……。どうだろう。
Manic Street Preachersというバンド、まったく知らなかったが、全英1位を獲得したこともある著名なバンドだ。「Motorcycle Emptiness」のミュージックビデオは、約1500万回再生されている。
「If You Tolerate This Your Children Will Be Next」のミュージックビデオも1450万回を超える再生数だった。
ギタリストが失踪し、失踪した13年後に死亡宣告となるなど、トラブルに見舞われつつも、現在でも活動を継続している。
I'll Follow The Sun / Judy Collins(2007)
ポールが16歳のころに書いたと言われている楽曲。16歳がこんな曲作れるって本当かよ。盛ってるんじゃないのか。この曲もカバーは多そう。
その中であまりの美しさに心を奪われたのが「Judy Collins」のバージョン。
力を抜いて歌っている感じが、この曲ととても合っていて美しい。いいカバーだ。Judy Collinsは、ポールより年上で現在も活動中のアメリカのシンガーソングライター。
Judy Collinsの最初のビートルズのカバーは「In My Life」。
なんと今年2022年にもアルバムをリリース。レコーディングは2016年だったからっぽいが、現在でも変わらぬ歌声を披露し続けているようだ。レジェンド……。
Mr. Moonlight / チャッピー吉井(The Parrots)(2014)
こちらもカバー曲。この曲は冒頭のジョンのシャウトが重要なので、少なくともイントロが「ミスターーーーーあああーあーあームンラー」で始まってるやつを選ぼう。
その中で一番いいなと思ったのは、The Parrotsのチャッピー吉井さんのバージョン。
やっぱり冒頭のシャウトに並々ならぬこだわりが感じられる。ビートルズ愛が、ここから伝わる。
I'll Be Backのときも紹介した、「Hula Meets The Beatles」というシリーズの第2弾に収録されているバージョン。
チャッピー吉井さんはThe Parrotsという、日本でもっとも有名なビートルズトリビュートバンドで活躍されていた。
現在、チャッピー吉井さんは亡くなられており、新たなジョン役が加入して活動を続けている。新たなジョンもお上手。
Kansas City/Hey, Hey, Hey, Hey / The Coverbeats(2010)
こちらもカバー曲。カバーのカバーを探すのは、なかなか大変。このアルバム、カバーが多いんだよな……。
Kansas Cityのいいカバーがなかなか見つからない……。その中でひときわ目立つのが、後年ポールがカバーしたバージョン。
これがめっちゃ良くて、なかなかこれに匹敵するようなものが見つからない。もういい??これはこれでいい?
……でもなんかやだな。こういうときは、ビートルズトリビュートバンドかな。
「The Coverbeats」というバンドの音源を発見。いろいろ調べたが「再現性の高さで大きな評価を得ているビートルズ・カヴァーの最高峰」という、なんとも言えないCD紹介文しか見つらなかった。そんなに再現性が高いなら、原曲を聴けよ、とも思ってしまう。
正直、再現性はそんなに高いわけではなく、ボーカルはかなりクセがある。なんだか、海外のパブで聞いているような臨場感がある。
Eight Days a Week / 立花ハジメとLowPowers(1997)
出たぞ、超有名曲。きっとカバーも多いので、直感で選ぼうと思う。あまり原曲とまるっきり同じ感じだと面白くないな。違うのに、ビートルズっぽいみたいなのが面白い。
これはこれは、さまざまなジャンルのカバーがありました。まずは「The Punkles」のパンク風。
さらに「Ringmasters」のアカペラ。
そして「Yellow Dubmarine」のレゲエ風。
これ、けっこうハマってて、いいな。ビートルズファンにはおなじみの「Billy Preston」のバージョンもありました。
でも、せっかくこんなにあるのなら。ぼくはもっと、わけわかんないやつを選びたい。
そして、なんなのかよくわからない「立花ハジメとLowPowers」。なんだこれは。でもなんかいい。
このバージョン、中毒性がある。
こんなnoteを書いておきながら、音楽はフンフン聴くだけで、ぼくには知識がない。立花ハジメさんのことも知らず、調べてみた。もともとテクノポップバンド「プラスチックス」のメンバーで、ワールドツアーも数回行ったことがあるらしい。すごい人だった。
Words of Love / NW8(2010)
うわああああ、カバー曲カバー曲。カバー曲は探すのが大変。しかも、けっこうこの曲は原曲に忠実にカバーしている。これもビートルズトリビュートバンドに頼ることになりそう。
そんな中で「まさしくビートルズ版のカバー」と認定でき、いいかもと思ったのが「NW8」のバージョン。
詳細は不明だが、この「REMENBER THE BEATLES」という「いかにも」なタイトルのカバーアルバムを1枚だけ発表しており、他にもカバー曲が存在する。
ただ、詳細が不明すぎて、このアルバムの他の楽曲が同じバンドなのかも疑わしい。
Honey Don't / T.Rex(2017)
この曲は、カール・パーキンスのカバー。これも難しくなるぞ〜、と思いきや、検索してすぐかっこいいのを見つけた。
なんと、あの「T.Rex」のバージョンである。こんなの知らなかった。この音源、発表は2017年だがもちろんレコーディングは70年代とかなのだろう。ファンクラブの会報の付録かなんかだったのかな?という記述を見つけたが、なんとも言えない。わからない。
Every Little Thing / Litto Nebbia(2008)
マニアックな楽曲で、あまり話題に上らない気がする。カバーも少ないんじゃないかと思う。そして、この曲名……。また、カバーを見つけるのが難しそうだ。
なかなかカバーが見つからない中、トリビュートバンドに頼ろうとしたこともあったが、ようやくいいバージョンが見つかった。
「Litto Nebbia」という、アルゼンチンのシンガーソングライターのバージョン。まったく知らなかったのだが、アルゼンチンロックの創始者として名高いそうだ。アルゼンチンのレジェンドらしい。たまにこういう人が見つかるから面白い。
他にも数々のビートルズカバーを発表しているので、興味があればぜひ聞いてみてほしい。アルゼンチンロックって、どんな感じなのかな……。
I Don't Want To Spoil the Party / Rosanne Cash(1989)
オリジナル楽曲。ファンの人気が高く、ミュージシャン人気も高いので、カバー楽曲は多そう。
やはり……。なかなかいっぱいあるわ…。
聞いてみると、けっこうそのまんまカバーしている感じのものが多くて選びにくい。ちょっとカントリーっぽいのが目立つかな?
そのカントリーっぽい中でも気になったのが「Rosannne Cash」のバージョン。
Rosanne Cashはアメリカのシンガーソングライター。カントリーミュージックを得意としているものの、さまざまなジャンルをこなせるのだとか。
このバージョンはアメリカのカントリーチャートで1位を記録したのだとか。いいもんなぁ。
What You're Doing / Unknown(2007)
これもあまりファンの中で存在感が……。ちょっと弱いかな。これをカバーするアーティストって、いるんだろうか。あと曲名も、めっち同じ曲ありそう……。
そんな中見つかったのが、「The Beatles Chill Out」という謎のコンピレーション盤。最近流行っているという「チルい」ビートルズが聴けるわけです。
他にも「チルい」ビートルズが、いろいろ集まっていました。
それぞれの楽曲を誰が演奏しているのかは「Various Artists」という文字に隠れてわかります。アルバムアーティストが「Various Artists」はわかるけど、各曲が「Various Aritsts」ってどういうことなの。
Everybody's Trying To Be My Baby / We Killed Vegas(2013)
こちらもカバー曲。カバーのカバーを探すのは大変なんだよね……。ともかく、これも探す。
こちらもスタンダードナンバーなので、なかなか難しかったが、こんなカバーはどうだろう。
「We Killed Vegas」は2013年のみしか活動した記録が見られない、詳細不明のロックバンド。ちょっとガレージロックのような雰囲気もあって、個人的には好み。
1本だけ「LA」というミュージックビデオが公式YouTubeにアップされていた。かっこいい。
ボーカルの声がいいな〜。ぼくが好きだった「The Strypes」に通ずるものがある。
さて、ようやく「Beatles For Sale」ができあがった。山場を越えた気分。
このアルバムはカバーが多いので大変だった。もう執筆を始めて、4日目。実は義母と義弟が我が家に泊まりに来ていたのだ。家族みんなで二人で移動する間も、ぼくはビートルズのカバー曲を聞いていた。もうすぐゴールデンウィークが終わってしまう。まだまだ、ビートルズはこれから中期……。
続き↓
サポートをいただけた場合は、今後の取材活動のために使用させていただきます。