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ゼネコン所属の建築設計者。最近アメリカから帰ってきました。米国滞在中に訪問した建築の感…

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ゼネコン所属の建築設計者。最近アメリカから帰ってきました。米国滞在中に訪問した建築の感想を、見学記としてしたためました。 twitter@kezama https://twitter.com/kezama

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建築目線からシカゴのApple Storeを見に行く

これが正しいことなのか、いささか自信がないのだけれど、設計者の端くれとして建築を見に行くとき、どうしても建物によって2通りの見方を使い分けてしまう。 ひとつは分かりやすくて、歴史的評価の定まった「名作」を見に行くとき。この時は、我ながらそれなりに純粋で謙虚な気持ちで見学していると思う。時代の到達点に感心し、卓越した空間や造形に息を飲む。本当に凄い建物のときは、気が済むまで佇んだりする。 もうひとつは、所謂「新作・話題作」を見に行くとき。このパターンになると、一転して大体い

    • 2020に20世紀をおさらいするということ: 建築見学記のあとがきにかえて

      平穏あるいは平凡な日常、もしくは予定というもののあてにならなさをただ噛みしめる数ヶ月間の挙句、僕の米国生活は終了した。 時を隔ててこの記事を読んでくれている方のために書き記しておくと、2020年前半のアメリカ合衆国は大変な苦難に見舞われた。悲しい出来事もいっぱい起きた。 ひとつめの苦難は新型コロナウイルスの流行だ。昨年末に中国で発生が確認された「COVID-19」。ニュースこそひっきりなしに耳にしていたものの、暫くはまさに対岸の火事って感じで、米国では僕や周りの人含めて呑

      • サーリネン と サーリネン

        はじめに・・・ 2020/04現在、コロナウイルスが世界中を大混乱に陥れ、アメリカも大変なことになっているのは皆さんご承知の通りだと思います。僕は地方都市に住んでいますが、一か月くらいほとんど外出しない日々が続いています。この記事ですが、米国がこんな状況になる少し前に行ってきた建築見学記になります。その点、ご承知いただければ幸いです。 米国が危機的な状況を脱出し、日本でも爆発的な感染増加・医療崩壊が起きず、誰もが健やかに・気兼ねなく外出できる日々がいち早く再来することを祈っ

        • 12月のテキサス / アゲイン(その②:ヒューストン建築散歩)

          前回の記事では、レンゾ・ピアノ氏設計の美術館「メニル・コレクション」について言及したが、ヒューストンは他にも見るべき建築が沢山あった。我々日本人からすると「NASA!」って感じのイメージが先行してしまうこの街だが、実際のところ全米第四の大都市で、文化的充実度も高い。 最近の見学記では、一つの建築・あるいは一人の作家について、ベッタリ、クドクドと感想を書くことが多かったが、たまには(?)淡々と建築紹介をしてみたいと思う。 ― Cy Twombly Gallery / Da

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          12月のテキサス / アゲイン(その①:メニル・コレクション)

          言わずもがなの、冬である。いやはや、米国北部の冬はやっぱりしんどい。当然東京より寒いし、空も終始どんよりしている。今年の初雪デーなんてハロウィンだったし。 そこで考えるのはやはり南への逃避。そう、去年に引き続き、「12月のテキサス・アゲイン」である。今回はヒューストンに向かうことにした。 とはいえ、前回の経験から「そうは言ってもそこまで温暖な訳じゃない」というのも織り込み済み。薄手のダウンジャケットくらいは着ておこう。ところがどっこい、ヒューストン国際空港に着陸すると拍子

          12月のテキサス / アゲイン(その①:メニル・コレクション)

          ニューヘブンにルイス・カーンを見に行く(その②:イエール・ブリテッィシュ・アート・センター

          やや後ろ髪を引かれながら、「イエール大学アートギャラリー」を後にし、斜向かいに建つ「イエール大学ブリティッシュ・アート・センター」へ向かう。 実はこの建物にはちょっとした思い出がある。約5年前に初めてのニューヨーク旅行で訪問した際、休館日でがっくり肩を落としたことがあるのだ。諦めるに諦めきれず、結局2日連続でニューヘブンに通って、ようやく中を見ることが出来た時の感動は、まだ覚えている。 つまり、ここに来るのは初めてではなくて、なんなら3回目なのである。脳裏に今でも焼き付く

          ニューヘブンにルイス・カーンを見に行く(その②:イエール・ブリテッィシュ・アート・センター

          ニューヘブンにルイス・カーンを見に行く(その①:イエール・アート・ギャラリー)

          気付けば大分時間が経ってしまったのだが、先日(というか先月)、コネチカット州ニューヘブンに行ってきた。目的はそう、ルイス・カーンが設計したイエール大学の2つの美術館。ひとつは「イエール大学アートギャラリー(1953)」で、もうひとつは「イエール大学ブリティッシュ・アート・センター(1974)」である。 これらの建物はキャンパスに斜向かいで立っているのだが、上記の通り、時期的には20年も隔たりがある。一方は(ほぼ)デビュー作で、もういっぽうは(ほぼ)遺作。今まで紹介してきたカ

          ニューヘブンにルイス・カーンを見に行く(その①:イエール・アート・ギャラリー)

          フランク・ロイド・ライト「入門」 (その②)

          ジョンソン・ワックス・ビルは、ウィスコンシン州のラシーンという小さな街にある。雄大なミシガン湖を望む美しい街だ。シカゴから車で一時間半くらい。そして、この街は、このビルのクライアントであるジョンソン財閥の企業城下町でもある。通りを歩くとあちこちに「Johnson」を冠したお店とか、銀行とか。きっと公共施設への寄付や出資もたくさんしている筈だ。 これもフランク・ロイド・ライトをめぐるポイントのひとつで、彼にとっての「優良クライアント」は、こうした地方の資産家が多かったよう

          フランク・ロイド・ライト「入門」 (その②)

          フランク・ロイド・ライト「入門」 (その①)

          先日、落水荘に行ってきた。おそらく世界で一番有名な住宅。言うまでもなく、建築家フランク・ロイド・ライトの代表作だ。ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外の、自然に囲まれた山中にある。 張り出したテラスの下に滝が落ちる、幾度となく本や雑誌で見てきた外観。実物はまさにそのままの姿で、なんか「問答無用」って感じの威厳があった。 外観のフォトジェニック具合とはある意味対照的に、一度建物の敷居を跨ぐと、この住宅を印象づけるのは「音」だった。そう、滝の音。よくよく考えたら、滝の上に住宅を作

          フランク・ロイド・ライト「入門」 (その①)

          「フランク・ゲーリーの建築」を見ながら思うこと

          前回の記事ではディラー・スコフィディオ+レンフロの「The Broad」についての見学記を書いたが、もちろん、その隣に建つフランク・ゲーリー設計「ウォルト・ディズニー・コンサートホール」も見に行った。実は、こっそりチケットを取って、ガラにもなく昼のクラシックコンサートを聴きに行ったりもした(最もリーズナブルなチケットは$20でけっこう安いのだ)。 米国の各都市を巡り歩いていると、本当にゲーリー氏の建築を目にする機会は多い。LAやNYCだけでなく、地方都市にも彼が手掛けた

          「フランク・ゲーリーの建築」を見ながら思うこと

          LAの【無料】美術館巡り(その②:The Broad)

          ロサンゼルスの無料美術館見学記。前回の記事ではその1つめ、リチャード・マイヤー氏設計の「ゲッティ・センター」について書きはじめたのだけど、案の定というか、脱線したりして長くなってしまった。が、今、本当に感想を書き留めておきたいのはもう1つのほう、「The Broad」だ。 ー 【無料】ミュージアムその2:The Broad改めて紹介すると、この建築は2015年にLAのダウンタウンにオープンしたミュージアム。隣にはフランク・ゲーリー氏のウォルト・ディズニー・コンサートホール

          LAの【無料】美術館巡り(その②:The Broad)

          LAの【無料】美術館巡り(その①:ゲッティー・センター)

          気づけばアメリカに来てから1年が経ってしまった。なんてこった!思い描いていた「滞米二年目のボク」に全然なれていない。英語ペラペラになる気配は未だ皆無だし、仕事場でもしょっちゅうオドオドしている。いっぽう、そんな体たらくなのに、日本人ゼロの職場で心身ともにピンピンしているあたり、自分もなかなかタフなもんだなぁ、と無意味に感心したりもする。 さて、そんな節目の季節に、ようやく念願の西海岸・LAを訪ねることができた。週末+αの弾丸旅行だったけど、駆け足で色々な建築を見た。その中で

          LAの【無料】美術館巡り(その①:ゲッティー・センター)

          「デコン」時代の残り香をたずねる(その③:オハイオ州立大学建築学科+α)

          「デコン(脱構築)」建築がなぜか数多くひしめく、オハイオ州の2都市(シンシナティ、コロンバス)の見学記。ここまでは、ムーブメントの牽引者であったザハ・ハディドとピーター・アイゼンマンの実現作について書いてきた。 「デコン建築巡り」という趣旨からは脱線してしまうのだけど、本記事では、通りがかりに訪れ、軽くショックを受けてしまった建物を紹介したい。何かというと、オハイオ州立大学の建築学科である。 ー オハイオ州立大学建築学科棟大学で6年間も建築学科に在籍した身としては、他大

          「デコン」時代の残り香をたずねる(その③:オハイオ州立大学建築学科+α)

          「デコン」時代の残り香をたずねる(その②:ピーター・アイゼンマンの建物)

          前回の記事では、「建築トランプ」なんていうプロダクトを紹介しながら、そこでデコン建築の「Q:クイーン」として登場したザハ・ハディドの初期実現作をシンシナティに訪れた。続いて今回見に行くのは、「K:キング」に君臨する建築家、ピーター・アイゼンマンの作品である。 ジョン・ヘイダックについてのエッセイで紹介したこともあるが、ピーター・アイゼンマンは1960年代に「ニューヨーク・ファイブ」として頭角を現した建築家。当初から一貫して難解なコンセプトと複雑な計画案を発表しており、後には

          「デコン」時代の残り香をたずねる(その②:ピーター・アイゼンマンの建物)

          「デコン」時代の残り香をたずねる(その①:ザハ・ハディドの初期作品)

          えらく唐突なのだけれど、今日は僕のちょっとした宝物を紹介したい。それは「建築トランプ」(商品名:PLAY ARCHITECTURE)。名前のまんまであるが、一枚一枚に建築が描かれたトランプだ。10年前くらいに買ってから大事にしている。渡米時の数少ない携行品に加えたくらいで、我ながら相当気に入っている。宝物とは言ってみたものの、今でも普通にamazonとかで買える模様。 このトランプで僕が好きなところは、その編集ルール。まず、4つの絵柄のそれぞれは、近代以降の時代区分に対応し

          「デコン」時代の残り香をたずねる(その①:ザハ・ハディドの初期作品)

          フィラデルフィアはまだ寒い (その②:ロバート・ヴェンチューリをたずねて)

          ロバート・ヴェンチューリの著書『建築の多様性と対立性』は、相場ではル・コルビジェの『建築をめざして』に次いで重要な20世紀の建築書とされている。 けれど、この本を読んでる建築学科の学生って、いまどのくらい居るんだろうか。正直あんまりいないんじゃないかなぁ・・と思う。もはや、最近は別に読むことも推奨されていないのかもしれない。ましてや、彼の作品については授業や設計スタジオでも殆ど言及すらされないのでは、なんて想像する。 いや、別に「最近の学生はマッタク・・・」的な、先輩風ポジ

          フィラデルフィアはまだ寒い (その②:ロバート・ヴェンチューリをたずねて)