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【何万枚???】①

仕事を辞めてこの村に来て4年が経とうとしている。

東京に居たころは、電車通勤では痴漢に間違われないように神経を使い、会社では上司、取引先、直属の後輩の機嫌を伺い、家に帰れば壁が薄い隣の部屋に気を使い、正直休まる場所がなかった。

それが今では、
最寄り駅まで車で40分、電車は乗ることなくマイカー生活!
古民家を改築した自宅で農作業をしながら快適に在宅仕事!
一番近いご近所さんは2キロ!

「俺の楽園はここにあったんだ!」
「やっと俺の幸せな人生がスタートする!」

思い返せば、そう思えていたのは最初の1年間ぐらいだっただろうか。

いや、これといった不満はない!

今の生活が続けばいいなと心から思う!

ただ、

ただ、

どうしても上手くいかないことがある!

諦めることが出来たらどれだけ楽になるか、頭ではわかっている!

でも、この田舎に移住するときにどうしてもやってみたいことがあった!
なんならそれだけ出来たらあとはそれなりでも満足できたのかもしれないくらいだ

なぜ出来ない

教えてもらった通りにやっているのに

なぜ俺だけ上手くいかない

最初から上手くいくとはもちろん思ってはいなかった
決して楽観視していたわけでもない

それにしてもあんまりだ


移住してから4年

自分の畑から野菜が1つも収穫できていない


ネットで視力が落ちるほど検索をした
それだけで対処できるはずはないので地域の集まりに積極的に参加して情報も求めた

スーパーに行って畑を持ってる近所の爺さんがいたら、車に乗せて家まで送り、道中にこれでもかと質問攻めをした

農家仲間で早朝6時から開催される【ペタンク】と呼ばれる鉄の球を鉄の球に当てる競技会にも参加した!
(「野菜もペタンクも同じだ!」と言われてからは参加頻度は減少したが)

ペタンクの後に付き合いで行った銭湯に会ったことのない農家の爺さんが居るのを知ると、その人の銭湯の利用ルーティーンを見抜き、偶然を装って近づき、自分の知識の答え合わせを繰り返した!

やれることはやった!

昔から少しの不安も残したくない性格なので、徹底的に!


でも、俺はまだ自分の手塩にかけた野菜をまだ食べられていない

「何が出来ていない」

「俺に何が足りない」

「自分で収穫をした野菜を食べたいので、野菜を極力控えているのでビタミンは足りていないのは確かだな」


そんな一つも笑えない冗談で自分を騙すのにも限界が来た

そんなある日、隣の畑でいつもせっせと農作業を行っている爺さんにこの思いのすべてをぶつけてみた


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