アイルランド旅行記①羽田~ダブリン

(この記事はダブリンにたどり着くところまでです><)


0.なんでアイルランド?


 2年前の秋、新婚旅行でアイルランドに行った。もともと私も夫も結婚というイベントにはドライに構えていて、新婚旅行は国内でさっと済ませればいいと考えていた。けれど我々はまた流されやすいたちでもあり、色々調べていくうちに「まあせっかくだし……」が積み重なって、結局、英語の喋れない私たちにしては大掛かりな旅行になってしまった。

 アイルランドを選んだのは、夫の好きな小説家、ジェイムズ・ジョイスの故郷だというのが一番の理由だ。代表作『ユリシーズ』も『ダブリンの市民』も、アイルランドの首都ダブリンが舞台となっている。私はというと、ひつじの群れが見られるところならどこでもよかった。ひつじは今でも好きな動物だが、当時なぜそんなにひつじにこだわっていたのか、今となっては正直よくわからない。

 結果からいうと、アイルランドは素晴らしい国で、最高の思い出になった。景色はきれいだし、ご飯もおいしい。日本ではあまり馴染みのない国のためか、アイルランドに行くこと告げても、「どこ?」とか、「なんで?」とか、「イギリスとは違うの?」と言われてしまうことが多かったのだけれど、もし海外旅行を検討している人がいたら、ぜひとも候補に加えてほしい! と心から思う。

 ちなみに、旅行の前、私たちは夫の上司からあるミッションを課せられていた。それは、
「ムーミンを捕まえてきてね」
 というものだ。ムーミン谷はみんなの心の中にあるらしい、というのは置いておいて、ムーミンシリーズははフィンランドの作品である。夫がそのことをやんわり告げると、
「じゃ、スナフキンを捕まえてきて」
 と上司は続けたという。私たちは悩んだ。しかし、アイルランドは魔法と妖精の国である。もしかしたらムーミントロールやスナフキンも生息しているかもしれない……。まあ、いなかったのだが……。

 
1.往路のトラブル、ダブリン到着 


 行きの飛行機は深夜発だったので、仕事が終わってからそのまま空港に向かった。大人になってから初めて行く海外におびえすぎている私を見かねて、「旅行で使える英語フレーズ10選」みたいなページを印刷してくれた上司には今でも感謝している。羽田の国際線ターミナルで夫と合流し、緊張半分、楽しみ半分といった感じで飛行機に搭乗した。日本からアイルランドには直行便がないため、カタールのドーハ空港で乗り継ぎをする予定だった。(一番楽なのはイギリスで乗り継ぐルートらしい)


 私たちの座席の周りにはツアーの団体客が座っていて、比較的年配の方々がわいわいとにぎやかに話していた。座席は3列掛けで、私たちも隣に座ったおばちゃんとあいさつした。アイルランドに新婚旅行へ行くことを告げると、おばちゃんは感動のあまり周囲のツアー客全員に、私たちが新婚夫婦であることを教えてしまった。私たちは自分たちの話をするのを少し遠慮することにした。おばちゃんにツアーの行き先を尋ねると、フィンランドだということだった。

 おばちゃんの話をかわしながら待っていたのだが、一向に飛行機が動く気配がない。周りも少しざわざわしている。30分ほど経ったところでアナウンスがかかり、機材トラブルだとわかった。結果、出発は4時間遅れた。その間、おばちゃんは添乗員が通りがかるたびに果敢に日本語で話しかけ、小さな袋詰めのお菓子を何個ももらって、私たちにも分けてくれた。


 飛行機が無事に出発してからはほとんど寝てしまっていたのであまり覚えていないのだが、いま調べたら東京―ドーハは11時間かかるらしい。長距離フライトに耐えられるか心配だったが、意外と大丈夫だった。
 もうそろそろドーハに到着しようかという頃、おばちゃんは添乗員を呼び、私たちの方を指してハネムーナー! と叫んだ。苦笑いでやり過ごしていると、しばらくして、「Honeymoon」とチョコレートでデコレーションされたフルーツの盛り合わせが出てきて、笑ってしまった。添乗員さん、ありがとう。

 ドーハに着くと、行き先の国を書いた札を掲げた空港の職員がずらっと並んでいた。飛行機が遅れたので、振替便の案内だった。アイルランドに行くのは私たちしかおらず、英語もほとんどわからないので理解するのにかなり苦労した。振替のチケットは2枚渡されており、注意深く読んでやっと、いったんドイツのベルリン空港に降りて、そこからアイルランドに向かうことになったことがわかった。

 せっかくドイツに寄ることになったのだから、どうせならドイツらしいお土産でも見て回ろうと言っていたのだが、乗り継ぎ時間が短かったのと、雰囲気に気圧されて何もできなかったのが悔やまれる。しかしそこから先は大きなトラブルもなく、現地時間の夜11時ごろに無事ダブリン空港に到着した。

辺りは真っ暗だったが、レンガ造りの建物や石畳だけで興奮してしまった。空港にあった電子公告板に、ジェイムズ・ジョイスの作品にちなんだ記念日「ブルームスデー」についての広告も流れていて、文化を大事にしている国なんだろうなと思えたのも嬉しかった。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

ありがとうございます❣️
9

千葉県出身、札幌在住。隔週で短い小説を載せていくつもりです。家族や生活にまつわる話を書くのが好きです。2014年上期文學界新人賞最終候補。 むかし書いたもの、長いものはこちらに→https://www.pixiv.net/member.php?id=30380641
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。