飛んでみる その7

「おーい、起きて」

 体を揺する感覚と、彼女の声で起きた。気が付けば、かなりの時間を睡眠に費やしていた気がする。

「今、何時?」
「3時だよ。けっこう寝たね」
「確かに、だいたい5時間くらいか?」
「あと、どれくらいで着く予定だっけ?」
「ちょっと待って・・・・・・」

 機内に持ち込んだリュックを探り、中から旅行会社から送られてきた、ツアープランに関する資料を取り出す。その中のひとつに今回の旅行について、日程が記載されていたはずだ。それを見れば、飛行機の到着時刻がだいたいわかる。あくまでも、記載している時間は、予定ではあるが、飛行機が遅れた分も合わせれば、予測がつく。

「あと、1時間くらいかな?」
「1時間?もう着くじゃん」

 飛行機に乗っている間、ほとんど寝ていた彼女からしたら、確かにそう思えるかもしれない。あっという間だったに違いない。長時間のフライトが暇であることを予想して、機内に持ち込んだタブレットに映画や音楽、娯楽となるものをかなり入れていた。それがあまり役立たなかったから、その反応もわからなくはない。

「全然持ってきたタブレットが活かせていない・・・・・・」
「帰りの飛行機で使えばいいじゃない」
「それはそうだけど・・・・・・まぁ、いっか」
「無事に目的地にたどり着けば、問題なしだよ」
「そうね。じゃあ、もうすぐ着くし。とりあえず、精一杯楽しもう」

 そう言ってから、再び旅行ガイドブックに手を伸ばす。もう一度復習でもするのだろう。せっかくここまで来たからには、体力をしっかり温存しておいて欲しい。彼女にとって、飛行機の中でしっかり眠れたことはプラスに違いない。逆に、あまり眠れなかった自分は、現地に着いてから、眠気に翻弄されないか、不安である。そんなことを考えている間に、重要なことに気が付く。

「しっかり寝たし、準備万端」
「そうだね。でも、ひとつだけ」
「な、なに?」

 旅行前に話はしていたが、自分も忘れていたことを思い出した。意表を付かれたように、なにごとかと不安そうな表情をしている彼女には、申し訳ないが、事実は事実として、しっかり伝えないといけない。

「時差の問題で、飛行機が到着すると、向こうは20時くらい」
「えっと・・・・・・・ということは?」
「着いて、ホテルに移動して、晩ごはんを食べたら、すぐ就寝かな?」

 元気満々な様子だった彼女は、完全に固まった。予想していた通りの反応だった。

「体力が有り余っているんだけど、この活力はどこに向ければいいかな?」

 どこに向ければいいか、解答を授けることはできそうになかった。とりあえず、今のところ、無事に飛行機は目的地に着きそうだ。彼女からの質問は、現地に着いてから、じっくり考えようと思う。

続く

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旅行記小説

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