降り立った地で その231

 地下鉄に乗って、再び市街地の中央にある駅に戻ってきた。午前中に地下鉄探索を終えたため、その帰りに昼食を食べようという話になったからだ。中央の駅から近いエリアは、かなり歩き廻っているため、かなりわかっている。しかし、なにを食べるか、あまり話し合っていなかったため、地下鉄の電車内で話すことになった。その結果、2日目に行ったピザ屋で食べることになった。
「あのピザ屋って、どこだっけ?」
「え、なに。また覚えていないの?」
「前は王宮の方から行ったからね。今日は駅からだから、方向が少し違うし」
「場所くらいわからないの?」
「地図上ではわかるけど、たぶん、あっちかな」
「本当に大丈夫?」不満そうな表情をしている。当たり前だが、こんな調子では呆れられるのも当然かもしれない。

「だ、大丈夫。信じて」どうにか取り繕って、自信があるような言い方を心がけたが、彼女が僕を見る目からして、信頼が得られている様子はあまりない。
「まぁ、いいけど。私だって、場所をちゃんと知っているわけじゃないから、付いていくしかないんだし」
 彼女が僕に対する文句を述べながら、並んで歩き始める。僕が少しだけ前に出ているが、並びと歩く速度はほとんど同じくらいだ。歩いている間も、彼女は周囲を注意深く見ている。人任せにせずに、自分でも探そうという意思に思える。それくらい、僕の先程の発言は、無責任過ぎたかもしれない。
「ねぇ、こっちで合ってる?」
「合ってるよ。だって、ほら、お店が見えてきたよ」
「あ、本当だ。良かった。やるじゃん」安心した表情になり、笑顔が戻る。
 店前には、数人が並んでいる。相変わらず、行列が存在するらしい。やはり人気店である。しかし、長く待つことはないだろう。以前訪れたときも、長時間並ぶことはなかったし、前回よりも並んでいる人が少ない。予想では、10分程度で中に入れる気がする。

「また並んでいる。寒いから、中に早く入りたいな。そんで、美味しいピザを食べたいな」
「なにを頼もうと思っている?」
「前に食べて、めっちゃ美味しかったやつがあるじゃない?あれを頼むの」
「僕も同じものにしようと思ってた。二人とも同じだとあれだし、一つは別にしない」
「うぅん、じゃあ、私が違うものを頼もうか?」
「いいよ、僕が違うものを頼むよ」
「そう?じゃあ、私はあのピザを頼もうと」
 彼女に譲ったが、僕も本当は食べたい。困った場合、同じものを頼もうと思う。そうなったら、彼女からなにか言われるかもしれないが、結局喜ぶような気もする。

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旅行記小説

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