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出現するテーマをどう解決するか~プレミアリーグ18/19第21節 マンチェスター・シティvsリバプール~

 初めてのnote企画です。こちらではベガルタ仙台以外のマッチレビューやその他諸々について書いていきたいなと思います。

 ということで、記念すべき第1回は、プレミアリーグのマンチェスター・シティとリバプールのゲームを取り上げます。

スタメン

 スタメンは上図のようになった。お互いにお馴染の4-3-3の布陣。

 首位・リバプールと3位・マンチェスター・シティの勝点差は「7」。今後の優勝争いを占う大事な一戦となった。6ポイントゲーム。


前半

(1)マンチェスター・シティのボール保持に対するリバプールの守備構造

 個人的な両者のイメージは、シティはスーパーボール保持チーム。とにかくボールを保持して、ポジショナルに相手を崩壊させることに命を懸けているチームだ。グアルディオラのチームなので、ほぼ説明は不要だろう。

 一方のリバプールは、前線3枚(マネ、サラ―、フィルミーノ)とクロップがいるので、激しいプレッシングと高速カウンターのチームだと思っていた。しかし、前節のアーセナル戦(5-1)を見るとスピードをストロングにしているが、守備では前プレだけではなく、時間帯やスコアによってさまざまな守り方(ミドルプレス、自陣撤退など)ができるチームだなと感じた。またボール保持の形も設計されており、色んな局面を器用にこなせるチームという印象である。


 この試合での最初のテーマは、スーパーボール保持チームであるシティに対してリバプールがどう守備するかという部分だろう。

 リバプールは他のプレミアのチームと違い、前からシティのボール保持に規制を掛ける。

 シティのボール保持は4-3-3。一方のリバプールも4-3-3で守備をセットする。

 1つ1つ分解して見ていきたい。まずは3トップは、フィルミーノがアンカーのフェルナンジーニョへのパスコースを消しながら2センターバックの前に立つ。両ウイングのマネとサラ―はサイドバックへのパスコースを消しながら、センターバックへプレスへと行く。両ウイングのセンターバックのプレスは、プレス発動の合図となっていた。

 続いて3センター(ミルナー、ヘンダーソン、ワイナルドゥム)は基本的に目の前のシティの3センターを見る形。ヘンダーソンはフェルナンジーニョにボールが入ったときに前へ出てきてフィルミーノとサンドする形を狙う。ミルナーとワイナルドゥムは2人のシルバを見ながら、サイドバックへボールが出たら、気合いのスライドで対応するというタスクとなっていた。サイドバックへボールが入ったときは、気合いのスライドをするわけだが、リバプールの3センターは、しっかり全体でスライドする。いわゆるチェーンが切れない。横の距離を保ちながら守備を行っていた。

 4バックは、3トップへの対応。前半開始から10分は、アグエロが降りたときにファン・ダイクがそのまま付いていくシーンが何度か見られた。

 またシティがリバプール陣内へ侵入したときは、11人がしっかり徹底するルールとなっていた。


(2)5レーン&4レイヤー理論からマンチェスター・シティのボール保持の問題点を考える

 5レーン+4レイヤー理論というのは、私たちベガルタ戦術藩である、せんだいしろーさんが提唱した理論です。

 簡単にいえば、5レーンに加えて、3ライン間+FW前のスペース+DF裏のスペースの4つのレイヤー(層)のエリアを定義することで、ピッチにおけるスペースを可視化し、戦略を考えやすく理論です。(当たっていますよね??)

 詳しくはしろーさんのこのブログを読んでいただければ幸いです。


 ということで、この理論を使ってシティのボール保持の問題点を見ていきたい。

 シティはリバプールの守備に対して、なかなか敵陣まで侵入することができなかった。

 レイヤーで表すと最初のレイヤー(1stレイヤー)と第2レイヤー(2ndレイヤー)ではボールを保持できても、その先である第3レイヤー(3rdレイヤー)や最終レイヤー(Lastレイヤー)へはボールを運べることができなかった、ということになる。

 では、そこへどうやってボールを届けるか、もしくは入り込むかというのがシティの次なるテーマとなった。ここで変化を加えたのは、前線でボールを待ち焦がれていたアグエロだった。


(3)きっかけは21分に。

 きっかけは21分のプレーだった。

 ビルドアップ隊がセンターライン付近でボールを保持するところからスタートする。

 コンパニがボールを持ったときにアグエロは、ミルナーの斜め後ろにポジショニングし、ボールを引き出す。そしてコンパニはレイヤースキップパスで、アグエロへボールを届け、第3レイヤーへと侵入に成功し、リバプールを押し込むことに成功する。

 ここでのポイントはアグエロがボールを受けられるようにサネとD・シルバがロヴレンとアーノルドをピン留めしていることである。ここが憎いシティ。誰かがボールを受けれるように周りが助けてやるという理想的なポジショナルアタックを展開できる。まさにお手本。

 このプレーをきっかけにシティはアグエロだけではなく、さまざまな選手が登場し、ボールを受けることで、リバプールの敵陣へと侵入し、押し込んでいくことに成功していく。21分は形勢逆転の瞬間だった。

 また41分のシティの先制点も、類似した形からリバプールの最終レイヤーへと侵入してからの波状攻撃だった。

 コンパニがサネへスキップパス。サネがラポルトへ落として、縦のパス交換から最終レイヤー突破だった。

 ここでもD・シルバがロヴレンをピン留めからの引っ張る動きで中央に穴を開けたのは巧みなプレーだった。

 もちろんアグエロのゴールはスーパーだったが、それまでのシティのリバプールを押し込む流れには、しっかり伏線があり、狙いを持った侵入からのゴールと言えるだろう。

 ということで、ホームのシティが先制して前半を折り返す。


後半

(1)ボール保持攻撃からの打開を目指すリバプール

 次なるテーマは、先制を許したリバプールがどのようにシティからゴールを奪うかに移っていく。

 ざっくり言うとリバプールは、ボール保持攻撃からシティを押し込んで同点を目指す形を取った。

 前半のリバプールのボール保持攻撃に対して、シティはアグエロと2人のシルバがセンターバックとアンカーを掴まえ、フェルナンジーニョと両ウイングがその後ろをカバーする役割となっていたが、両ウイングの守備の基準点(自分が誰を見るのか)が曖昧なことに加え、絞り切れてもないので、フェルナンジーニョの脇がガラ空きになるということが多かった。

 17分にリバプールが中央突破から決定機(最後はストーンズがラインギリギリでクリア)を作りだしたが、あれもリバプールのボール保持からの流れだった。

 バランスの悪いシティの守備に対して、ボール保持からチャンスを見出そうとするリバプールだった。


 しかし、シティも修正を図る。スターリングとサネをしっかり絞らせるようにし、中央を簡単に使わせないようになる。特にネガトラでは、中盤・中央で即時奪回できるようになり、リバプールにペースを握らせず、むしろシティがボールを保持できる時間が長くなった。


(2)ファビーニョ投入とサイド攻撃

 後半スタートから思うような試合を展開することができなかったリバプールは、57分にミルナーに代えてファビーニョを投入する。

 この交代でリバプールは4-2-3-1にシステムを変更する。

 ファビーニョを投入した最大の意図は幅を使った攻撃を行うことだった。それまでもサイドからの大きな展開でチャンスを作り出していったリバプールだったが、ファビーニョをボランチに投入することで、ボランチからサイドへ少ないタッチで展開することができ、これでシティの守備を下げさせることに成功する。

 またダブルボランチになったことで、シティの前プレ隊に対して4vs3と数的優位を作れるようになり、前進を容易にしたこともこのシステム変更の大きなメリットだった。

 そして64分に同点ゴールが生まれる。サイドバックを高い位置に上げ、サイドに大きく揺さぶり、シティの陣形を広げるとアーノルドのクロスからファーのロバートソンが折り返し、フィルミーノが合わせて試合を振り出しに戻す。リバプールは狙いだった攻撃でゴールを奪えた。


(3)質的優位vs質的優位

 シティは失点直後にギュンドアンを投入し、中盤を再整備する。

 ここから先はお互いの3トップの刺し合いのような展開となる。どっちの3トップが優れているか大会みたいな。なので、展開も縦に忙しくなり、行ったり来たりを繰り返す。

 このまま逆転を狙いたいリバプールは3トップ(本当は3トップじゃないけど)に早くボールを付けるようになる。しかしそこに立ちはだかるコンパニを超えられない。

 奏功していうちに71分にリバプールのカウンターから、それを奪ったシティの逆カウンターの展開になり、最後はサネが決めて勝ち越し。

 同点から5分後の出来事だったのでリバプールとして試合運び的にどうなのかな?とは思うが、スピード勝負するところがきっとリバプールなんだろうなと思う。

 その後のシティは、ギュンドアンが中盤を締めるようになる。

 フェルナンジーニョを援護する形で、アンカー横をカバーし、リバプールに中央をやらせないというポジションを取る。地味だったが、このプレーは大きかったように思える。

 

 リバプールはシャキリ、スタリッジを。一方逃げ切り体制になったシティはウォーカーとオタメンディを入れて守備の強化を図る。

 最後はファン・ダイクのパワープレーに出るも、中央を固めたシティの牙城を崩すことはなかった。

 ファイナルスコアは2-1。マンチェスター・シティが首位・リバプールとの差を4に縮めた。


最後に・・・

 上位対決、ビッグマッチに相応しい激しいゲームだった。ラスト10分のシティの必死さがこのゲームがどれだけ大事かを物語っている。

 印象に残った選手はフェルナンジーニョだった。あのハチャメチャなシティの守備構造のなかで、よくあの中央を守れるなと。そして絶対にセカンドボールを奪い取るあたりは化け物。文中には登場していないが、フェルナンジーニョはとにかくすごかった。

 プレミアリーグもこの結果により、優勝戦線が面白くなってきた。Jリーグが始まってしまうと、どうしてもそっちに行ってしまうが、今シーズンは余裕があればこのまま継続して追いかけたい。


 ひとまずnote企画第一弾は終わりです。こうやって時々アップしていきたいと思います。よろしくお願いします。

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