ワンオーエイト・ボンノ・ストライクス!(ニンジャソン2018-2019冬)

(これまでのあらすじ)
クリスマスの夜、ネオサイタマでは6時間かけて66人のオイランをファック・アンド・サヨナラするという異常連続殺人事件が発生。
その人間離れした犯行手段にニンジャの影を見た暗黒非合法探偵フジキド・ケンジは調査に動き出すが、謎めいた殺人者のニンジャ野伏力に翻弄され、捜査は難航する。

そんなニンジャスレイヤーの探索行を嘲笑うかの如く、IRCでは謎のアンタイブッダ・ニンジャ、ワンオーエイトが大晦日の夜に6時間かけてネオサイタマの全テンプル破壊と全ボンズの殺害を実行する「シの6時間」を宣言!

一方、エーリアスのサイコ鍼灸院にはぼろぼろの僧侶ローブを纏った異様な風体のボンズが現れる。
この者こそ、クリスマスのオイラン連続殺人事件の犯人であり恐るべきアンタイブッダ破戒僧ニンジャ、ワンオーエイトだったのだ……!

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ネオサイタマ。
本来であれば大晦日のこの街は、年の瀬の狂騒に浮かれる人々で賑わいを見せている。
しかし、この日のネオサイタマは年の瀬であるにも関わらず、街中が閑散とした静寂に包まれていた。
突如IRC上で予告された「シの6時間」に怯えた一般市民たちが、門戸に固く鍵をかけ、引きこもっている故だ。

多くのテンプルも、不用意な暴動や混乱を避け、今年はひそやかに、あるいは年末年始のギョージ自体を閉鎖しようと考えるものが出始めたとして、誰が責めることなどできよう。
ここ、イワウメ・テンプルもまた、そんな無秩序混乱による犠牲者を回避すべく、一時的に閉鎖された無人テンプルであった。

その境内に立つのは、ボロボロの法衣を着たひとりの男。
不幸にも逃げ遅れたボンズか?……断じて否!その顔には禍々しい仏敵メンポ!
首から提げた数珠にはそれぞれゴヨクを司る禍々しいカンジが刻まれ、破れ乱れた僧ローブの上から羽織る袈裟には「ブッダの天敵」「欲望を我慢しない」などの、聖職者にあるまじき退廃的アンタイブディズム・チャント!

この破戒僧こそ、ネオサイタマに「シの6時間」を齎すと宣言したおぞましきアンタイブッダニンジャ・ワンオーエイトである!
その足元には、水揚げされたマグロめいてロープで全身を多重拘束され、猿轡を噛まされた女がひとり。
彼女も当然、不用意にテンプルに訪れたボランティアのミコー・プリエステスなどではない。

生え際に近いところで髪を切り揃え、永久脱毛した眉に代わりにイバラめいたタトゥーを入れたその少女もまた、ニンジャなのだ!
「素晴らしい眺めだぞ、エーリアス=サン」「ンンーーーーッ!ンンーーーーッ!」猿轡を噛んだエーリアスの抗議の声!

「実際そなたは子猫めいて愛らしい……待っておれ」ワンオーエイトはロープの上から撫でるようにその身体をなぞり、おぞましく息を吐く。
「このテンプルに火をつけ、残りの攻撃予定テンプル全破壊達成のあかつきには、たっぷりと可愛がってやるからな」その瞳には脂ぎった色欲の炎!「貴様は我が永劫の専属オイランとして残りの生を過ごすのだ」
「ングーーーーーーーーッ(冗談じゃねえぜ)!」

その時である!
「Wasshoi!」
特徴的なシャウト共に、境内へ舞い降りる赤黒の影あり!
「ドーモ、ワンオーエイト=サン。ニンジャスレイヤーです」殺戮者のエントリーである!

「オヌシに初日の出は訪れぬ」ニンジャスレイヤーはアイサツを行うと決断的な殺忍宣言!「私がここで殺すからだ」
「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ワンオーエイトです」ワンオーエイトは即座にセクシュアル・ハラスメント中断!エントリーを果たした死神にアイサツを繰り出す。
「なぜ拙僧の居場所がわかった?」

「貴様のニンジャ野伏力は実際目を見張るものがあった」ニンジャスレイヤーは淡々と返す。
「だが、血に飢えたニンジャはいずれ馬脚を表すもの。オイラン連続殺人の折、現場に現れた虚無僧の情報とその足取りを辿れば、答えは自ずと見えてくる」

「なるほど、素晴らしい推理力だニンジャスレイヤー=サン。その返礼に、貴殿の死出の旅へのネンブツは特別に拙僧がロハで唱えてくれようぞ」
「結構。ネンブツはオヌシ自身のために取っておくがいい」
ニンジャスレイヤーはそこで、ワンオーエイトが拘束イモムシ状態で無礼を働いていた少女が、エーリアスであることを認めた。視線が交錯する。
「ンンンンーーーーーーーーッ!」救援要請!

「ンン?なんだ、エーリアス=サン。助けを求めておるのか?実際いじましいな……」
ワンオーエイトはエーリアスに絡みつくような視線を向けた後、ニンジャスレイヤーに対して宣言する。
「この女は拙僧好みのため、初日の出と共に6時間かけて盛大にファックし、専属オイランとする」「ンンーーーーッ!」エーリアスの抗議の声!

「そのようなことは断じてさせぬ。ニンジャ、殺すべし!」ジュー・ジツの構え!「来るか!ニンジャスレイヤー!」相対するワンオーエイトもまた、カラテの構えを取る!

「イヤーッ!」「イヤーッ!」ワンオーエイトとニンジャスレイヤーのチョップが交錯!
「グワーッ!」ワンオーエイトの頭部にニンジャスレイヤーのチョップ命中!ザクロめいて頭部が裂ける!……しかし!

「グワーッハッハッハ!滾る!滾るぞ!」
おお……これはいかなる邪悪の加護か!?
ワンオーエイトは爆発四散に至らず、未だ健在!
そして……嗚呼!ナムアミダブツ!ナムアミダブツ!
割れたワンオーエイトの頭部からは捩くれたツノが突き出している!
((此奴、ボンノ・ニンジャのソウル憑依者であったか!))ナラクの声がニンジャスレイヤーの脳裏に響き渡る!

(ボンノ・ニンジャ?)((然り!ボンノ・ニンジャはアクマ・ニンジャクランより落伍した惰弱ニンジャ。しかし彼奴のソウルはゴヨクが高まれば高まるほど、そのカラテを高める。時間をかけるは危険ぞ!))
「どうしたニンジャスレイヤー=サン。拙僧のカラテを値踏みしようというのか?その増上慢が……ヌフン」ワンオーエイトの興奮に応えるように、更なる肉体変異!法衣を破り、冒涜的な悪鬼じみた姿に変貌!

「そのような皮算用は、殊更に拙僧の征服欲を滾らせるぞ!イヤーッ!」「イヤーッ!イヤッ!イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは連続側転回避!さらに着地の度にスリケンを連続投擲!タツジン!
「グワーッ!グワーッ……イヤーッ!」

ナムサン!ワンオーエイトは二度のスリケン被弾で手傷を追いつつ、3発目のスリケンに対応!
ボンノ・カラテの高まりが、この悪鬼に死神と相対しうる力を授けているのだ!
((フジキドよ、鐘を撞くのだ!ボンノ・ニンジャは聖なる力に対して脆弱!鐘を鳴らせばあやつのゴヨクは霧散する!))

ナラクの助言を聞き、フジキドはテンプルに備えられた巨大梵鐘を見る。……だがしかし、鐘を突くためのシュモクとそれを支えるロープはワンオーエイトの手により破壊済み!
「無駄だニンジャスレイヤー=サン!ここに貴様の望みを拾うブッダはおらぬわ!イヤーッ!」ワンオーエイトの追撃が迫る!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはブリッジ回避!

「イヤーッ!」「グワーッ!」さらに跳ね橋が持ち上がるかの如く、反撃のメイアルーアジコンパッソを放つ!ワンオーエイトがダメージに仰け反る!
己が欲望とフーリンカザンの為に、祈りの場を踏み躙る邪悪なニンジャへの怒りの一撃!

その強烈なカラテを受け、通常のニンジャであればワイヤーアクションめいて吹き飛ぶか、あるいはその場での爆発四散もあり得たであろう。
しかし、ワンオーエイトはたたらを踏むも健在!
「ムフン」喜悦に歪んだ笑い!

「そら、燃やせ燃やせ、怒りを燃やせ!貴殿がそうして昂ぶれば昂ぶるほど……ウッ!」ドクン!ワンオーエイトの肉体がカラテの歓喜に打ち震え、更なる異形変異!顎は裂け拡がり、刃の欠片めいた歯が無数に広がる!コワイ!
「拙僧のカラテもまた、貴殿を打ち据える喜悦に震え、その冴えを増すのだ!イヤーッ!」

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは繰り出された拳をブレーサーで受ける!
「ヌゥーーーッ!」そのカラテの変異を感知!打撃が……先程より遥かに重みを増しているのだ!
「どうしたニンジャスレイヤー=サン!今頃怖気付いても手遅れぞ!イヤーッ!イヤーッ!」

「イヤーッ!イヤーッ!」ニンジャスレイヤーもまた、鋭さを増したカラテで応戦!
それに応えるように、ニンジャスレイヤーを狙うワンオーエイトのカラテの冴えは益々鋭くなっていく!
今はまだ十分に対応可能な範囲のカラテ……しかしこのままゴジュッポ・ヒャッポの打ち合いを繰り返せば、ワンオーエイトの無制限なボンノに比例して増大するカラテ質量は、いずれニンジャスレイヤーを追い詰め、爆発四散に至らせるであろう。ジリー・プアー(徐々に不利)!

ナムサン!このままニンジャスレイヤーはカラテ質量差を覆され、この下劣な欲望の悪鬼に敗れてしまうというのか!?

……しかし、ワンオーエイトはこのイクサの中でひとつの重大事を忘れていた。
即ち、エーリアスの存在である。
カラテの未熟な女ニンジャひとり、警戒するに足らぬ。
そう考えるワンオーエイトの侮りが、ウカツにもこの致命的な意識の隙を生じさせていた。

ワンオーエイトは気づかぬ。自身が苛烈なイクサを繰り広げるその背後で、スシ・ロールめいて拘束されたエーリアスを縛るロープがジリジリと焼け焦げていることに気づかぬ。彼女の黒いショート・ボブカットが、怒りを孕んだ炎の赤へと変化しつつあることに、ワンオーエイトは気づかぬ!

「グワハハハ!ブッダと共にアノヨから拙僧の天下を見守るがいい、ニンジャスレイヤー=サン!」膨大に膨れ上がるカラテに、精神的絶頂期を迎えたワンオーエイトのアクマカラテが振るわれる!万事休すか!?

「イヤーーーーーーーッ!」「グワーーーーーーーッ!?」
そこに一陣のインタラプト者あり!燃え盛る炎輪からショート・リープを果たし死角からのカトン・ジャンプパンチアンブッシュを決めたのは、エーリアスに瓜二つの女ニンジャ!
その髪は赤く、イバラめいたタトゥーを入れた眉は好戦的に釣り上がっている!

「ヘル・オー!ブレイズです!」挑発的キツネサインと共にアイサツを行ったその女ニンジャの双眸には、決断的な怒り!
「ドーモ、ワンオーエイトです」反射的アイサツ実行!「バカな!さっきまでここにいたエーリアス=サンはどこに!?」

「あいつならアタシと代わったよ。そいつを助けてやれってさ」それからエーリアスはニンジャスレイヤーの方を向いて、獰猛に歯をむき出して噛み付くように叫んだ。「お前、これは一つ貸しだからな!」

「アンタさあ、好き勝手してくれたよね」ブレイズはワンオーエイトに対峙し、カラテを構える。「後悔させてやる」

「抜かせ小娘!そこな死神はまだしも、貴様ごときに遅れを取る拙僧ではないわ!十全に甚振ったのち、ファック・アンド・サヨナラ重点してくれる!」侮りと色欲に満ちたカラテ!「イヤーッ!」ベアハッグからのサバオリを狙い、ワンオーエイトがブレイズに肉薄!

「イヤーーーッ!」不用意接近に対し、ブレイズのカトン・パンチ炸裂!炎とカラテ、二重の衝撃波が飛びかかるワンオーエイトを面制圧!
まさしくモスキート・ダイビング・トゥ・ベイルファイア!

「グワーーーーーーーッ!な、なんたるハネッカエリ・ホース!」ワンオーエイト被弾!痛苦に悶えつつ、堪らず毒づく!
「奥ゆかしいキョートのアトモスフィア漂うキムスメとネンゴロできると思ったのに!話が違うではないか!」ボンノ・カラテ衰退!

「ええい、それならそれで良い!拙僧のカラテで叩きのめし身の程をわからせた上で、テゴメにしてくれるわ!イ…「イヤーッ!」グワーッ!?」
ハヤイ!ブレイズのカラテが、ワンオーエイトのそれを上回る!「ナメんな!ナマグサ野郎!」

「グゥーーーーッ!クヤシイ!」ワンオーエイトが屈辱に唸る!さらにボンノ・カラテ減衰!
それは僅かなカラテの衰えであったが、真のニンジャのイクサにおいてその隙は実際致命的な緩みであった。
そして、ニンジャスレイヤーはその一瞬の隙を逃さぬ!

「イヤーッ!」「グワーッ!?」ニンジャスレイヤーはフックロープをワンオーエイトめがけ投擲!巨大なカブをウインチで引き抜くかの如く、その身体にロープを巻きつける!
「児戯もその程度にしておけニンジャスレイヤー=サン。この程度のロープ、我がボンノの敵では……」動かぬ!「敵では……」動けぬ!

なぜならば……おお、見よ!ニンジャスレイヤーの背中に隆起した、縄じみた筋肉を!その盛り上がりは荘厳なるフジサンの如し!聖性を帯びたカラテの前に、邪悪の敵う道理なし!
「……ィィィイイヤァァァーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」渾身のカラテ・シャウト共にニンジャスレイヤーは綱を引き……ワンオーエイトの肉体を持ち上げた!

「バカなーーーーーーーーーーッ!?」ワンオーエイトの肉体がロープ越しのカラテにより吊るし上げられる。「イヤーッ!」フジキドは綱を引き、ワンオーエイトの身体を振り子めいて揺らす!その軌道の先にはテンプルの梵鐘……まさか!?

「イヤーッ!」「グワーッ!?」ニンジャスレイヤーが鐘を鳴らす!梵鐘にワンオーエイトが叩きつけられ、聖なる鐘の音がテンプルを、ネオサイタマの街を清める!1ボンノ退散!

「イヤーッ!」「グワーッ!?」ニンジャスレイヤーが鐘を鳴らす!梵鐘にワンオーエイトが叩きつけられ、聖なる鐘の音がテンプルを、ネオサイタマの街を清める!2ボンノ退散!

「イヤーッ!」「グワーッ!?」ニンジャスレイヤーが鐘を鳴らす!梵鐘にワンオーエイトが叩きつけられ、聖なる鐘の音がテンプルを、ネオサイタマの街を清める!3ボンノ退散!

「イヤーッ!」「グワーッ!?」ニンジャスレイヤーが鐘を鳴らす!梵鐘にワンオーエイトが叩きつけられ、聖なる鐘の音がテンプルを、ネオサイタマの街を清める!4ボンノ退散!

「イヤーッ!」「グワーッ!?」ニンジャスレイヤーが鐘を鳴らす!梵鐘にワンオーエイトが叩きつけられ、聖なる鐘の音がテンプルを、ネオサイタマの街を清める!5ボンノ退散!

ニンジャスレイヤーが鐘を撞く速度が上昇!ゴーン!鐘を撞く!ワンオーエイトの異形が梵鐘を鳴らす!聖なる鐘の音の福音がニンジャスレイヤーにカラテを与え、邪悪なブッダ・デーモンの力を弱める!

「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴーン!10ボンノ退散!「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴーン!20ボンノ退散!「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴーン!40ボンノ退散!「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴーン!80ボンノ退散!
「イィィヤァアーーーーーーーーーッ!」「グワーーーーーーーッ!?」ゴーン!
108ボンノ退散達成!しかしワンオーエイト未だ爆発四散ならず!
そして……ニンジャスレイヤーの鐘を撞く速度も未だ衰えず!

高速鐘突き速度はさらに加速!音の速さを振り切り、ロープを引くニンジャスレイヤーの姿は赤黒の色付きの風と化す!

「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴーン!216ボンノ退散!「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴーン!432ボンノ退散!「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴーン!864ボンノ退散!「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴーン!1728ボンノ退散!
「イィィヤァアーーーーーーーーーッ!」「グワーーーーーーーッ!?」ゴーン!3456ボンノ退散!さらに加速!

「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴーン!「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴーン!「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴーン!「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴーン!「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴーン!「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴーン!「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴーン!「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴーン!

100000007回の鐘撞きを経て、ワンオーエイトのゴヨクとニンジャ耐久力はついに限界値突破!ニンジャスレイヤーの瞳にセンコめいた光が灯る!
「ニンジャ殺すべし!イィィィヤァァアーーーーーーーーッ!」ニンジャスレイヤーが鐘を撞く!100000008ボンノ退散!「サヨナラ!」ハッピーニューイヤー!

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「「「アケマシテオメデトゴザイマス!!!!」」」
100000008の鐘の音がネオサイタマからニンジャの脅威を払拭すると同時に、街には例年の喧騒が取り戻されていた。

それはネオサイタマ全域に響き渡る鐘の音がもたらした奇跡か、新年の喜びを分かち合いたい人々の祈りに、ブッダが僅かに微笑んで見せたがゆえの奇跡か。真相はわからぬ。
ただ……街を行く人々の中には、新しい年を祝う喜びの笑顔があったのは事実である。

「すまねぇ、ニンジャスレイヤー=サン。また助けられちまったな」
活気の取り戻された街並みを歩きながら、エーリアスはややばつが悪そうに、フジキドに詫びた。
「ブレイズ=サンは」フジキドは尋ねた「オヌシの同居人はどうだ」

「ン?ああ、ダイジョブだ。寝ちまってるだけさ」イクサの後、ブレイズの髪は僅かな間もなく元の黒髪へと戻り、人格もまた、エーリアスのものへとスイッチ転換されていた。
このひとりで二人のニンジャは、極めて特殊な事情からひとつの肉体に二人のニューロンが同居しているのだ。
「無理させちまったからな、あとでお礼を言っとかないと」
「そうか」フジキドは頷くと「それが良かろう」とだけ付け加え、それきり無言になる。

エジャナイザの喧騒の中で、奇妙な沈黙に包まれて二人は歩く。
……このような緩やかな時の流れを気心の知れた友人と楽しむのも、奇しくもオショガツの醍醐味の一つであった。
そうして暫く二人が歩いていると、やがてどこからか香ばしいモチの香りが漂って来る。

エーリアスが香りの元を探るべく周囲を見渡すと、視線の先ではテンプル主導のオーゾニの炊き出しが行われていた。

「おッ!オーゾニだ!せっかくだし食べて行こうぜ!」エーリアスが駆け出す。
「うむ」フジキドは微かに笑みを浮かべると、ゆっくりとした足取りでエーリアスの後に続く。
赤黒と銀、二人のニンジャの姿はネオサイタマの喧騒に紛れ、やがて見えなくなった。

(ワンオーエイト・ボンノ・ストライク 完)

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おまけ
◆忍◆私家ニンジャ名鑑【ワンオーエイト】◆殺◆
ボンノ・ニンジャソウル憑依者。破滅的ゴヨク保持ボンズであり、その凄まじい欲望がニンジャソウルの憑依を招いた。
ゴヨクが高じれば昂ぶるほど、カラテの冴えと威力が増すハンモン・ジツの使い手。
ボンノ・ニンジャはアクマニンジャクランを落伍となった惰弱ニンジャであり、その破滅的な生き方から誰に顧みられるともなく、最期は裏淋しいススキ畑でひっそりとその生涯を終えたと言われている。

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