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知って、届けて、思い合う~やさしい医療がひらく未来~⑥最終回 #やさしい医療情報


先日、こちらのイベントに行ってきました。

イベント概要

 もともと江戸時代にですね、東海道の二番目の宿場町である川崎宿(一番目は品川宿)って物がありまして。あの辺に土地勘のある人はわかると思うんですけど、六郷土手から川崎に行く途中に川があるじゃないすか?江戸時代、防衛上の理由で、あそこには橋を掛けずに渡し船で往来してたもんで、雨が降って増水した場合なんかは宿場町で長逗留することになったんですな。そうでなくとも宿場町は旅の人(商用含む)にお金を落としてもらってナンボなので、宿場町ある所、酒と遊興施設あり。といっても、おおっぴらに着飾って堂々とウッフンアッハンできるのは吉原など特権的な地区だけだったので、宿場町は「飯盛女」っちゅー存在がいたのです。食い物を出したり酒を出したり、まー今でいうところのキャバクラみたいな感じですかねえ、あとは交渉次第でウンヌンという仕組みで、幕府も藩も「宿場町は、まあ仕方ねえや…そういう商売だもんな…」と黙認しておりまして、ま、川崎というのはそういう場所だったわけです。現在、堀之内という「何故か、その地域だけ営業許可が下りている大人のネオン街」があり、その真横が競馬場で、その隣が競輪場(営業不振で閉鎖)になってますね?あの辺です。この金山神社というのも、大体そのあたり(お大師さまと同じ駅)にあるんですが、歴史的には、江戸時代の娼婦達が、商売繁盛やら性病除けやらの願掛けを行った「地べた祭」ってのに端を発するらしいのですな。地べたに座って飲み食いしながら願掛けをするという非常に素朴なお祭りなんですが、まあ、とにかく金山神社には性信仰が細々と伝わっていたと。それをですね、昭和50年代に当時の宮司が「かなまら講」として派手にはじめたところ、翌年から一気に祭りとして拡大し、男根神輿や仮装行列など非常にアグレッシブな祭りになったという経緯があります。とくに有名なのがピンク色の御神体を掲げて街を練り歩く「エリザベス神輿」なんですが、これ、世界を30年ぐらい先取りしてて凄いんですよ。これを寄贈したのは、川崎とは無関係の浅草橋にある「エリザベス会館」という女装クラブでして、毎年、女装した男性たちが、でっかい御神体を担いで歩くのです。今から30年以上前にはじまったコレ、当時はおそらく風当たりも強かったんじゃないかと思うしますが、宮司さんが「女装した人らが練り歩くことに何の問題があるの?」と承認したらしく、毎年、エリザベス会館で働く方々が、ご神体を担いで歩くのです。誰もを受け入れるおおらかな気風の中、大根削り(大根を御神体のように削り奉納するコンテスト)や、非常に精巧な飴細工(職人さんに注文すると「男ー?女―?」と聞かれ、相応のフォルムの飴細工が買える)の屋台、祭りの日だけ並ぶ日本酒「金玉(きんぎょく)」「万古(ばんこ)」の試飲販売など色々と話題になり、はるか海外にもウタマーロフェスティバルと評判になり、いまや来場客の半数が外国人で、近隣の商店も祭りとコラボしたメニュー(子宝蕎麦、とか)を出して商売繁盛にあやかるなど、一大イベントとなっています。そんな、おおらかな気風で大人気のお祭りなんですが、外国人のブログを見ると「東洋のアニミズムにおいては、生命の根源であり豊穣と多産の暗示であるリンガ信仰とヨニ信仰が広く見られる。この神社も、万物に霊魂が宿るとするSHINTOに基づき、民俗学的に大きな価値のある祭祀を」とか書いてるんですよ。ウソつけ、おめえ現地でゲラゲラ笑って楽しんでたじゃねえか、とか言ってはいけません。そんな書き方では、アフィリエイト広告収入が経たれてしまいます。あくまでも真面目な観光情報として発信しなければ、カネにならないのです。そう、彼らの収入源は、広告だ。


ということでね、広告収入目当てのWeb発信で、色々と実情にそぐわない情報が出てしまう、という一例でしたけども、この例は「むしろ逆に学術的になってしまった」という話なので、まあ良い例だと思うんです。医療情報の場合は反対で、いい加減に煽れば煽るほどカネになっちゃう面もあるのが困りもの。

非常にシームレスに、スムーズかつ順当に話が流れていく構成、我ながら天才じゃないかと思う次第ですけども、私、別に、かなまら祭りに行ったわけじゃありません。いや、行きましたけど、先日行ったのは渋谷で開催されたこちらのイベントです。

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これまで書いた物。

知って、届けて、思い合う~やさしい医療がひらく未来~①

知って、届けて、思い合う~やさしい医療がひらく未来~②

知って、届けて、思い合う~やさしい医療がひらく未来~③

知って、届けて、思い合う~やさしい医療がひらく未来~④

知って、届けて、思い合う~やさしい医療がひらく未来~ 番外編

福島県の農産物関連デマより、ニセ医療情報は厄介 番外編2

知って、届けて、思い合う~やさしい医療がひらく未来~⑤

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これまでの話を簡単にまとめると
・マスメディア通じずともWebで情報を得られる時代に。
・逆に言えばデマも広まりやすくなった
・詐欺的な医療デマで人が死ぬ。正しい情報を届けなければ。
・SEO対策など戦略を練る必要あり
・どんなに対策してもまだ甘い、マスメディアに比べると弱い
・だが医療者自身が現場の情報に血肉をつけて発信するのは重要
・この問題に気づいてない他の医療者に伝えるためにも重要
・ナラティブな伝え方は有効

などなど。


それらを受けて、ここからグループセッション2。
大須賀先生、ほむほむ先生、たられば氏、朝日新聞withnews水野氏。メディアの中の人(たられば氏は編集犬)が2人加わっているのがポイントである。テーマは、医療の専門家とメディアのかかわり方について。

「新聞で医療記事担当していたが、難しい。内容を理解する難しさもあるが、その先に、いい加減なことを書かず正確に書こうとすると読者にとっても難解になる面も」

「メディアに求めることは、まず『正しい内容を書くこと』。専門家に聞いてくれればいいが、しかし医者も研究者もメディアも忙しいので中身の確認などで連携すること、チェックしていく機能の運用が難しい現状がある」

「ブログで医療記事1000本ほど書いたが、あれも一行書くのに文献を猛烈に調べなければならない」

「1人ではできない。専門家とメディアが組まないと。専門家ですら自分の専門外は困難だし、1分野ですら完全に把握できるかと言うと…」


 うん、まあそうですな。本当は手弁当ではなく、カネと人材を存分に用意して、組織的にフル稼働させていく必要があるのだ。しかし、それ言ってても何も進まないので、神風が吹くまでは徒手空拳で元寇に立ち向かわなければならぬ。ちなみに、ほむほむ先生は
「読者に伝わるかどうかの指標として、まず家族に読ませてみる。それで伝わるかどうか…しかし最近、家族が詳しくなってしまって、指標に使えなくなってきた」という悩みを抱えているとのこと。そりゃあ、毎日、ガチ医療情報に接してりゃあな。

 ところで、巷に溢れる胡散臭い医療情報(〇〇するだけで病気が治る、など)は、一体なぜ量産され続けるのか……これについて、非常にリアルな言及があった。

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「書籍はニセ医療の本丸。『お金が儲かる』とか『誤った情報を信じている』という理由ではなく、楽だということ。先ほどもあったが、正確性を求めると一行書くのに文献を調べて1日かかるが、適当な中身なら5秒だ。ただ『なんとなく』楽だから作っているというのが、出版関係者としては残念なところ。敵は『楽』とか『怠惰』だ」


 いやー、これねー、重要な話だと思いますよ。「驚異の××健康法」「〇〇で病気が治った」みたいな眉唾物の書籍ね、あれ、たまにメガヒットが生まれるから、純然たるカネのためにやってるのかなあと思いきや、「なんとなく楽だから」という動機があるとは。「たった2週間で英語が喋れるようになる」とか「ビジネスで勝利するハーバード式思考法」とか、そういうのと似たノリでやってるのかも知れねえなあ。別に2週間で英語が喋れるようにならなくても、ハーバード式思考法でビジネスに敗北しても知ったこっちゃないが、医療はヤベェと思うけどなあ。
 そんな中で、出版側から出た提案が-

「医師に聞いても、この人は凄い、という存在がいる。だいたい誰に聞いても『あの人は凄い先生』と一致するような人。そういう医師の番付つくれないか?患者が求めてるのは、この病気なら誰に聞くのが一番いいのか、そういう話では?」

「難しい。たとえばアレルギーの分野をとってみても、かなり細分化されている。基礎なのか、臨床なのか、どの分野なのか―。誰が良い医師か、と定義するのは困難」

「プロ野球のオールスター名鑑のように『基礎5、臨床3』みたいに六角形の表で表すような形式、とか……」


 ここで会場は笑いに包まれたわけだが、これ、書籍や表にするのはともかく、「この分野なら、この人に聞けば間違いない」「この研究者に監修してもらうのが最も妥当」というような、いわば『識者リスト』が欲しいというメディア側の事情もあるのではないかと思う。

 たられば氏がこの話を出した際、彼のキャラクターや話術もあって、会場においては一種の座興じみた戯れ言として笑いで終わったが、案外、重要な観点なのではないか。世の中には茂木健一郎が世界一の脳機能科学者だと思っている人が多くいるし、竹田恒泰を法律の専門家だと見ている人もいるのだ。いわんや、医療情報をや。
 

 しかし、それは専門医に対して求める物ではなく、情報発信者に対して付与するもの、つまり「この記者(編集者でもWebサイト運営者でもいいが)は、ちゃんとした記事を書ける人です。認定証を取得してます。認定証の無いヤツの記事は信用しないでね」というような性質であるべきかもしれない。実際、会では「コミュニケーターのリストアップはしておくべき」という話があったが、コミュニケーターでございと名乗るイカサマ野郎のコンタミを防ぐため、なんか必要なのではないだろうか。
(専門家・専門医の知識を理解する能力と、知識を噛み砕いて伝える技術は別物なので、一体なんの能力において認定証を与えるかという問題はあるし、一部の人は「あいつらは医者や製薬会社とグルになった御用記者だ」と逆に頑なになる可能性もあるが)

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 そしてイベントは、最後のQ&Aへ。ツイッターで寄せられた質問に答えるという、ツイ廃感涙の試みである。
「ヤンデル先生の今日の下着は?」「コバルトブルーのブーメランです。普段は六尺ですけどね、きょうは渋谷なので」とかそういう流れになると思いきや、案外マトモなフォロワーさんが多いようで、意外にも医療情報に関する問いが寄せられていた。おかしい、私の知っているツイッターは、もっと地獄のような世界だが、なに医療情報の話とか真面目に聞いちゃってんの?


Q.やさしい医療情報とは「優しい」「易しい」両方の意味合いがあると思うが、やさしさとは何か、誰に届けたいのか


大須賀「私はがん研究者なので、患者さん、ご家族、友人に伝えたい。『優しい』も『易しい』も意識した上で。情報発信目的は診療科によって異なるかもしれない。がんの場合、とにかく医療に辿り着くことが目的」

ほむほむ「自分の専門はアレルギー。がんと違って死にはしないかも知れないが……病院のお医者さん、話しやすいですか?話しづらいと感じる人もいるかも知れない。たまたま、その時の相性が悪かったのかも知れないが。悩んでいる人が病院に行きやすくなるよう、お医者さんと話しやすくなるよう情報を届けたいし、自分の(ブログなどの)情報発信で、全国の小児科医、アレルギー医の負担が減ることも期待したい」。

けいゆう「自分の専門は消化器外科なので、比較的、患者さんが高齢。病院が好きではなく、書籍やネットで自己解決してしまう方々もいる。そういう人にアプローチするため、診察室の中でやっていることをWebやSNSでもやるのが、私にとっての『やさしい医療情報』発信」

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Q. SNSなどWeb情報の収集をしない、もしくはニュースや本を読まないなど、そういった無関心な人には、どうやって伝えれば良いのか?

たられば「打つ手なし」

会場の笑いのあと、付け足し。

たられば「どれほど丁寧でで正確な情報でも、興味がないならそれまで。だから興味を持ってもらうことが大事で、相手の興味あるジャンルの話と絡めるとか……こちらと相手の中間にボールを落とす」

ヤンデル「自分の健康や病気に興味ない人は本来いないと思うが、無関心を放置しておくと危険なのはワクチンなど。だから無関心な人にも情報を届けるべく取り組むのは避けられない」



そして最後のトピック。誰の言葉か個別には記さないが、以下のような内容であった。


「正しい医療情報は、時として残酷な側面もある。人は必ず死ぬし、治らない物もある。残酷な面を伝える前の、医師と患者の関係性が重要。しかし最初から残酷な話をしなければならない時もあり、医療の総体でやさしい情報を蓄積しておく必要があるように思う。易しく、優しく、わかりやすさとともに、絶望的な情報としてではなく『あなたは病気と共にこんな風に生きれるかもしれませんよ』と伝えたい。新生児や小児については、親御さんにどう伝えるか本当に難しいが、お父さんお母さんに背負わせるのではなく、全部を医療者に背負わせるのでもなく、半分ずつ持ちましょうと伝えたい…治したいという気持ちは誰もが持っているのだから。とにかく患者さんの心も守ること、医療(ニセ医学ではなくマトモなほう)から脱落してしまいそうな患者さんを救うために情報発信をしたい」


「一番『やさしい』のはインチキ医療。根拠もなく『こうすれば、がんは治る』『死なない』『若返る』などと言えるのだから。正確な情報を伝える場合『あなたはハタチの頃には戻れませんよ』と厳しいことを言うしかない。そうした、まっとうな医療が『やさしい医療情報』と掲げたのは、やさしいインチキ医療の土俵に折りて戦う決意の宣言だと思う。会場の皆さんも、ぜひ一緒に取り組んでいければ、と期待している」

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以上をもってイベント終了。

 正直、「正しい医療情報」の発信を強化しても、100点満点にはならないのだ。ムー大陸を信じる人がいるように、なんか、よくわからん物を信じる人はいる。まして病ともなれば、いかに理性的な人でも不安のあまりオカルトじみた物に影響されてしまうこともある。「正しい情報発信」を強化したところで、あるいは「間違った情報発信」を取り締まったところで、何割かがアチラ側に行ってしまう事は避けられない。100点は取れない。ただ、30点を40点にしたり50点にしたり、うまくすれば85点ぐらいにはできるんじゃねえの……と、どうせ全員を正しい情報で救うことはできず何%かはインチキ医療の毒牙にかかってしまう負け戦だとわかりつつも、この負け戦を多少はマシな戦況に持って行くのが、このミッションである。
100年前に比べりゃ「この病は天狗の祟りじゃ!」とか信じ込む人は減った、100年後は、もっとマシになっているだろう。なかなか倒せない敵に、飽くことなくボディブロー打ち続けてりゃな。

簡単なまとめは、以下の通り

<1.情報発信する上で医療者に求められるもの>
・気合い (手を抜くと人が死ぬ)
・根気  (キャラづくりも含め時間かかる)
・ノウハウ(共有していく必要あり)

<2.情報発信支援をするメディアに求められるもの>
 ・気合い       (楽だから適当な仕事やりました、とかダメ)
 ・コミュニケーター確保(情報の目利き)
 ・発信の場の準備   (オールドメディアもWebも含む)
 

<3.情報発信支援をする『なにか』に求められるもの>
 ・人手の調達
 ・ゼニの調達 
・サステナブルな構造
※たぶん行政あるいは「公的な存在と認識できる、複数の事業者や産学あわせての協議会のようなもの」が必要


 という中で、行政の仕組みがどうなってんのかわからんので、ちょっと調べたいですなー。なんでも、薬機法に課徴金制度が導入される方向だとか何とか、色々と動きがあるみたいですけども。
 ま、そのうち。

 あ、おしまいです。

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 私がこのエントリをnoteに書いている間ずっと、遊びに連れて行けとうるさかった5歳の息子、という設定で適当な子供の画像を張り付けているだけで特に私と何の関係もない男児の写真です。

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岡田ぱみゅぱみゅZ女子組

人生が見えない

やさしい医療情報

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