見出し画像

ジローナのサッカーを見ていこう!~ラ・リーガ第19節 ジローナFCvsアラベス~

 さて、note企画第二弾です。今回はジローナとアラベスのゲームを取り上げます。

 なぜこの試合をチョイスしたかというと、今オフにベガルタ仙台の渡邉監督がジローナへと視察に行ったことが最大の理由です。

 ジローナの試合を分析することで、今シーズンの仙台が目指したいサッカーが分かる!、という訳ではありませんが、渡邉監督がジローナでどういうサッカーを見てきたのかは理解できます。

 ということで、渡邉監督が見てきたジローナはどういうサッカーをしているのかが今回のテーマとなります。

 また対戦相手であるアラベスは、低予算ながら第18節を終え、堂々の4位。チャンピオンズリーグ圏内に位置しています。アラベスのサッカーにも注目していきたいと思います。

スタメン

 ジローナはCFG、いわゆるシティグループのチームである。昨シーズン初のリーガ挑戦にして、パブロ・マチン(現セビージャ監督)のもとで躍進。ボールを保持するスタイルで10位という成績を収めた。

 今シーズンは、現役時代にレアルやバルセロナで活躍したエウゼビオのもと、ここまで9位という成績である。今シーズンは3バックと4バックを両方試しながらのシーズンらしいが、この試合では3バックを採用している。注目選手はフォワードのストゥアニ。ここまで得点ランキング3位の11ゴールを奪っている。

 一方のアラベスは、申し訳ないがほとんど情報がない。監督のアラベルトはスポルティング・ヒホンで指導者キャリアをスタートさせ、昨シーズン途中で降格危機にあったアラベスの監督に就任し、見事に残留へと導き、今シーズンの躍進へと繋がっている。

 システムはオーソドックスな4-4-2。聞いたことのある選手はあまりいないが、強いて言えば、ベンチに入っているスウェーデン代表のグイデッティくらいであろうか。

前半

(1)左で作って右で仕留めるジローナのボール保持攻撃

 まずは、ジローナの特徴であるボール保持攻撃から見ていきたい。

 ジローナのボール保持時のシステムは3-1-4-2である。その仕組みを一言で表すならば、「左で作って右で仕留める」だろう。

 ジローナの特徴はウイングバックにある。左ウイングバックでキャプテンのグラネルは、キック精度が高く、ゲームを作れるタイプの選手である。後半にボランチで起用されるほどだ。

 右ウイングバックのポーロは典型的なサイドプレーヤー。上下動を厭わず、縦へ積極的に仕掛けられる選手だ。この違いがジローナの攻撃を左右している。

 ジローナのボール保持攻撃は、左サイドからスタートする。左バックのファンペやグラネルからの前進がほとんどだった。

 ジローナはアンカーのドウグラス・ルイス、インサイドハーフのボルハ・ガルシアと先の2人でスクエアを形成し、アラベスの右サイドを攻略する。

 そして相手がずれたところ、相手の守備ブロックをボールサイドに寄せ、一気にサイドチェンジ。そこからポーロや2トップの一角であるポルトゥが右に張り、そこへボールを届け、一気にゴール前へとスピードを上げていくことが狙いだった。

 左で作って、右サイドの質的優位で仕掛けるジローナは選手の特徴を上手く生かしたサッカーを行っているなと感じた。

 また時間の経過とともに、アラベスは前プレの仕組み(4-4-2から4-2-1-3)を変更しているが、この時にはグラネルがフリーでボールを持てるように、インサイドハーフのボルハ・ガルシアがサイドバックをピン留めするプレーも見せている。

 相手の変化に対して選手が立ち位置を変化させ、対応させているところをしっかり相手を見ているんだなということが分かる。

 また、ジローナはポジティブトランジション(守備から攻撃への切り替え)の設計もしっかりしていた。

 ジローナは、ボールを奪うと真っ先に前線・中央で待っているストゥアニを見る。そこへ縦パス(レイヤースキップパス)を入れてストゥアニが収めて、後方から追い越すことでカウンターを発動させていった。

 12分の先制点のきっかけはまさに、ポジティブトランジションからストゥアニにボールを当ててからの攻撃である。

 奪った時にまずどこを見ておくべきか。そこをしっかりチームとして共有できている印象だった。

(2)課題が残っているジローナのボール非保持

 次にジローナのボール非保持(守備)について見ていきたい。

 ジローナのボール非保持のシステムは、ボルハ・ガルシアが一列上がって5-2-3を形成していた。

 3トップがビルドアップ隊に対して、積極的にプレスに行くというよりも、パスコースを限定させながらサイドに誘導させ、縦スライドしたウイングバックとシャドー(ボルハ・ガルシアとポルトゥ)が挟み込んでボールを奪うことが狙いだった。

 試合序盤の時間帯では、相手の4-4-2のボール保持に対して5-2-3でしっかり対応することができていた。

 しかしアラベスも前進するために、ボランチが列を降りる動きを行う。このことでシャドーがサイドバックへ引っ張られ、センターバックにボールを運ばれ縦パスを入れられる回数が増える。

 縦パスを入れた先で5バックがしっかり迎撃することで対応できていたが、シャドーはハーフスペースを埋めるべきなのか、サイドバックにそのまま付いていくか迷っていたので、この辺りの守備は課題なのだろうと感じた。

 またジローナは自陣でブロックを敷いたときに、カウンター要員でポルトゥを右サイドに張らせているために、中盤が3枚でスライドしなければならない。しかしスライドが間に合わずに、サイドからピンチになることもあり、この辺りのバランスもチームとして課題が残っている印象だった。

 前半は、12分にストゥアニが美しいバイシクルシュートを決め、ジローナが1-0でリードして折り返す。

後半

(1)巧みな修正を図るアラベス

 1点リードされたアラベスだが、後半になるとしっかり修正を行い、ジローナのウィークポイントを突き始める。

 前半でも書いたようにジローナの守備ブロックはポルトゥをカウンター要員で残しているので、3センターがスライドを頑張る仕様になっている。

 ここをアラベスが突く。左サイドハーフのブルギがポンスの脇に登場してボールを受ける回数が増える。前回書いたアグエロと似たような立ち位置だ。

 ポンス脇に立つことで、相手の第3レイヤーに侵入し、サイドバックのオーバーラップを促し、またボランチやフォワードの選手と連携することでジローナの右サイドを徐々に制圧しだす。

 このブルギという選手は前半は影を潜めていたが、結構うまい。ボールを受けてパスとドリブルどちらも選択でき、またいやらしいポジショニングもできる。おそらくアラベスの攻撃の中心は彼なのだろう。

 そして50分にその左サイドからジローナ陣内に押し込んで、同点ゴールを決める。

(2)それでも私たちの強みは右サイド

 同点に追いつかれ、しかもストロングのサイドである右サイドを制圧されたジローナだが、それでもなお右サイドからの攻撃を仕掛けていく。だって私たちのストロングだから。

 肉を切らせて骨を断つというわけではないが、アラベスの修正があっても、ジローナはポルトゥを下げて守備はさせなかった。このあたりは意地を感じるところだった。

 ジローナは、左のキープレーヤーだったグラネルをボランチへと動かす。前半に比べてアイソレーションからの攻撃が減ったのは、アラベスの守備の修正があってのことだ。グラネルを中央に配置し、中央からボールを散らす方向へと変える。

 しかし、中央をしっかり固めるアラベスの守備に対して、うまくハマらなかった。

 最終的に右サイドからのそのまま完結させる攻めが増えていく。右バックのアルカラからポーロとポルトゥへと早い段階でボールが渡る回数は増えていった。

 それでもアラベスの牙城は崩せず。アウェイで勝点1でも持ち帰ろうとゲームを締めに掛かったアラベスにうまくゲームを進めらてしまった。前半に比べると、ペナルティエリアに侵入する回数が減り、徐々に攻撃も裏へのロングボールが多くなってしまったのは事実だった。

 ということで、1-1のドローで試合は終了した。

最後に・・・

 ジローナは、ポジショナルなチームであるが、そこにしっかり選手の特徴が上乗せされて、どういう崩しをしていくかというのがチームとして明確だった印象だ。

 しかし、物事には表と裏があるように、その選手が対応されたときにどうするか、どう変化を加えるかは課題であり、戦力的に厳しい面があることも同時に感じた。ここはベガルタ仙台と抱えている課題は似ているなと思うところ。

 選手個人では10番のボルハ・ガルシアは面白い選手だった。組み立てに参加し、前線にも顔を出し、守備も厭わない。タスクは多いが、しっかりどれもこなせる選手であり、一番チームに不可欠な選手だと思った。

 一方のアラベスは、1試合だけでは評価のできないチームだと感じた。おそらく色んなことができるチームなのだと思う。相手に対して柔軟に対応できるチームといったほうがいいか。こちらは何試合か見てみないと、その全容は明らかにならないなと思った。といっても追うつもりはないのだが(笑)

 ということで、note企画第二弾は終了です。気が向いたらまたやります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?