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ボーカロイドの深淵を覗こう #39

こんにちは。ボカロが好きです。ボカロはいいぞ

 さて、「アンダーグラウンドボカロジャパン」「感性の反乱β」「POEMLOID」「VOCALOIDよれよれ曲リンク」「ボカイノセンス」の全曲周回を目指して感想を書いていくシリーズの39ミク回目です。第一回はこちら一覧はこちら

 クレジットについて、概要などに表記がなければ作詞作曲を投稿者本人が行ったとして表記します。絵や動画については概要欄/タグ/動画内にクレジットがある場合のみ表記します。

 万が一ですが、クリエイター様御本人で自分の曲を紹介してほしくないということがありましたらご連絡ください。

 それと、このシリーズはあくまで「レビュー」ではなく、「私が聞いた印象録」として受け取ってくださるとありがたいです。聞いてみて全然違う印象でも、各々が各々の内奥に起きた情動を信じてください。そして自分の感動(それは言葉としての「感想」でなくてよい)を大切にしてください。

それではいきます。

0381. きれいなおはな / 外道さん

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:外道さん
イラスト:モモギ / 乃良
ボーカル:GUMI / Aques Talk
投稿:2010/11/4

 高速爆音の攻撃的なテクノ。長いイントロ、ゆっくりによる前説でどんどんと期待値を上げていき、本編で爆発するサウンドが最高です。ただ荒々しいだけでないかっこいいフレーズが気持ちいいです。GUMIのエッジィなボーカルもよくあっています。

0382. へや / 回想P

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:回想P
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/11/5

 DS-10による打ち込み曲。シンプルな音像で素朴に可愛く仕上がっています。手書きのアニメも味があります。
 中盤から音量注意のびっくり展開です。「なにもないへやのなか/ひとりではまえもみえず」というつぶやきから、強烈な砂嵐を挟んで、「きみはもういないから/いないからすてたんだ」とつながることで、この曲が『初音ミクの消失』的な内容であることがわかる構成が良いです。

0383. 初音ミクのぺたっぷ / さう

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク
作詞・作曲:さう
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/11/7

 初音ミクの「あ」をはじめ、いろいろな声をサンプリングして再構成したようなミクトロニカ。8bitのような電子音と時々声とわかるような、でもやっぱりわからないような声が組み合わさり不思議な緊張感があります。ファミコンのRPGゲームの洞窟の前衛的なBGM的な感じがします。
 声であって声でないこの不安定さが独特の不気味さを感じさせる気がします。

0384. tape / ピコピコP

タグ:感性の氾濫β
作詞・作曲:ピコピコP
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/11/8

 夜の街のような実写MVとそれにあったゆったりとした雰囲気がとても美しい曲です。ヴィオラ?でしょうかストリングスの深みとドラム、ギターがとても気持ち良いです。伸びやかなミクの声もそれにあっていて優しげです。眠れない深夜に散歩しながら聞きたくなるような曲です。歌詞もそれにあった穏やかな憂いを湛えた孤独感で孤独感を埋め合わせてくれるようです。

0385. 右を見て / ててて

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:ててて
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/11/9

 「右を見て」というミクの声とともに部屋の右を向くアニメーション。動画をなぞってアニメーションを作成したのでしょうか。すごい労力です。
 中盤からは歌が始まり、「前ばかりみずにたまには回り道も良い」という内容がMVに重なり合います。モーショントレースのようなリアリスティックなアニメーションのなかでミクも時々映り、現実と虚構が混ざり合うようです。

0386. Super ce / nicol(たまごやきP)

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク
作詞・作曲:nicol(たまごやきP)
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/11/12

 9分で「melt」「love is war」「world is mine」「black rock shooter」「when the first love ends」という5曲のミニアルバムになっています。名前でわかるように、supercellの誰もが知る5曲の曲名を拝借しています。内容はsupercellとは全く別物で激しい退廃的なオルタナです。
 ほとんどアドリブのような無秩序にも聞こえる、強く歪んだギターと不規則なミクの声に不安になってきます。が、そこに好きなことをやっている感じがして、ボカロならではの自由奔放さが良いです。supercellをどこまでも解体してやるというデストラクションな気概を感じます。

0387. The Name / (∵)キョトンP

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:(∵)キョトンP
イラスト:オニヤンマ
厨二文:hackberry
動画:大丈夫Pと愉快な仲間達
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/11/12

 「人の名前が覚えられない!」という内容をプログレチックなかき鳴らされるギターとともに歌われます。暴れっぷりが流石大丈夫Pと愉快な仲間たち。ミクの声とともに背後やミクと交互から入る大丈夫Pたちの声もとてもおもしろく挿入されています。曲の展開も予想つかず、ずっと釘付けされるような曲です。
 私も人の名前をおぼえるのが苦手なので歌詞に共感しました(正しい「歌詞に共感した」の使い方)

0388. The Face / 大丈夫P

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク / 感性の氾濫β
作詞・作曲・ギター:大丈夫P
イラスト:オニヤンマ
厨二文:hackberry
動画:大丈夫P
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/11/13

 さきほどから交代しまして大丈夫Pのほうから「人の顔を覚えられない!」という内容のプログレ?なトンデモ曲。とても激しく荒ぶっているのにちゃんと聞き取れて何気にミクの調声がすごいです。0:50からの展開が好きです。
 ギターもドラムもMVも全てが荒ぶっていて大丈夫Pの本領発揮な感じがあります。先程の曲はあれでも自重していたんでしょうか?

0389. さなぎの時代 / nabugan

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク
作詞・作曲:nabugan
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/11/14

 アジアンエスニックな伴奏がとても不思議な雰囲気で引き込まれる曲です。これがボカロ処女作とのことです。動画の写真は日本ですが、知らないアジアの国を歩いているような気分になります。よく考えれば最低でも12年前の日本ですしね。その選択や謎の女性、浮世絵などの挿入のセンスも独特で不思議な気持ちになります。
 どこか異世界のような不思議な、それでいて嫌な感じはしない浮遊感があります。

0390. 歩く人 / ててて

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:歩く人
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/11/18

 夜にあるき続け「帰る場所はない」という静かな孤独感を打ち込みとハモリで美しく歌い上げています。FLASHゲームのBGMのようなシンプルながらも綺麗なメロディで優しさも感じられます。
 2:13~の同時歌唱がとても良いです。双方から異なる感情が歌い上げられ、夜にいろいろな考えや自問自答がぐるぐると反芻しているような、寂しい夜の雰囲気がとても良いです。


今回はここまで!

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周回の中で特に気に入った曲をマイリストに入れておきます



日記:2022/12/16

お久しぶりです。日記って何だっけ。
まぁマイペースにやっていこうと思います。

 先日obscure.さん主催の「ボカロリスナーアドベントカレンダー」に参加させてもらいました。ボカコレ曲200曲のMVに使われている「フォント」を特定しました。まだ読んでない方で興味があればご覧いただけるとありがたいです。

 ちなみに去年も参加しています。去年書いたのはこちら。半分くらいアリストテレスの話をしています。こいつボカロの話する気あるのか。

 ここでは裏話を。

 いや~~~~大変だった。12月に入るくらいまでは漠然ともっと別の、いつもの哲学的怪文書を書こうと思っていたのですが、材料を集めていくと、予想以上に自分の勉強不足と自分の中で意見が固まっていないことが露呈したので没にしました。

 じゃあ代わりに何を書こうと頭の片隅に思いつつ「バズリニキ」を聞いていたときに、ふと、「これフォントプロセカと一緒では」と気付き(この時点ではニタラゴルイカではなくロダンNTLGだと思っていました)、すぐにまとまった文章をかけるレベルで知識があるものと顧みたとき、フォントならいけるな、となりテーマがまとまりました。

 そういう訳で集計を始めて、本文にもあるように当初の目論見よりだいぶキツいことが早々にわかったのですが、引き返す事はもはや出来ず。
 当初は「歌詞が表示されるのは2/3=140曲程度だろう」「140曲のうちさらに2/3=90曲くらいはシンプルな一枚絵と歌詞で特定も容易だろう」くらいに思っていました。まさか200曲全部見る必要があり一曲で何書体も使うMVが大量とは……さすがボカコレ、力が入っています。舐めてました。

 どう考えてもなデザイン書体(と最後の方は游明朝など自信アリ書体)以外は不安なので、
 ①動画をキャプチャ
 ②画像編集ソフトに取り込み
 ③テキストをのっけてみて確かめる
というのをひたすらやっていました。

 わからないやつはこの①~③を「ゴシック体」「明朝体」みたいなカテゴリで総当りします。
 私のPCにはWindows標準+Officeバンドル+Adobe Fonts+フォントワークスLETS+その他フリー/有料フォントが入っていて結果的に90%くらいカバーできたのですが、もちろん自分のPCに入っていないフォントの可能性もあるため、適宜モリサワやダイナコムウェア等の各ベンダやフォントサイトの試し書き等も周回して特定しました。

 そういう訳で12月入ってから50~60時間くらいにらめっこしていた気がします。見てすぐにあたりが付いたものは60%くらいでした。絶対フォント感の体得への道は長い。

 フォントが好きになったきっかけは、あるある過ぎて言うのも憚られるのですが、エヴァンゲリオンです。中学だか高校だかでエヴァのパロディポスターみたいなのを作ろうとして、PC内のフォントを色々やってもあのかっこよさにはならない。それで調べるとこんなに深い世界があったのか! ってな感じで今に至ります。

この記事で作成した画像

 私が思うフォントの魅力は、知るとこの世のすべての文字情報に「書体デザイン」というレイヤーが一つ乗っかって見えるようになることです。我々の情報源のほとんどが文字であるというのに、そこに一つ情動基準が乗っかるので文字通り世界の見方が変わる……というと言い過ぎでしょうか。却って気が散ることもありますが。
 文字、という最も身近なものに対する見方がガラッと変わるので面白いです。
 もちろん実益的にも大学でのパンフ作りなどで役立ちますしね。フリーフォントからでもいろいろ眺めてみると面白いです。

 とにかくいろいろな書体見本を眺めたり自分で使ってみるのが一番なのですが、記事にもあるようにフォントは高額なので、こちらの本をおすすめします。

 「明朝体とはなんぞや」みたいな基本的なことから知ることができるので入門にとても良いと思います。

 フォントというか「文字デザイン」という思想的なところではこれが面白かったです。

 いろいろな論考やインタビュー、対談などの集成です。現在手元になくて確認できないのですが、確か「書体デザインとVaporwave」みたいな論考とかもあったはずです。MV作りでの思想的なインスピレーションのきっかけになるかもしれません。より抽象的な話題が好きであればおすすめします。

 というわけでフォントはいいぞという布教を、ボカコレの力で強引にボカロと結びつけ記事公開に至りました。特にボカロPさんや動画師さんの方面に好評のようで嬉し恥ずかし恐縮です。少しでも力になれれば嬉しさの限りです。何よりもボカロPさんや動画師さんあってのボカロですのでね。

 これは結局使わなかった「SAWか? っていうメルト」です。それでは!

(フォントはコミックミステリ)


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