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東近江市長の炎上の先に

 小椋正清東近江市長の炎上は発生から3日目の朝を迎えるがいまだ鎮火せずに延焼している。昨日の記者会見を各マスコミが報じたことや朝日新聞が滋賀県首長会議での発言を文字起こしして期間限定で全文無料公開をしたからだろう。

 しかし、少し気になったことがある。テレビ各局の画面右上に「提供 滋賀県」「滋賀県 音声提供」と小さくあるのだが、滋賀県は首長会議の音声を小椋市長の了解を得て提供しているのだろうか。得ていればそれでよいのだが、もし得ていなければ会議の事後に小椋市長だけを間接的に不利に追い込んでしまうことになっていないだろうか。

 いまだにマスコミのみなさんは、会議の場で知事や県職員、他の市町長などの出席者が小椋市長の発言に対して厳重に注意したり指摘したりしたかどうかについて報じようとしていないが、小椋市長は翌日の会見で「“言葉足らず”になってしまうときがあるし、“アグレッシブな言葉”を使ってしまう。極端に言いすぎたかもしれない。不適切発言と言われることに非常に心外な気持ち」と釈明するとともに、「フリースクールを支援するために税金を使うなら、フリースクールの基準や資格などの枠組みをしっかり作ってやっていかなければならないという問題点を国や県に提起したつもりだ」と発言している。少なくとも県はこれを強く否定しなければ、小椋市長の発言を追認したことになるだろう。

 しかし、この首長会議の前に開かれた知事定例記者会見では、「不登校のことに関連してなんですけれども、県内の市町で保護者への補助がある市町がある一方でない市町もあって県内にばらつきがあると思うんですが、ひとつのフリースクールにいろんな市町から通われて、そこでの不公平感もあり保護者の方からも出ているんですけれども、県全体として保護者への補助だったり民間のフリースクールへの補助を考えて行かれるご予定はないんでしょうか」という記者からの質問が出ていた。これは小椋市長の指摘に通じる質問だ。

 それに対して三日月大造知事は、「まず、こういったフリースクールに対する補助っていうのは憲法第89条との兼ね合いでなかなか難しい面もあると承知をしておりますと同時に、フリースクール等に通う保護者に対する支援っていうことについて言えば、確かにおっしゃる通り県内市町によって行っている市と町とそれがない町とがあります。そういうことについてどういうふうに考えるのかっていうこともこれからのこのテーマの重要な論点だと思います。ただ、これもまあ県でじゃあ一律にやればいいかって言うと、それぞれの市町の考え方もありますので、そこの共通認識というものを持つところから始めていかなければならないというふうに思います」と答えているのである。

 つまり、税金を使うなら国や県で基準をつくれ、そうでなければフリースクールに雪崩を打って転校されて市町の財政が持たないじゃないかという小椋市長に対して、三日月知事のいやいや県で一律負担はどうかと思うので市町で共通認識を持って負担していただいて結果的に県内一律が実現できればいいのではありませんかという、県と市町の財政負担の押しつけあいだと見れば構図がより分かりやすくなる。

 そこに「国家の根幹を崩しかねない」「不登校は親の責任」などの小椋市長の主観が入り込んだために話をややこしくしているのであるが、元をただせば財政負担問題なのである。なのでおそらく会議の出席者は誰も小椋市長の発言を止めずにスルーしたのではないかと気にしているのだが、そこは一向にマスコミが報じようとしないところでもある。

 とりわけ三日月知事が小椋市長の考えを明確に否定したかどうかが焦点なのであるが、正面から否定すれば他の市町長を巻き込んだ県対市町のバトルになると判断して発言をスルーしたとすれば、それとともに小椋市長の主観も黙認したということになってしまう。そのため、スルーしたのかどうかを県民が知ることこそが大事なのだが、続報がないということはスルーして何事もなかったのかもしれない。

 前時代的な小椋市長の発想は致命的な問題を含んでいるが、逆にフリースクールについて政治家がこれほど注目を集めることに貢献したことはないだろう。本来であれば県と市町が一致団結して国に対して制度疲労の著しい地方教育行政のあり方の検討を求めるべきところ、県と市町の財政負担問題に矮小化されて発言を抑えているのであれば残念なことである。

 その点を記者会見や首長会議を直接取材した記者にしっかりと報じてほしいと願うとともに、今後は音声データが政治的な利用をされないようにその取り扱いについても予め首長会議で申し合わせておき、何なら誰でも見られるように最初からYouTubeででもライブ中継をしておけばよいようにも思われるのである。

追記
財政審議会=財務省の発想がこの程度であり、文科省がそれを理論的に説明できていないのであれば、現場からのエビデンスで説得できるような制度改革をしなければならないのに、ということなのです。https://news.yahoo.co.jp/.../d00558d3dea80a80cfac2c693364...

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