見出し画像

ボーカロイドの深淵を覗こう #35

こんにちは。ボカロが好きです。ボカロはいいぞ

 さて、「アンダーグラウンドボカロジャパン」「感性の反乱β」「POEMLOID」「VOCALOIDよれよれ曲リンク」「ボカイノセンス」の全曲周回を目指して感想を書いていくシリーズの35回目です。第一回はこちら一覧はこちら

 お待たせしました! 仕事が忙しかったりお盆に帰省したりマジミラだったり仕事が忙しかったりで気付けば2ヵ月弱あいちゃいましたね。気ままにやっていきます。

 クレジットについて、概要などに表記がなければ作詞作曲を投稿者本人が行ったとして表記します。絵や動画については概要欄/タグ/動画内にクレジットがある場合のみ表記します。

 万が一ですが、クリエイター様御本人で自分の曲を紹介してほしくないということがありましたらご連絡ください。

 それと、このシリーズはあくまで「レビュー」ではなく、「私が聞いた印象録」として受け取ってくださるとありがたいです。聞いてみて全然違う印象でも、各々が各々の内奥に起きた情動を信じてください。そして自分の感動(それは言葉としての「感想」でなくてよい)を大切にしてください。

それではいきます。

0341. ちゅうごくあじたま / ヒラタユウト

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:ヒラタユウト
ボーカル:初音ミク
マスタリング:輝
投稿:2010/8/27

 荒いサウンドと「ちゅうごくあじたま」という連呼が癖になる曲。「中国味玉」=「ピータン」のことでしょうか? 繰り返される声がだんだんと「中毒味玉」に聞こえてきて、その声の通り中毒のように脳内にリフレインします。
 後ろで中国のラジオのような音声が流れているのも面白いです。中国のカオスな喧騒のイメージにも近いものを感じます。


0342. なにかのフリ / FuzzP

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク
作詞・作曲:FuzzP
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/8/28

 「Love Peter Ivers」をテーマとしている(マイリスコメント)という歪んだギターがかっこいい曲。ピーター・アイヴァースはアメリカの様々な音楽性が融合したような特異な音楽性のミュージシャンです。

 私がPeter Iversに詳しくないので、数曲聞いたうえでの印象の話になっていますが、Peter Iversの曲にも感じた独特の「よれ」を感じます。
 前半のゆったりとしたギターのフレーズは、ただ歪んでいるだけともラウドなだけとも違い、その絶妙な雰囲気が、「なにかのフリ」で生きているという無気力な日々と響きあい、寂しげとも自暴自棄ともとれる精神性を感じます。
 後半の長いギターソロでは歪んだギターが強くかき鳴らされますが、そこでも単にかき鳴らしている以上の、深く感情に訴えるような力強さを感じます。


0343. ある終端 / あぼんギャルP

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク
作詞・作曲:あぼんギャルP
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/8/31

 ハイセンスで複雑なサウンドやメロディがかっこいい曲です。思えば、「マトリョシカ」の投稿の約2週間後、ミク3周年の投稿ですね。徐々にいわゆる「ボカロらしさ」が醸造されてきている気がします。
 イラストは時期的にも「iPod風壁紙」を意識しているでしょうか。そのイラストによく合っているような電気的な未来感のあるスタイリッシュさと、どこかレトロ感(古いという意味でなく)も感じるようなロックなサウンドです。


0344. My hope / JailP

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:JailP
イラスト:mag
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/8/31

 ミステリアスで魅力的なピアノとつんざくようなシャウトが激しいダークな曲です。シャウトは音量注意ですが大きい音で聞くとそれだけ気持ちよさもあります。「思うだけならいいでしょ」といい「My Hope」と(おそらく)叫ぶ声からは直接的な苦しさを感じます。後半には「助けて」と連呼する中からは、恐ろしさともに、荒々しく表出した生そのものを感じるかのようです。

0345. 覚めてゆく夢の様に、眠る / bunji

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:bunji
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/9/6

 なんとなく「よれよれ」も感じるミクのかすれたような調声も癖になる、独特のメロディの曲です。1:50あたりからのギターのフレーズが私は好きです。ミクの声の荒々しさとオケの不安定さが相乗的にこの曲の底知れなさを醸しています。アウトロの強いリバーブからも余韻を感じます。


0346. もしかし / タタタタP

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク
作詞・作曲:タタタタP
ボーカル:初音ミク / 開発コードmiki
投稿:2010/9/7

 ミクとmikiのメロディがとてもかわいいエレクトロ。音数の少ないシンプルなオケにボーカルの幼さがよく合い、あどけなさを感じます。幼さを結晶化したような美しさを感じます。
 サウンドもシンプルながらもクオリティが高く、軽いサウンドがバラバラになることなく全体で主題を過不足なくとらえているような印象です。


0347. 濁晴 / 問題児P

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク
作詞・作曲:問題児P
ボーカル:歌愛ユキ
投稿:2010/9/8

 激しいバンドサウンドが以外にもユキに合う曲。中盤の潰れたユキの声からも不気味さや力強さを感じます。「洗わなければ(濁ったボクは)」という歌詞からは、この世界の醜さ、汚さを憂うような厭世観も感じつつ、そのバンドサウンドの残響に確かな自我を感じるようです。


0348. Nothing Left For Me / あえりあ

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:あえりあ
イラスト:WeatherH
エンコード:Death姫
ボーカル:巡音ルカ
投稿:2010/9/14

 ルカによるデスボイスのデスコア。ルカならではの英語詞とデスボイス、メタルバンドサウンドがとてもかっこいいです。サビでは一転して力強く芯の通るルカの声が響き、美しさとの両立がとても好きです。曲全体から命を燃やしているかのような、走馬灯のような燃え上がるような煌めきを感じます。

0349. 終末妄想 / 外道さん

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:外道さん
イラスト:natuki
ボーカル:GUMI
投稿:2010/9/15

 GUMIのハイセンスなトランス。1:05頃の感想からのサウンドがとてもカッコよくて好きです。GUMIの声がスピード感のあるサウンドにあっています。「世界は回る ぐるぐる回るよ」という俯瞰的な歌詞からも、この曲の抽象性と大きい視点から世界を包み込むような包括的な雰囲気を感じます。


0350. たいそう / Siryu

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:Siryu
ボーカル:初音ミク
投稿:2010/9/19

 幼い子供が即興で歌っているような雰囲気です。「いちにーさんし」と「準備体操~」の2フレーズの繰り返しというシンプルな構成が持つ脱力感が癖になります。ふと気づくと口ずさんでいることに気づくような、深層心理にこびりつきそうな感じがします。
 イラストもあいまってかわいい雰囲気がとても好きです。


今回はここまで!

← ボーカロイドの深淵を覗こう #34

350 / 3248曲(総曲数前回+191):進捗10.78%

ボーカロイドの深淵を覗こう #36 →


周回の中で特に気に入った曲をマイリストに入れておきます



日記:2022/08/25

 お待たせしました! 夏バテと持ち前の体力のなさが相まって帰省したりマジミラに行ったりという合間にかけずあれよあれよと2ヵ月近く書いていませんでした。こんなんじゃいつまでも追いつかない!早く令和の現代にたどり着きたいところです。

というわけで前回の更新から今まで無色透名祭やら、三統一祭やら、マジミラやら……プライベートでも美術館も行ったりといろいろありましたが、やはり一つ話題を挙げるならこれでしょう。

POEMLOID

 このジャンルでも対象として取り上げている(VOICEROID発売まで到達していないのでまだ数は少ないですが)ポエトリーリーディングですが、ここ2ヵ月いろんな意味で一番アツいボカロジャンルといってもいいんじゃないでしょうか。

 まず、発端はやはり無色透名祭でしょう。
 無色透名祭にて発表された《ポストずんだロックなのだ》が非常に伸び、ポエトリーというジャンル自体も含めて一気に知れ渡りました。

ポストずんだロックなのだ feat. ずんだもん
作者はイベント終了後「世界電力」さんであることが判明

そうでなくても、このイベント全体で他イベント比較して突出してポエトリーの数が多かったです。
そうでなくてもじわじわ増えてはいたようです。

 私もこの「事態」に際して、無色透名祭開催中にPOEMLOIDというジャンルの特異性、VOCALOIDとポエトリーの親和性について考察を書きました。

 「ポストずんだロックなのだ」はその後一か月もたたずに殿堂入りしました。全編が朗読のみのPOEMLOIDが殿堂入りしたのは「宗教に犯されているのではないか。」以来の2作目となります(タグ全体では一部ポエトリーを含んでいてタグが付いているsasakure.UK氏の「レプリカ」も該当します)。

 さて、無色透名祭が与えた衝撃はまだ続いているようで、その後も明らかに例年よりポエトリーの数が多く推移しているように思います。「三統一祭」でもPOEMLOID作品が数件ありました。

 そして、ついこの間、ボカロが好きなら歌詞を調べるときに一度は使ったことがあるであろう、「初音ミク@Wiki」にてポエトリーに関するひと騒動ありました。現在もサイト上では若干くすぶっているようです。

 これに際して手前味噌ではありますが、騒動へのカウンター的表明としてニコニコ投稿デビューしました。

 要は、件の騒動の最初の主張が「ポエトリーにおいてオーケストレーションと朗読は分離して考えるべきで、朗読は音楽ではないからポエトリーは音楽ではない」という個人的にはすっとんきょうな意見であったため、「朗読単体で考えてもそこに音楽的本質を見出すことができ、音楽といえる」と(あたかも)主張している(かのような)曲?を投稿して場をかき回してやろうという目論見です。
 さすがに詭弁であることは理解しています。あくまで「ネタ曲」として受け取ってもらえれば。

 動画を投稿した感想ですが、ボカロPみんなこんなことしてるの?!難しい! 改めて偉大さが分かりました……みんなすごすぎる。あとずんだもんかわいい。

 「グッバイ宣言」が一番勢いに乗っていた時に「ボカロ代表曲が変わる」というような話が半ば不穏な雰囲気も伴って広がった時に、キャプテン・ソプラノさんが「ボカロ代表曲」という曲を投稿しカウンターとして笑いと話題をかっさらったことがありました。
 さらに昔に遡ればテレビの紹介のされ方などで掲示板が大炎上した時にそのさなかに「亞北ネル」が生まれました。
 このような、どんな話題からでも創作につなげようとする、ボカロ文化の根源的なクリエイティビティがとても大好きです。私がその一介になれていたらとても嬉しく思います。

 しかしまあ、それにしても最初の意見についてはやはり同意しかねるというか、ある意味で危険であるとすら思います。VOCALOIDという自由な創造性を湛えた創作文化圏で個人の意見だけで芸術を囲い込み、概念の拡張を許さないというのは、発展の阻害とも考えられます。
 ボカロという文化は生産者と消費者が渾然一体となっており、たとえ聞くだけであっても私も含めて文化全体に影響を及ぼす「共犯者」になり得る特異な文化圏です。自分も含めて行動がもたらす影響を考えて責任を持たないといけませんね。

 しかしまあそれはそれとして、この騒動により却って「ポエトリー」というジャンルが注目されたようで、まだまだこの波は収まらなそうです。極め付きには、年末にPOEMLOID投稿祭が計画されているようです。

 かねイルカさん自身もPOEMLOIDを多く発表している素晴らしいクリエイターさんです。いつかこのシリーズでも紹介することになるでしょう。

 これには期待しかありません。ボカロ以外の音楽を見渡しても、ポエトリーがここまでフィーチャーされたことは少ないと思います。非常に楽しみです。
 全力で応援します! もし力になれることがあればなんでも協力します!! といってもこの手の企画の中の人などしたこともありませんので見当もつきませんが……

 というわけで近況でした。またのろのろと再開していければと思います。それでは!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?