降り立った地で その172

 幾つかの水槽の前で止まっては、しばらく見学したあと、また移動することを繰り返している間に、水族館で見れるものをすべて見てしまったようだ。意外と思った以上に、コンパクトの作りだったようで、廻りきったため、館内の入り口近くまで戻ってきてしまった。ある程度満足できたから、僕としては十分だが、彼女はどの程度満足しただろうか。

「タコさん、イカさんはいなかったね」
「いなかったのは、残念。でも、僕はけっこう楽しめたよ。展示の仕方が違ってたから、海の中を歩いている気分が味わえた」
「そう言えば、確かにそうかも。あの大きくて長い水槽は、とっても楽しかった。いろんな魚も見れたし、また帰ってから、水族館行ってみない?」
「うん、いいね。それで、次は動物園だね」
「そうね。どんな動物がいるのかな?」
「ライオンとかはいなくて、小さい動物が多いんじゃないかな?」
「この施設の大きさから考えると、そうだね。考えたら、水族館にも大きな魚はいなかったものね。小さくて、珍しい動物を集めてるんでしょうね」

 彼女が言った通り、この施設はそれほど大きくない分、小さくて、珍しい種を扱っている傾向があるらしい。この水族館では、いままで見たことがない魚が幾つか泳いでいた。ノコギリエイは、生物事典で見たことがあるだけで、実際に見たのは、初めてだった。国内の水族館にいると聞いていたけれど、普段水族館に行かないから、これはいい機会だったと思える。
「よし、じゃあ、このテンポで次の場所に行きましょう。時間も結構経っているし」
 彼女が言ったように、水族館を廻っている間に、1時間近く経っていた。予想していた以上に、時間を経過していたことに驚いたというより、途中から時間のことをあまり気にしていなかったことに反省する。

「うっかりしていた。もうちょっと気を付けないといけないね」
「まぁ、気にしなくていいんじゃない?動物園も、たぶん1時間ぐらいで廻れそうな気がする。だから、残りの1時間ちょっとは、科学館の見学に使う感じで、ちょうどいい時間配分になるよ」
「もうちょっと科学館に時間を割きたかったなと思って」
「あぁ、そういうこと?なら、さきに言ってくれればよかったのに」
「でも、今の調子の方が、ちょうどいい時間配分ということは、間違いないし、いい感じじゃないか?」と言うと、呆れた表情をされる。
「まったく、どっちなのよ。ちゃんとはっきりしてよ」と言われ、いい加減なことを言い過ぎている自分に気付く。
「ごめん、ごめん。でも、妙に楽しいから」と言うと、今度は呆れた表情で笑われた。

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旅行記小説

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