笑いが止まらない
個室、ハイヤー、秘書付き
大人が笑うのはこういう時だ
私がお笑い芸人のネタなどで笑うような愚行を犯すはずがない

この栄華は巷の流行に貢献したところによるものだ

流行といっても子供騙しだ

特定の界隈を席巻していた作品に投資して大衆化に成功したのだ

社にもたらした利益は莫大なものだ

あの特異な体質の集団を言いくるめるのには多少の労力を必要としたが

創造だか発想だか発明だか知らないが

とにかくだらしがない奴らだった

金と女に目を眩まさない惨めないきもの

当社の長年の実績と経験で蓄積したノウハウを用いて角をしっかり取り除いた

大衆は自分の理解が及ばないものには本能的に拒否反応を示すからだ

金輪際、現場と関わることはない

あれは私が富と地位を得るためだけにあったのだ

最初から最後までただただ不快であった

あれに魅了されるなどどうかしているとさえ思う

……

「お忙しいんですか」

時代のせいで息つく暇もないんだ

お陰で人脈には事欠かない

お誘いをお断りするためだけに
秘書を雇っているようなものさ

大型の投資案件で社内は対立している

株主訴訟を恐れて
浅はかにも反対する
役員に手を焼いている

当面は年次が足かせになりそうだ

……

深夜の公園なんかで
談笑している連中か

バンクシーが表紙の雑誌を、片手に

ちょっと無理すればコレクションできるかもな

10年も保有していれば

ん、

すいません

やっぱりか

バンクシー好きなのか

「好きなんだバンクシーが
でも絵はどうでもいいんだ」

……

帰ったぞ
お前覚えているか
久しぶりに会ったんだ
同じ学校にいた
猫背の

「大丈夫よ。あなたを馬鹿になんて
していないから。一度も。彼らは。」



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