透き通る優しさ

 天気が良かったから、思わず散歩に出てしまった。寒くなってしまったが、それでも散歩をしたくなるのは、空が透き通っている気がするからだ。夏に空を見上げると、青の色が冬より鮮やかに思える。晴れた雲一つない空は、いつ見ても、とても清々しい。青空に包まれたときは、とても幸せな気分になれる。
 季節によって、青空は微妙に異なる表情を見せてくれる。春は、さやわかだ。夏は、溢れるエネルギィに圧倒される。秋は、凛とした佇まいが存在する。そして、冬は綺麗に澄んでいて、曇り一つない、ガラスのように見える。

 この中で一番好きな青空は、冬が一番だ。透き通ったガラスのように、空を見ていると、どこまでも奥が深く、綺麗に濁りがない。些細な悩みもどうでもよく思える。こころが洗われる。そんな気分にさせてくれる。綺麗な感情になれると、自分はもう少し頑張れると思える。
「なにか考えごと?」声をかけられて、振り返ると、よく知っている人がいた。どうやら、買い物から帰ってきたらしい。
「今日の晩御飯、なににしたの?」
「ブリが安かったから、買ってきちゃった。あとは、簡単なサラダかな?暇なら、帰って、手伝ってよね」
「もちろん」と答えると、屈託もない表情で笑う。なにかに似ていると思う。

 しばらく見ていると、今度は表情が曇ってしまう。表情が変わってから、気が付いたが、なにも言わずに黙って見ていれば、怪しまれるか、心配されるだけだ。
「どうかしたの?考えごと?」心配そうな表情で覗き込まれる。
「大丈夫。たいしたことないから」
「なに、なにかあったの?」
「いや、空に雲一つないなぁと思って」
 僕が行った言葉を受けて、空を一緒に見上げる。しばらく見てから、再び目を合わせる。
「確かに、雲一つないね。いい天気。でも、冬だと天気がいいほど、寒くなっちゃうんだよね」
「うん、そうだね。まったくだね。寒いなら、さっさと家に帰ろうか?」
「うん、そうしよ」

 互いにうなずきあって、並んで歩き出す。 
 買い物袋を持っている姿を見て、「持とうか?」と声を掛けると、買い物袋を持っている自分の手を見て、それを黙って差し向けてきた。
「じゃあ、よろしくね」と言われ、それを受けとった。
 さきほどの質問はもう忘れてしまったのか。もう聞かれることはなかった。残念のような、安堵したような、複雑な気分だが、屈託な笑顔を思い出せば、気にすることでもないと思える。
「いつもありがとう」と言ってみると、突然の言葉に困惑しながら、「なにが?」と言って、笑っていた。
 寒空の下、綺麗な空と同じくらい、透き通る優しさが温かく思える。それに対する感謝の気持ちを、曖昧な言葉で綴っても、通じてしまう。また、すぐそばに屈託ない笑顔が浮かんでいたからだ。

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恋話な物語

書いてて恥ずかしい・・・。でも、辞められない!
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