世の中、いろんな事があるよね。

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ノート

思いがけない再会

その人のことは、もう、とっくに死んでいるものと思っていた。
 昨夜、馴染みのタイマッサージ店の従業員に誘われて、ある飲み屋に行ってきた。初めて行く店だった。そこは、タイ人が経営しているスナックで、店で働いている女性たちも、皆、タイ人だった。
 店に入って、すぐに先客のことが気になった。手前のボックス席で、おそらく夫であろう人と座っている女性がいたのだが、妙に顔が似ている。しばらくそれとはなしに見て

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拾ったテレビ

#引っ越し

 高校を卒業するとすぐに、都心近くのアパートに引っ越して一人暮らしを始めた。それまで片田舎で過ごしてきた俺は、そこでの暮らしをとても楽しんだ。今でもたまに、あの日々のことを微笑みとともに思い返す。

 アパートのすぐ近くに商店街があり、毎朝、そこの豆腐屋で、できたての豆腐を一丁買ってきて、それを朝食としていた。
 そこからもう少し歩くと、ボロボロの映画館があり、そこで毎週木曜日に、ス

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1年前の今日

1年前の今日、3月19日に、フィンランドに期待に胸を膨らませて上陸しました。それまでにもフィンランドには出張や休暇で何度も何度も来ていたけれど、エミールと住む、それだけのためにこの地にスーツケース2つだけ持ってやってきたのでした。エミールはわたしに内緒で、空港まで来て出迎えてくれてました(驚いたわたしは逃げ出してしまい、エミールは今でもそのことを冗談半分で根に持っている)。

あれから1年、途中で

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誇れるもの

四年が経った。3月11日。あの時、俺は茨城県牛久市の住宅街にいた。
 まず、地鳴りが聞こえてきた。
 外にいたので、航空機の音だろうと、最初は思った。
 しかし、その音はいやにながく、遠くから響き、不気味に耳にこだました。
 不快な重低音が、空気を、辺りを震わせていた。
 次の瞬間、大地が激しく横に移動した。
 地震だと気付き、その場で、足に力を込めて踏ん張った。立っていられないというほどではなか

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せかい食べ物紀行―第一話、パリとアップルタルトとトマトと玉子の炒め物

『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』という石井好子さんの名著を読んでいる。石井さんが今のわたしと同い年くらいの時に1950年代のパリに住んでいた時の回顧録であり料理本である。わたしもパリへは6~7年間行き来していたので、石井さんの文章を読んでいるとその思い出がまた輝きだし、途端にノスタルジックな気持ちに襲われる。

フランスについては以前『フランスについて、2014年の夏に思うこと』というテキ

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きれい好きオランダ人がやってきた-イギリス生活5ヶ月目

私が住む大学の寮ではキッチンは共用。最大で12人のフラットメイトとシェアすることになっている。
私が来た頃は、住人が少なかったし比較的シャイかつ料理をしない人が多かったのでキッチンが混むことは稀だった。私は、広ーいキッチンを自由に使っていた。

ただ、やはり共用なので、みんなが常に綺麗に使ってくれるとは限らない。
たまにシャイなフラットメイトが愉快なお友達を呼んでパーティをすると、翌朝のキッチンは

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ぶり返す記憶

記憶とは不思議なもので、過去の、取るに足りない微々たる出来事が、何かの拍子に、たびたび胸に去来する。

昨夜は、派手に痛飲してしまい、今日一日、ひどい二日酔いに苦しんだ。基本的に、あまり酒は強くないのだ。
二日酔いになると、決まって思い出すことがある。
二十代の頃、ある女性のアパートに転がり込んでいたことがある。その女性は、とてもエキセントリックな方で、酒は、ウイスキーのオンザロックしか飲まなかっ

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チップについて / La Mancia

イタリアに来てから始めたウェイターのアルバイトで、チップをもらうことがある。日本で6年間ホテルに勤めていたにも関わらず、いまだにチップを受け取るのは苦手である。今までの最も高額なチップは1万円。それも宿泊客ではないゲストからだった。  

ゴールデンウイークでごったがえしのロビーで、60代の日本人夫婦がそわそわしていた。神奈川からのご夫婦で、カメラと7-8万円の現金が入ったポーチを探していると言う

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選挙のバイト

漏れ聞くところによれば、安部首相が衆議院を解散したとのことで、近近、選挙が行われるそうだ。
そして今回の解散が、大義がないと騒がれているらしい。

俺、よくわかんないんだけれども、そもそも解散に大義って必要なの?どう考えても必要ないと思うのは俺だけかね。

まあいいや。選挙。

学生時代に、選挙のバイトをしたことがある。この仕事、はっきり言ってすごく楽しかった。ほら、ゲームでもスポーツでも、誰かと

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