愚かしさと偶像に迷う その2

 男に付いて行き、30分程度が経っただろうか。下っていることはわかるが、地図のどの辺りを歩いているのか、やはりわからない。そんなに外れた道を歩いていたつもりはなかったが、検討違いの場所を歩いていたということだろうか。それとも、騙されているのか。そんな疑念が生まれてきて、道案内をしてもらっている身だが、少し苦情を言いたくなる。

「こっちで本当にあってるんでしょうね?」

 聞くと、相変わらず、フードを深く被り、表情がわかりにくい状態で、男性は答えた。

「間違いない。この道は観光客があまり通らないから、人がいないんだよ。どうせ、人の通りがないなら、疑ってるんだろ?」
「別にそういうつもりはありませんよ」

 男が言うことは、正しかった。人に助けてもらえるから、てっきり通ってきた道まで戻れることを想像していた。しかし、予想と大きく異なっている。そのことが、苛立たせる原因となっている。聞いているだけで、通常の道では無さそうだ。正規の道でないならば、どういう道なのか、彼から話を切り出すつもりもないようだ。さきほどの会話のあと、再びの沈黙が訪れようとしていた。

「この道は、どういう道なんですか?観光客が通らないって、危ないってことですか?」
「たいした話じゃない。道が塗装されているだろ?登ってきた道はかなり違うんじゃないか?」
「確かに。来たときは、道が泥濘んだりしていた。それが今の道は、足の下はアスファルトですね」
「そういうことだ。この道は、山登りとしては、つまらない。雰囲気も出ない。だから、誰も通らない。最近では、ガイドブックの地図にも載せていない。商業的に一部の連中が使っているだけだ」
「地元の人が知っている、裏道って、やつですか?」
「まぁ、そんなところだ。しかし、時間は余計にかかる。なぜなら、この道は、かなりの遠回りだからな」
「それだったら、ちゃんとした道を案内して欲しかったですね」
「ガイドじゃないんだから、自分の好きなように山を下る。悪いことか?」

 彼のあとに付いていくことが、今はもっとも利口だとわかっている。しかし、その態度は、なんだと言いたくなる。

「わかりました。ありがとうございます。しかし、こちらの意見も聞いてもらえると助かります」

「お前の意見を聞いたら、どうなる?きちんと麓の道まで辿り着くのか。他の人より早く辿り着くのか。迷子になるような人間の意見は聞かない」

 全て図星だった。まるで心が読まれている。余計に苛立ちを覚えるのだった。

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いつもありがとうございます。最大級の感謝を!
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しょうもない

変な話を書いてみた。
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