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筆箱紹介


はじめまして。
普段は地方で事務の仕事をしている鍵帆といいます。社会人3年目、少ないお給料とボーナスをやりくりして万年筆を少しずつ集めており、ようやく自分の憧れていたものが揃ったので記念の意味も込めて記事を書くことにしました。つたない文ですが万年筆の良さが少しでも伝われば嬉しいです。


パイロット カスタム845

エボナイトの軸に漆塗り、古式ゆかしいベスト型が美しいパイロットのカスタム845です。カスタムウルシが登場するまでフラッグシップに君臨していましたが、普段使いの実用品としては今でも最高峰なのではないかと思います。

エボナイトの軸は長く握っていても温度が上がりにくいそうで、漆のしっとりとした質感もあいまってつい手に取ってしまう一本です。また軸の形も絶妙で、ペン先に向かうにつれゆるやかにカーブしており、それも握りやすさの一助となっています。

15号のニブも素晴らしく、カスタム723、823も数本所持していますがどれも未調整でも滑るような書きごこち、この845の中字は特に「ぬらぬら」書けるという形容がぴったり当てはまります。


パイロット キャップレスブラックマット

同じくパイロットよりキャップレス ブラックマットです。真鍮の重めの軸に真っ黒の艶消し塗装が施され、他のキャップレスとは少し雰囲気が異なっているところがお気に入りです。ノック一回で使える身軽さと18kニブの本格派な書き味がちぐはぐで面白く、万年筆初心者の方にまずおすすめしたい一本です。

インスタグラムを見てみるとEDC(everyday carry)として鍵や十徳ナイフなどのサバイバルツールと共にポケットに裸のまま突っ込んでラフに使う男性の投稿がありました。
キャップレスは傷つき、黒い塗装が剥げて艶が出たり真鍮の金色の地が見えたりしていましたが、それすら「長年の相棒」らしさが出てかっこいいです。私はついつい傷がつかないように気を使ってしまうのですが、ぼろぼろになるまで使われた筆記具には知性の色気がほの見えるような気がします。


プラチナ 出雲 枇杷溜

今筆箱に入れている万年筆の中では一番の新入りです。ずっと欲しかったのですが、私が直接店頭に行ける文房具屋では赤溜(色違い)の太字しか在庫がなく、それすらプラチナの値上げの波で売り切れてしまい手をこまねいていました。
最近ネットショップで一本だけ入荷したものがまさに狙っていた枇杷溜の細字で、ギャンブル覚悟でそのまま購入しました。結果的には漆の具合もニブの調子も文句のつけようがないほど良く、さらに定価よりずいぶんお手頃な値段で手に入りました。

溜め塗の色の違いはヘッダーの画像の方が分かりやすいですね。枇杷溜は名前の通り枇杷のような黄色が下地にしかれているのですが、これは長年の使用によって徐々に広く浮かび上がるものなのだそうで、カメラで捉えるのはなかなか難しいです。今は太陽光に透かすと軸の端が朽葉色に染まるのが分かります。

ニブはプレジデントを採用しており、有名なセンチュリーと比べるとずいぶん硬くカリカリした感触なのですが、少し筆圧を高めても受け入れてくれる安心感があります。軸はカスタム845と同じエボナイトに漆塗りで、手に吸いつくような書きごこち。ずっと握っていたい万年筆です。


オマス アルテイタリアーナ パラゴン

2016年に惜しまれながらも廃業したオマス、そのフラッグシップモデルのアルテイタリアーナ パラゴンです。オマスそのものは引き継ぐような形で創業者を名を取ってアルマンド・シモーニ・クラブとして復活したのですが、新しい煌びやかなマーブルレジンより黒とシルバーの落ち着いたデザインの方が好きなのでこちらを選びました。

十二角形の軸は手に当たって痛いかもしれないと危惧していましたが全くの杞憂で、このカットのおかげで安定して軸を握ることができます。セーラー ブラックラスターのように首軸が金属でできており、低重心でペン先のコントロールがしやすくなっているところがお気に入りです。
また、前の3本と異なり、パラゴンだけは軸内部のタンクに直接インクを吸い上げる吸入式をとっています。そのためインクの持ちがよく、一日ノートに向かっていても楽々使っていられます。


その他 

シャープペンはカスタム74(HKK-1000R-B)を入れています。カスタム74のシャープペンには2種あり、上位モデルの1000Rは先端チャック方式を採用しているため芯を最後まで使い切れる優れものです。本を読みながらメモを取るときによく使っています。

ボールペンはピュアモルトプレミアム4&1を入れています。手が乾燥しやすい体質なので木軸は敬遠していましたが、なぜかこちらはぴったり手に吸いつくように馴染んだのでお気に入りになりました。万年筆には基本的に黒かブルーブラックのインクしか入れませんから、その他の色は必然的にボールペンを頼ることになります。ジェットストリームはどこでも替芯が手に入るのがありがたいですね。

消しゴムはモノを愛用しています。消字能力には文句のつけどころがありません。どの消しゴムを使っていても紙のカバーが破けてしまうことに悩んでいましたが、今は100均で売っている猫の引っかき傷防止シートを小さく切って紙カバーの上から保護しています。頑丈で水にも強く大変便利です。

筆箱はプロッター アニリンカーフのロールペンケースを使っています。非常に柔らかく、くたっとした牛革で、マグネット開閉なので取り出す時も楽です。実は新しいペンケースを注文しているためこれは繋ぎなのですが、繋ぎにしておくには勿体無いくらい良いペンケースです。



以上、だらだらとした乱文にお付き合いいただきありがとうございました。

紹介した4本の万年筆は、どれも女の私の手には太すぎ、大きすぎと言われるものかもしれませんが、手の力を抜いてゆったり書くと過度に力を入れて握り込むことがなく、ペンそのものの重みで滑るように書けるので、私の元に来てくれた幸運に感謝することはあれど後悔したことはありません。
もしも万年筆の購入を考えている方がいらっしゃれば、まずは実店舗で試し書きするのを強くおすすめします。snsやブログのレビューはほどほどに、インクを浸してあれこれ試してみることで、最初から身体の一部のように馴染むペンがきっと見つかると思います。

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