最後の選択肢

 最後の選択といえば、究極の選択というより、諦めの境地に近いだろう。選択肢というものを考える場合、ある程度予測を立てるものだ。それが誰かの動きなら、どの位置に、どの時間で、どう行動しているか。予測した未来があるから、それに対する対策として、選択肢を幾つも用意しておく。すべて同じ未来にたどり着くなら、選択肢というものは必要ないだろう。もっとも残念な場合は、まったくもう予測が立てれない状況に陥ったときだ。
 連絡がつかない。約束をしたことは覚えている。しかし、夕方ということしか聞いていない。加えて、出かけたあとにスマホを忘れていることに気がつく。そして、相手からはなんの連絡もないし、スマホを取りに帰ってくる様子がない。その場合、どうするべきか。僕がようやく出せた解答は待つことだ。約束した場所で、予想できる時間帯に、ひたすら待つ。
 そんなことがあり、2時間くらい待っただろうか。さすがに自宅に帰っているのではないかと思って、席を立とうとしたところで、ようやく姿を現した。

「けっこう待った?」
「かなり待った」長い時間の鬱憤を少し晴らしたく、誤魔化さずに言ってしまう。
「だって、夕方って言ったじゃん?」
「夕方と言っても、人によっては、16時かもしれないし、17時かもしれない。結果として、18時だったけどね」
「もうちょっと詳しい時間を聞いてくれればよかったのに」
 そう言われ、まさかと思って聞いてみた。
「スマホ忘れてるの気がついていない?」
「え?あれ、鞄の中に入ってない?」
「僕が持ってるよ?」目の前に差し出すと、驚いた表情をした。
「あれ、ごめん。そっか。そりゃあ、連絡できないね」
「まさか、いままで気が付いていなかった」
「そのまさか。だって、友達と一緒だったからね。見てる時間もなかったし」
「まぁ、いいけど」
「お詫びに、なにか美味しいものを食べに行く?どこでもいいよ」
「激辛麻婆豆腐」
「それはパス」
 それは僕も賛成だ。言ってはみたが、あまり食べたいものでもない。

 最後の選択肢が正しいかはわからないが、僕が思いつく最後の手段はこれしかない。ときを待つしかない。もう行く宛も手段もないとしたら、この手しかない。これは誰にとっても、そうなのではないかと思う。

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くすぐるの誰や

ノベルか、エッセィか。たぶん、ノベルがメイン。 なにかあれば、こちらへ:kiarohibear@icloud.com

しょうもない

変な話を書いてみた。
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