ブラック労働が何故アカンか


 すごく基本的なことを書きますけども。

 ブラック労働、ダメですよ。色んな事情があって一定期間ブラックになることはあるでしょう。なんか予想外の事故が起きて収拾が大変だとか、人事異動に関連して業務が滞ってしまい苦しいとか、いろいろ。でも長期的には「うむ、この点が良くないので、正していかねば」と修正していくのが組織運営ってもんでして。弱い軍隊は兵隊使い捨て、強い軍隊は補給も士気もバッチリである。

 さて、さきほど「つらさ」の項で書いたように、労働者っつーのは色んな事情で「つらさ」に晒されていると。名門企業の場合は重圧や脱落への恐怖が強く、そうでない企業では上がり目が見えないというか「こんな苦労して、給料も安いクソ中小企業で出世も出来ないのか」な絶望感が強い。


<悪貨は良貨を駆逐する>

 あまりにも日本全国でブラック労働が放置されているため、我々は誰しも感覚が麻痺しちゃってる部分があるのですが、基本、サビ残とかって駄目なのよ?そんなの取り締まってたらビジネス成立しないから仕方なく誰もが目をつぶってるけど、それ、違法だからね?

 というのもですね、こうした違法な労働ダンピングが蔓延すると、おかしな現象が起きるわけです。「ウチは月給20万で社員を160時間働かせてます」ってA社と「ウチは月給20万で社員を480時間働かせてます」ってB社が競争すると、後者の方が有利になってしまう、つまり違法行為をした会社が勝ってしまうわけです。そうすっとC社は「じゃあウチは550時間働かせよう。そうしないと勝てない」ってことになりますわな?

 これは外食産業とかで聴く話でしょ。どこも店員の人数を限界まで削り、労働条件を地獄のようにきつくして、価格を下げて客を呼び利益を増やす。そうしないと勝てない、と。一斉に規制すりゃいいのよ、ぜんぶ。

 こうした不当なコストカット(本来、もっと人を増やしたり充分な残業代を払ったりすべきだ)を前提にした競争ってのは、「工場の安全対策?カネかかって赤字になっちゃうから、やってません」「職場の防火設備なんて要らんでしょ、コスト削れ」と、どんどん悪化して行っちゃうので原則として駄目よ、の姿勢を堅守しなければならない。その上で「まあ、年度末だけは仕方ない」とか「今週は鈴木くんが休みだからみんなでカバーしよう」とか、例外的に多少ある、といった程度のアレな。


<人間は企業の所有物ではない>

 で、こういう「脱法企業が勝ってしまう現象→さらなる脱法行為」という問題に加えて、その社員はお前の会社の持ち物じゃねえよ問題という物がある。御社の社員であるのは事実だが、それ以前に、この社会の構成員なのだ。その社員が育つまで我々の社会がいくら教育に投資したか、その社員が幼少時に病気になったとき我々の社会がいくら医療費を負担したか、その社員が良き市民として健やかに生きつづけることで我々の社会にどれだけのメリットをもたらしたか。畑を耕し、種をまき、肥料を与えて雑草をとり、一生懸命育んだのだ。果実を収穫し再生産を行うのは良いが、畑ごと潰すバカがどこにいる。

 別に社会にメリットなんかもたらさなくても良いし、主語を「社会」にすべきではないし、投資効率などで話すべき内容ではない。それは分かっているが、つまるところ、「人道など一切考慮せず、純粋に功利主義的に見ても、勿体ない」「お前、そいつが社会にもたらすはずだった利益、肩代わりできんのか」って観点から見た、社会の富が失われる現象への警告である。

 目の前にダルビッシュがいたとしましょう。「おいダル、30日間連続で投げろ」とバカな監督が命令し、ダルが怪我をして投げられなくなる。そしたら「ふざけんな、おまえのチームの短期的な利益の為に、ダル潰してんじゃねえよ!」と思うでしょうよ。思いませんか。夢の中へ行ってみたいと思いませんか。

 つまり「良質な企業を駆逐してしまう違法労働」「違法労働が勝つと、更に悪質な違法労働に繋がる悪循環」「社会の富を一私企業が潰す問題」などがありまして、これはアカンあやろと。社会悪だろと。


<サービス業の過当競争>

 これねぇ、日本の産業構造が変化した点にも一因がありまして、かつて製造業でブイブイ言わせてたのはですね、豊かなアメリカやヨーロッパに自動車や家電を売れば儲かるよね、負けないよう頑張ろうねって話だったわけですよ。しかし今や、ベトナムに電子レンジを5000円で売ったりカンボジアに炊飯器を3000円で売るよりも、豊かな日本人女性の髪を切って1万5000円受け取る方が儲かるわけです。当然、サービス業が主力になる。日本は外国人労働者受け入れの規制が厳しいので、日本人労働者が日本人消費者にサービスを提供、日本のライバル企業と競争する羽目になる。

 消費者がメチャクチャ金持ちならともかく、みんなハードワークなのに給料は抑制されてっから安くないとサービス購入できず、「ウチはカット1万2000円です!」「じゃあウチは8000円!」「えーい、じゃあ1000円でやってやる!」と下向きの競争が始まっていくわけですねー。

 で、クソ低賃金&長時間労働で苦しむ美容師さんが、子供を保育所に預け、高齢の両親を介護施設に預ける。低賃金なので月50万円の利用料は払えず5万円で頼むしかない。そしたら保育所や介護施設で働いてる人の給料も減り、お金の無い保育士さんや介護士さんは美容室に多額のお金を掛けられないから安い料金を要求し、美容師はさらなる低収入に苦しみ……なんだ、この地獄は(白目


<頑張るほどに買い叩かれる>

 この局面において、一つの真理が見えてくる。

 競争で勝とうとするあまり、安い賃金で労働量を増やすと、労働者が真面目に頑張れば頑張るほど労働単価が下がっていくんですよ。「そんだけ働いて時給1000円?ハッ、お断りです」と言わないと「もっと働きます、時給200円でもいいです」の世界に。そうなると、その労働者が消費者になった時、別のサービスに対して「そんなの買えない!もっと安く!」って要求せざるを得なくなる。どんどん経済が縮小していきますぜ兄弟!

 ま、だから、どっかで「下限」を決めとかないといけなくて、それが最低賃金とか労働基準法だったりするんですけども、ミクロで見ると「世の中の景気は良くなって、多くの消費者が豊かさにもとづき活発に消費してほしいが、ウチの社員の給料をあげたり労働量を減らしたりするとウチの会社だけが地獄」って状態なので、誰も動けない。


 ブラック労働は社会悪、なんとかせねばならぬ。

 これを自由競争の名のもとに放置するのは、不当競争で遵法企業を駆逐し、社会の富たる人材を奪い、経済を縮小させる最悪の状態だ。


 「働きません、勝つまでは」の心構えが必要である。

 ただ、これを真に受けて、あなたがストとか激烈な賃上げ交渉やっちゃって揉めまくってクビになったりしても責任はとれないから空気読みながらほどほどにして欲しいっていうか、なにか深刻な事態を招いちゃった場合には「ネットの変なブログ本気にしてやがんのm9(^Д^)プギャーwwwwww」ってエントリ書くからよろしく。

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