チョコが遅れてやってくる その4

「ごちそうさまでした」

 満足そうな表情をしている彼女を見て、安堵する。脂っこいものを避けて、あっさりとした、野菜多めのメニューを揃えたため、疲れた様子の彼女には、見事に合っていたようだ。作ってから思ったが、自分も同じメニュを準備して食べればよかった。目の前で美味しそうに食べている様子を見ると、食欲が湧いてきた。一人の場合でも、少しくらいは工夫しようと、今後は考えを改めたい。

「それにしても、今日も遅かったね」
「あ、うん、まぁ、そうね」

 珍しく歯切れが悪い。やましいことがあるはずがないと思っていたが、この様子はどうも怪しい。ひょっとしたら、これは少し疑った方がいいのだろうか。あまり得意ではないことだけに、気づかなかった振りをしようかと悩む。

「気になる?」
「そりゃあ、気になるかな。だって、2日連続だと、なにか理由があるんだろうと思っちゃう」
「まぁ、でも、もう終わったから」
「終わった?」

 その一言で余計に気になってしまう。なにかの準備をしていたということだろう。そのなにかがわからないが、友達の誕生日祝いとか、そんなところだろう。

「誰か、誕生日近かったっけ?それとも、僕が知らない人?」

 あまり深入りするつもりはないが、これくらいなら聞いて大丈夫だろうと思い、言ったところ、彼女が呆れた表情をしたあと、すぐになぜか嬉しそうに笑った。

「あれ、気が付いてない?」
「な、なにに?」急な表情の変化に戸惑いつつ、自分に関係することかと、ようやく気がついた。しかし、それがなにかがわからない。
「鈍感?」
「だから、なにが?」
「バレンタイン」
「それは・・・・・・知ってる。ん?」

 言われてから、気が付く。しかし、もう日が過ぎたし、諦めていた。てっきり、もう忘れたものだと思っていた。

「ちょっと待ってね」と言って、鞄を取り出し、中を漁り始める。その鞄は、帰ってきたときに持っていたものだ。
「はい」差し出したものは、綺麗にラッピングされた、明らかにお菓子を梱包しているとわかるものだった。

「なに、これ?」
「バレンタインチョコ」
「わすれてるかと思ってた」
「忘れるわけないじゃん。そんな大事なこと。時間がかかってごめんね」

 申し訳なさそうに笑っている彼女に、なにも言うことができない。

「手作りだから、しっかり味わって食べてね」
「え?」驚いて、またなにも言えない。
「友達に頼んで、教えてもらいながら、作りました。味わって食べてね」

 思いがけず、訪れた幸福感にどうしようもなく、気の利いた言葉が出てこない。

「い、一生の宝にします」
「それじゃ、腐っちゃうでしょ。早い目に食べてよ」

 ようやく返した言葉に呆れながらも、彼女は照れて、笑っていた。

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恋話な物語

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