ハチナイ読後感想「虹の行く末」

有原のこと。琴宮のこと。
文字だけです悪しからず。

以下、ややネタバレを含みます。未読の方はご注意下さい。
+++++++++++++++++++++++++++

春大会の結果に焦りを覚える有原とチームメイトの葛藤。
その続きを描いた作品ですが、ここでポイントと感じたのが春大会「準優勝」という「結果」でした。

元々僕は、負けるとしたら2回戦敗退ぐらいかなと思っていましたので前のお話しで準優勝と聞いたとき少し意外に思いました。しかし、今回その意味が良く分かりました。

2回戦敗退くらいでしたら危機感をチーム全体で共有できたはずです。
しかしながら準優勝では当初思いを共有出来ませんでした。
何故ならば、準優勝はとても立派な成績だからです。
柊をはじめ他の多くのチームメイトは、この結果に満足はしていないものの一定の成果として受け入れていたはずです。
だから焦る必要は無いと。
では有原は?
そうではありませんでした。

有原の焦りの原因のひとつに、やはり卒業生の存在の大きさが関わっているように思います。
それは投手倉敷の能力を始め、九十九の天才性であったり、塚原の実直性、意外性とハートの岩城、勝負師の阿佐田、そして本庄千景の精神性が紛れもなくチームの支えとなっていたからです。

だからこそ彼女の思いは、まだ全然足りないであり、このままではいけないだったり、一刻も早く新戦力を補いたい。
それは目指すところが男子と同じ甲子園だからです。

あの界皇を破り頂点に登りつめた本校。

しかし目的を考えれば普通ではいけない。当たり前のことでは足りない。ウルトラでなくてはいけない。誰よりもそれを強く感じたのが有原でした。
自らに当たり前という固定観念のさらに上を行くことを課した有原。
それがあの表情となって柊と対峙することに繋がるのです。

今回有原は、監督共々自らの考え、思いを明示し、次のステージへ向かうことになりましたが、ここに彼女と同じく自らの固定観念と日々戦っている人物が登場します。

琴宮千寿。

ストーリー中で語られたように、彼女はいつもお嬢様というレッテルを貼られ、その観念で見られます。
そんな彼女は、車での送迎に「さすがお嬢様」と漏すチームメイトに対し「ではへりで登校しましょうか」と冗談めいて言い放つのです。
そして彼女は必死に練習をし、必死に球を追いかけるのです。
まさに彼女は、自身の置かれた状況を受け入れ、それを超えようとしています。
彼女がメタルを好きなのも、もしかしたら同じ軸線上にあることなのかもしれません。

彼女はまた、凹むチームメイトに目標や夢の大切さを説き、鼓舞しました。
だからこそ彼女は、今後、URBの能力と同じく、ストーリーに於いても精神的支柱となっていくように思います。
そう、本庄千景のように。

もしかしたら、千景さんの初期設定に「ちひろ」と言うお嬢様がいて、キャラを固める中で変更を重ね、千景さんになったのかも知れません。

だって千景さんって、凄くお嬢様的というか、振る舞いも貴族みたいというか、お茶会とか、優雅さとか、元々はイギリス貴族のお嬢様という設定だったのかもしれない、それが帰国子女に変わっていった。そんな妄想を掻き立てられる人です。

その同じ初期設定の「ちひろ」を練り直し、今度は本当のお嬢様となって登場したのが千寿であるとしたら――。
千景も千寿も「ちひろ」と読めますからね。偶然でしょうか。

設定のルーツを同じくする、言わば姉妹とも言える関係が、千景と千寿なのかも知れません。
だから共通項も多い。
みんなも何となく感じるでしょ。

お茶好きだしね。
屋上使うし。
レフトだし。
おっぱい大きいしね。

ということで、千景さんの後継者たる千寿ちゃんを僕は推したいと思います。

いいですよね、千景さん。
浮気じゃないです。

それはあなたを愛するのと同じ事だから。