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持たざる者としての振る舞い~明治安田生命J2第24節 大宮アルディージャvsレノファ山口~

  こちらではお久しぶりです。ヒグチです。今週はベガルタがお休みなので、久々のnote企画をやろうと思います。

 今回は事前にアンケートを取ってみました。投票いただいた皆さん、ありがとうございました。

 ということで、今回はその中で一番得票数が多かった大宮アルディージャvsレノファ山口を取り上げます。では、行ってみましょう!!

スタメン

  大宮アルディージャは、ここまで10勝9分4敗の5位。プレーオフ圏内に付けている。監督も高木監督になり、充実の戦力と手堅い戦いで、ここまで結果を出している印象だ。しかし前節は上位直接対決だった京都に敗れている。連敗は許されない今節となった。

 前節採用した4-4-2から再びお馴染の3-4-2-1のシステムに戻した。スタメンも3人変更している。

 一方のレノファ山口は、7勝6分10敗の15位に付けている。序盤の成績は悪かったものの、ここ最近は結果が出ている。前節の新潟戦では土壇場で追いつき、勝ち点1をもぎ取った。

 今節のスタメンは、前節と変更なし。気になる佐々木匠はベンチからのスタートとなっている。

前半

(1)キックオフと序盤の山口の狙い

 キックオフは、そのチームのボール保持局面の狙いが透けて見えるとは、かの、らいかーるとさんの本で学んだことだ。

 そんなこの試合のキックオフは、山口が左サイドへロングボールを蹴るところからスタートする。だとすると、山口はおそらく相手陣内でサッカーをしたいのだろうなということが読み取れる。

  もう少し時計の針を進めると、序盤の山口の狙いがより明確になってくる。

 序盤の山口は大宮のサイドの裏へロングボールを蹴る回数が多かった。山口はサイド裏で前線がボールを受けることが狙いというよりは、大宮の陣形を押し下げ、相手が不利なエリア(相手陣地)と局面(相手が背中を向けている)から前プレを発動させ、そしてショートカウンターを狙っていく形を目指していた。

 実際に、ロングボールを蹴る→前プレを発動させ、セカンドボールを回収→カウンターからシュートという場面を作っていく。6分にセカンドボールを回収したところから高井が中央でシュートを放ったシーンがあったが、あのような形を狙っていたと思われる。

 そんなキックオフから山口の狙いが垣間見れた序盤だった。

(2)大宮のボール保持とそれに対する山口の2つの準備

 試合が進み、落ち着いてくると、次第にボール保持する大宮と、それに対応する山口という展開になっていく。

 ここでは、大宮のボール保持の狙いとそれに対して山口がどのような準備をしてきたかを見ていきたい。

 大宮のボール保持は、ボランチの石川もしくは大山がディフェンスラインに落ちて4-1-5ないしは、シャドーがインサイドハーフのように振る舞う4-3-3が主な形だった。

 試合中のリポートで、今週のトレーニングでボール保持のトレーニングをしていたらしく、相手が食いついたところを剥がしていきたいとの内容を話していた。

 そんな大宮に対して山口は2つの準備をしていた。1つは、前プレのとき。

 大宮のビルドアップ隊4枚に対して、山口は前線3枚がプレスする形となっている。普通に正面突破すれば数的不利になるが、山口はシャドーがサイドバック化した左右バック(吉永と河面)へのパスコースを消しながらプレスを掛けていた(カバーシャドウというやつ)。

 これで大宮のパスルートを中央に絞らせ、シャドーに出したボールを楠本と前が潰すという守備を行っていた。これが1つ目。

 2つ目は撤退時の守備。山口は5-2-3の陣形になる。このときは、シャドーは、ハーフスペースに立ち、相手シャドーのパスコースを消す。そしてサイドへと大宮のパスルートを誘導させ、徐々に限定させながら、大宮の攻撃を窒息させていった。

 このように山口は2つの準備をしていたが、お分かりの通りシャドーの守備タスクが重要になってくる。で、時々シャドーがタスクを間違えると簡単に突破されるシーンになることもあった。

 ただ、概ね大宮のボール保持に対しては、この2つのやり方で対応していたと思うし、危ないシーンを作らせてなかった印象だった。

 ここからは話が変わるが、大宮もボール保持時に全く工夫がなかった訳ではない。

 右サイドでは、石川、吉永、茨田、奥井の四角形から山口の前プレやブロックを剥がしていくシーンがあった。特に奥井は中へ入る動きで吉永と中外の関係を作り出しており、この辺はレーンの意識も多少なりとも感じられたシーンだった。

(3)山口のボランチの立ち位置

 撤退時、セットしたときの守備では問題をしっかり対応できていた山口。しかし、1つ問題な部分があった。それはネガティブトランジションだ。

 山口は前掛かりになると、ダブルボランチも高い位置を取る。よって奪われるとカウンターを浴びる場面が多かった。特に中央ではボランチと3バックのスペースがあり、そこを大宮が起点とすることで、カウンターを発動させるシーンを作っていった。

 大宮としては、自分たちがボールを持つことよりも、山口にボールを持たせてカウンターを発動させる方が、より効率的に攻めることができたように感じる。

 そんなところが垣間見れた前半は、スコア動かず後半へと折り返す。

後半

(1)サイドからの崩しを目指す山口

 前半は、序盤こそ山口がロングボールから前プレを発動させる展開を仕掛けたが、徐々に大宮がボールを保持し、それに対して山口が構える展開が続いた内容だった。

 後半も先に仕掛けたのは山口だった。前半よりもプレスの強度を上げ、大宮のボールを保持を阻害していく。

 前半の山口は奪ったボールを簡単にクリアしたり、パスミスをしたりするシーンが多かったが、後半はサイドを起点に攻め込むことができるようになる。

 前半はボランチの立ち位置がフリーダムだったが、後半は吉濱が前に、三幸がアンカー的な役回りになったことで整理され、三幸からの展開で攻撃がスタートするシーンが増える。

 特に高い位置を取るようになったウイングバックとシャドーがサイドで仕掛ける場面が増え、クロスの数が多くなっていった。特に三幸→川井への展開から仕掛けてクロスという場面が多く作られていた。

 加えて、シャドーの2人も相手ボランチの脇でボールを受けて攻撃をギアチェンジさせていくシーンが増え始め、次第に大宮のゴールへと迫っていくことができていた。

(2)ファンマのバトルエリアを変更する大宮

 一方の大宮は、後半開始から山口に押される展開で苦しい時間を過ごすことが長くなった。

 しかしそんな中でファンマが動き出す。

 前半開始から山口のセンターバック、菊池とのバトルを繰り広げたファンマ。菊池の執拗なマークに苛立つシーンもありながら第三者としては激しくてアツいバトルを見ることができた。

 そんなファンマは後半は中央でバトルすることよりも、サイドに流れてボールを収めることが増える。バトルエリアを変更したというわけだ。

 菊池はほぼマンツーマンでファンマに付いているため、サイドに流れると付いてくることもあった。後半はそれをうまく利用しながらファンマが流れて空いた中央のスペースにシャドーが入り込む狙いを持っていた。

 そして、68分に山口のスローインからトランジションが発生し、大宮のカウンターへと局面が変更。ファンマが落としたボールを大前が受け、中央にドリブルし、途中投入のバブンスキーへパス。バブンスキーのシュートは吉満に弾かれるものの最後は大前が押し込んで、大宮が先制点を奪う。

 ここまでしっかり守り、攻めにも出れた山口だったが、一瞬の隙を大宮に与えた形となってしまいった。

(3)攻勢を仕掛ける山口、ギリギリで守る大宮

 ビハインドを負った山口は、川井に代えて田中パウロを投入する。

 田中を投入することで、右サイドからの攻撃をより迫力持ったものにすることが狙いだったが、田中が孤立する場面が多く、後半始めのようなコンビネーションからの崩しはなかなか作りだせなかった。

 よって、吉濱に代えて匠。匠はボランチながらフリーマンとして色んな所に顔を出すこと、特に右サイドを助けること、そして3列目からの飛び出しを期待され投入されたが、堅い大宮守備陣になかなか入れる隙間がなく、苦労していた印象だった。

 そんな大宮は、バブンスキーがケガでアウトとなり、1枚余計にカードを切ることとなり、フル出場している選手には次第に疲労の色、また足を気にする選手が増え始めていた。

 そこを畳みかけたい山口だったが、ハードワークと堅固な守備を信条とする高木サッカーの牙城を崩すことができなかった。

 最後の最後までチャンスを作りだした山口だったが、大宮の壁を越えることはできずにタイムアップ。大宮が1-0でしぶとく勝利した。

最後に・・・

 持つ者・大宮と持たざる者・山口といった試合だった。試合を見直していくと、山口の準備してきたものや、試合中の修正などが面白く、内容もそっち中心となりました。

 準備してきたもの、そして試合中にしっかり修正できた山口にとって、あの一瞬の隙は痛かったし、逆に言うと大宮はその隙をしっかり仕留めたなという試合だった。それくらい差はなかったのかなと感じる試合だった。

 匠に関して言うと、今の山口でプレーするとしたらシャドーかボランチなのだろうけれど、やはり守備のところをどれくらいできるかがスタメンダッシュのポイントかなと。シャドーではさまざまな守備タスクが求められるし、そこにしっかり答えられるようになると、匠も山口で、そして後々は仙台で活躍することができるのではないかと、そう感じた試合だった。

 久しぶりに他チームの試合を書いてみたけれど、面白かった。またどこかでやりたいなと思います。

 また来週からはベガルタの試合レビューへと戻ります。よろしくお願いします。

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