逆襲のスパゲッティ
過去に捨てたものを指折り数える。そして、我々はとある事実に辿り着くのです。そう……失われし言葉の、どこか懐かしい響きに、ね。
どうも、喫茶店でナポリタンがあると興奮してしまうKHです。サイゼリアも好きです。
《シーン1》
みんな、昼食はなにを食べたのかな。
──蕎麦を食べました! うん、良いなぁ。
──焼肉ランチです! 羨ましいね。
──私はパスタを! 俺もよく食べる。特にミートソーススパゲ……。
はい、唐突ですが、とあるオフィスの光景をいま皆様に見ていただきました。昨今では上司が部下に昼飯のメニューを聞くだけでも、少しややこしい状況になりかねないが、そこは安心いただきたい。このオフィスは皆仲良しです。
注目したいのは最後の部分。そう、「ミートソーススパゲ……」のところです。
彼は果たして何を語ろうとしたのでしょう。映像はこのタイミングで切られており、我々に続きを見るすべはありません。
《シーン2》
──父さんから貰ったパンツだけど、どうも少し小さいみたいだな。
ほう。お前が子供の頃、俺が脱いだズボ……(電波障害にて視聴不能)を、まるで入り込むようにして洗濯機まで運んでくれたものだが。
──そんな昔の話! 忘れてしまったよ。
──あら、あなた。何を涙ぐんでいるの?
息子と酒を飲める日も、近いな……。
はい、幸せな家庭のワンシーンですね。息子の成長、父の涙とくれば名作でないはずがありません。しかし、これも一部視聴できない箇所があるようです。折角の感動的なシーンも、興醒めしてしまいます。
さて、いかがでしょう。
令和二十年に可決された「指定旧称規制法」により、我々は衰退名称に指定された言葉を、耳に入れずに暮らしてゆく事が出来るのです。
明日の昼食にパスタはいかが?
新調したパンツの履き心地は?
──おや、少し待ってください。駅前喫茶店で旧称違反の通報があったようです。なんでもメニューにナポリタンスパゲ……
追記:スパゲッティというのは、パスタの種類の一つみたいですね。いま店頭に並んでいる物は昔と変わりないのに(多分)、なぜスパゲッティという名称は廃れてしまったのだろう。
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