飛んでみる その5

 適当に選択して、1時間程度映画を見たが、途中で観ることを止めてしまった。面白くないわけではなかった。なかなか捻って作られた、ミステリアスなストーリィが意外と、なかなか面白く、あっさりと1時間が過ぎていた。しかし、19時となると、体の方が黙っていなかった。空腹を知らせる、腹の音が鳴った。そして、タイミングよく、キャビンクルーが機内食を配り始めた。さすがにそれを見てから、無視して、映画を観続けることはできない。食事を知らせる、キャビンクルーの声に反応して、彼女も自然と起きた。

「うーん、よく寝た」
「本当によく寝たね」少し恨みがましく言ってみる。置いて寝かれた身として、少しだけ恨みがある。たいしたものではない。本当に小さなものだ。
「あ、機内食配ってるの?ちょうどいい。お腹すいたぁ」

 言った恨み節は、まったく耳に届かなかったらしい。大変よいことだ。聞こえないくらいに言うことが大切だ。

「なにがあるの?」
「チキンとビーフだって」
「鶏肉と牛肉?肉ばっかりじゃない?」
「野菜は、どちらも入ってると思うよ」
「それはわかってる。でも、なんか他のものがいい?」
「カレーとか?」
「あ、それいい」彼女が非常に嬉しそうに反応する。的を射た意見だったようだ。叶う見込みはないだろうが。
「機内食には、それはないよ」
「だよね。まぁ、美味しければ、なんでもいい」
「それは、まぁ、そうなんだけど・・・・・・」

 機内食で美味しい味ということが想像できない。これは両親から聞いただけだが、飛行機の機内食は、とにかく美味しくない。進化はしているだろうと思っているが、そんな先入観が完全に支配しているため、期待値はゼロに近い。

「機内食って、美味しいのかな?」

 答えを知らないだろうと思い、聞いたが、面白い答えが返ってきた。

「空腹は、最高の調味料よ」
「な、なるほど」

 どこかで聞いた言葉だと思うが、思い出せない。しかし、彼女が言った言葉は、間違いなく、真実だ。しかし、そんなことを言ったら、料理を作った人に失礼になる。もっとも、機内食を作った人は、この飛行機には乗っていないだろう。

「あぁ、でも機内で食べるから、きっと飽きない味に違いないわ。楽しみ」

 起きたばかりの彼女は絶好調だ。この調子が飛行機に乗っている間、続けば、きっと賑やかで楽しい旅になるだろう。そんな期待を持ったが、食事が終わると、またあっさりと眠りについた。さすがと唸るしかなかった。そして、機内食は期待に外れて、意外と美味なもので、まさかの満足感を幸いに頂戴することができた。

続く

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旅行記小説

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